最近、学校で起こっている、吸血鬼による女子生徒の吸血被害。
その犯人を突き止める為にあなたは研究や調べものをしていた。
そこに１人の女子生徒が入ってくる

やぁ、ご苦労様だねぇ。

また怪異の研究かい？

ほう、調べもの？

キミも飽きないねぇ。

わたしゃ怪異の研究なんて何の意味も無いと思っているし面倒だよ。

ふむ。ここ数日、女子生徒が校内で何者かに襲われている事件に、吸血鬼が絡んでいると、キミは睨んでいるんだね？

それについて調べているのか。

キミは頑張り屋だ。

誰かの為に、自分の時間を割いて、犯人を突き止めようとするのは、素直に尊敬するよ。

私はまっぴら御免だ。

吸いたければ吸わせておけばいい。

ヤツにとっては単なる食事なんだ。

私達も牛肉や豚肉といった生き物の肉を食べている。

吸血鬼は私達人間という生き物の血を吸っている。

私は同じようなものだと思うがな。

牛や豚の肉を食べたからといって、私達人間は誰にも咎められないだろう？

なのに吸血鬼が食事をしただけで咎められるのは身勝手というものだろう。

(空ける)

ん？。ああ、それは確かにそうだな。

食事にしても必要以上に吸っているように私も思う。

だが、誰かが殺された訳でもない。

それに、１度吸った相手からは吸っていないのを見るに、相手が死なないようにしているんだろう。

死ねば大事になるし、吸える相手も減る。

ヤツにとって、何のメリットもない。

しかし、女子生徒ばかり狙っているのが不可解だ。

ヤツは同性が好きなのか？

それとも、男性が苦手で女子生徒ばかり狙っているのか？

可愛い女の子の血だけ吸いたい！っていう。

イケメンも狙えよ、と私は思うがな。

まあ、どうでもいいか。

私は面倒なのが嫌いでね、こういうのを調べるのはキミに任せるよ。

ん？。どうしたのかな？

私の顔に何か付いているかい？

(空ける)

おいおい、キミにしては面白い冗談を言うんだねぇ。

私が犯人の吸血鬼だって？

キミと毎日一緒に居る私が、いつそんな事をする暇があるのかな？

証拠もなく他人を疑うのはよくないよ。

私だって仏じゃあない。

濡れ衣を着せられたら怒るよ。

しかし、理由も聞かずに怒るのはダメだな。

キミは何故、私が犯人だと思ったのかな？

(空ける)

ふむ…。

性別を特定していないのに、私が「ヤツは同性が好きなのか？」と言ったからか。

なるほど。

私とした事が、失言したな。

吸血行動を正当化しようとした事も引っ掛かったのか。

いやぁ、あれは事実だと思うがなぁ。

もう１度言うが、人間は誰にも咎められずに、生き物を殺めて、それを食している。

吸血鬼にとっての食事である吸血を咎めるのは人間の身勝手というものだろう？

ふむ。

キミと居ると、どうも喋り過ぎてしまうようだ。

で？。私が吸血鬼だとして、キミは私をどうしたい？

(空ける)

血を吸うのをやめてほしい、と？

いやキミ、さっきの私の話を聞いていたのか？

咎められるのは、おかしいと話しただろう。

おっと、これでは、私が吸血鬼だと自白しているようなものだな。

まあ、もうバレているがな。

今時、怪異など珍しくもない。

私のように、人間に紛れて生活している怪異も多い。

人間は多数が当たり前のもの、少数は異質なものとして邪険に扱う。

何とも肩身が狭い。

そうだなぁ、私とキミの仲だ。

少し、私の事を教えてやろう。

私はな、元々は人間だったんだよ。

両親が行っていた実験の被害者なんだ。

その実験により、私は不老不死となった。

私は、自然発生した怪異ではなく、人工的に造られた怪異なんだよ。

私が生まれたのは数百年前だ。

みな、私を残して死んでしまうから、誰かと仲良くするつもりはなかったんだが、キミとこうして深く関わってしまった。

情が芽生えるというものだ。

キミは、私が避けていても、お構い無しに声をかけてきただろう？

そして、他愛のない話を延々と聴かされた。

何故、わざと避けていた私に声をかけてきたんだい？

独りで寂しそうにしているように見えたのかな？

理由は何であれ、情が芽生えてしまう程に、キミは私に関わってきた。

私が何故、女子生徒しか狙わなかったか、キミはもう分かっているんじゃないか？

(空ける)

おや、分かっていないのか。

鈍感なやつだな。キミは。

良いか？。よく聴きたまえよ？

好きでもない異性の血など、吸いたくはなかろう？

以前は男の血も吸っていたんだ。

それと、私が必要以上に血を吸っていたのは、キミのせいだよ。

気付けばキミの事ばかり考えるようになっていた。

何度も何度も声をかけてくるキミの事をな。

キミの事を考えていては、他の事が手につかない。

気を紛らせる為だよ。

全く……しつこい男は嫌われるぞ？

私はそんなキミのしつこい姿に惹かれたのかもな。

こんな気持ちは久しぶりだ。

誰かに惹かれるなど、ここ数百年なかったからな。

自分に被害がないのに、他人の為に犯人を突き止めようとしたのも、私は凄く惹かれた……と思うよ。

でだ。吸血をやめてほしいとのお願いだが、受け入れてやってもいい。

しかし、条件がある。

(空ける)

キミが、私に、血を提供する事だ。

空腹は人間の食事で何とかなるが、渇きだけは、血液を摂らないと癒えない。

キミが私の渇きを癒してくれるのであれば、私はキミ以外からの吸血をやめよう。

安心したまえ。

キミが死ぬ程の血は吸わないよ。

(空ける)

ふむ。回りくどい言い方では、キミには伝わらないな。

キミにも分かるように言ってやろう。

私はキミを愛している。

ずっと私の傍に居てくれ。

芽生えた情というのは、どうしようもない。

私に愛情を芽生えさせたキミには、責任を取ってもらわねばなるまい。

キミにもし、その気があるなら、私と傍に居てくれないか？

(空ける)

おや、意外だねぇ。

正直、私は断られるかと思っていたよ。

今回、こんな事をしてしまったからね。

キミが調べものしていたのも、私のせいなのだろう？

キミに被害はないにしろ、恨みはないのかい？

(空ける)

食事は咎められない、と？

はっはっは！

キミはお人好しだなぁ。

さっきと言っている事が矛盾しているぞ。

まあ、それがキミの良いところなんだがな。

そうだ。キミに提案があるのだが。

私とずっと一緒に居る気はないか？

今の関係のような一緒ではなく、私と同じ不老不死になって、ずっと一緒に居てくれないか？という意味だ。

私がキミに血を分け与えれば、キミは簡単に私と同じ存在になれる。

私がされた実験のような事をする必要もない。

答えは今すぐでなくてもいい。

先は長いからな。

だが、出来れば、若い時のほうが良いぞ？

そこで老いが止まるからな。

ちなみに、私は１６歳から老いが止まっている。

よし、この話は一旦置いておこう。

早速で悪いんだが、血を吸わせてもらえないか？

少し喉が渇いた。

他から吸えない分、キミに吸わせてもらうしかないんだからな。

では失礼するよ。

はぁむ。

・台本（ゆるボイ！）
愛しき君の甘美なる血
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
如月英梨