あなたに仕えるメイドはとても毒舌なようだ。
事あるごとに「無能」と呼んでくる。
何故、彼女はあなたに対して口が悪いのだろうか。

(ＳＥ：ノック音)

失礼致します。ご主人様。

そろそろ起床するお時間ですので、さっさと起きていただけませんか？

シーツが洗えません。

は？。何が、後１０分ですか。

無能なんですから、時間通りに起きるくらいはしてくださいよ。無能なんですから。

何度も言うなと申されましても、事実ですので仕方ないと思いますよ？

ご主人様の仕事を私が手伝っているから、ここまで出来ているという自覚はないのでしょうか？

ご主人様のみでは、とっくに破産しておりますよ？

ご主人様は、私が居ないと何も出来ない無能なんですから、大人しく私に頼って下さい。

(鼻で笑う)
フッ、無能な人間ほど、よく吠えると聞きますが、ご主人様はその中でも最高に最低な人間ですね。

つべこべ言ってないで、早く起きて下さい。

はい？

朝の日課ですか？

そのようなものは無かったと思いますが？

(空ける)

お耳の掃除ですか。

そんな日課、私の記憶にはないのですが、まあ良いでしょう。

ご主人様の言葉には従うのが、従者である私の務めですので。

しかし、お耳の掃除すら１人で出来ないとは、無能はどこまで行っても無能ですね。

では、さっさと終わらせるので、私の脚に頭を乗せて下さい。

大人しくしていないと鼓膜を突き破るので、くれぐれも動かないよう注意して下さいね。

すみませんが、鼻息を荒くして私の匂いを嗅ぐのはやめていただけませんか？

気持ち悪いので。

(空ける)

はぁ……分かりました。

好きなだけ嗅いでいただいて結構ですので、動かないでくださいね。

動かれますと、愛する無能なご主人様のお耳が使い物にならなくなってしまいます。

では、◯◯から(◯◯は左耳、右耳のどちらか)

(耳かき開始、どちらからでも可)

(しばらく無言で耳かき)

(好きなタイミングで台詞。耳かきしながら。耳かきしている側の耳で)

随分と汚れておりますね。

まるで、ご主人様の心のようです。

私の匂いを躊躇いもせず、堂々と嗅げる気持ち悪さがその表れでしょう。

ほら、動かないで下さいと先ほど申し上げましたよね？

大人しく、私の匂いでも嗅いでおいて下さい。

(カリカリは台詞)
カリカリ、カリカリ……面白いほど取れますね。

少しは自分でやったらどうなんですか？

(空ける)

私にやってもらう為に、わざとやっていないと？

(耳かきを一旦止める)

……ご主人様、１度殺されたいのですか？

ご主人様の夜のお世話をするだけでも、とても不快なのですよ？

手も口も凄く汚れますからね。

しかし、ご主人様の無能な遺伝子を、私が無駄撃ちさせているのは良い事ですね。

(耳かき再開)

それに加えて、お耳まで汚れているとか、本当に無能ですね。


(しばらく無言で耳かき)

では、梵天で仕上げをしますよ。

(梵天で軽く)

(耳かき終わり。次に反対側)

はい、片側は終わりました。

次は逆のお耳です。

ごろ～んしましょうね。

(鼻で笑う)
フッ……頭を回転させるだけで無様に見えるとは、流石はご主人様です。

ですが、素直なのは良い事です。

そこは褒めてあげますよ。

では、失礼します。

(耳かき。反対側)

(しばらく無言で耳かき)

(耳かき途中で、耳かきしながら)

こちらも汚れていますね。

これだけ汚れていては、私の言葉も届かないでしょう。

無能なのですから、せめて私の言葉はしっかりと聴こえるように、お耳の掃除はご自分でなさって下さい。

(カリカリは台詞)
カリカリ、カリカリ、カリカリ。

凄く取れますね。

一体どれほど、お耳の掃除をしていないのですか？

まったく、本当に無能ですね。

(無言で耳かき)

(耳かき終わり。次に梵天)

こちらも、梵天で仕上げをしますよ。

あと少しですから動かないで下さいね。

(軽く梵天)

(耳かき終わり)

終わりましたよ。

さっさと起きて下さい。

着替えはここに置いておきますので。

(空ける)

はい？

何故、ご主人様のお世話をするのか？

ご主人様だからに決まっているではないですか？

頭、おかしくなったんですか？

(空ける)

いえ、ご主人様を嫌っている訳ではないですよ。

口が悪いのは、ご主人様が無能だからです。

ご主人様は私が居ないと何も出来ないのですから、無能としか言えませんよね？

私がお傍で支えなければ、ご主人様は危なっかしくて見ていられません。

愛する人の役に立ちたいというのは、当然だと思いますが、ご主人様はそんな事も分からないほど鈍感で無能なのですか？

夜も私を無理矢理押し倒すくらいしたらどうなんですか？

意気地無しですね。

ご主人様の無能な遺伝子は、私の中で教育し、優秀にしてあげなければなりませんので、早めにお願いしますよ。

(空ける)

は？

何をそんなに驚いているのですか？

私がご主人様を嫌っているなど、いつ申し上げましたか？

愛しているから、口うるさく言うのですよ。

まさか、私の愛情が伝わっていなかったのですか？

やはり、鈍感で無能なのですね。

では、ハッキリと言いましょう。

ご主人様。私の旦那様になって下さい。

(空ける)

おや、即答なのですね。

てっきり、断られるかと思っていましたが。

ありがとうございます。

では、この命尽きるまで、あなたをお傍で支えさせていただきます。

幾久(いくひさ)しく、宜しくお願い致しますよ。

旦那様。

・台本（ゆるボイ！）
毒舌メイドの耳かき
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
如月英梨