自分以外何にも興味を持ってほしくないヤンデレ独占欲の終着点みたいな話。
にしたかった…
多分凄く病んでるヒトだと思います注意…

　　
　
ふふっ……

フフフフッ……

ヨシヨシ。
今日も、キレイだね？
ボクだけの……

こんな風に、拘束具なんかつけなくても、すっかりとボクを受け入れるようになってくれて……ね、とっても、嬉しいよ……？

あ、そうそう。知ってる？
世間ではもうすぐ……春が訪れるんだよ。
この部屋に閉じこもってばかりだと、今、外の世界がどんな状況なのか、わからなくなるでしょ？

ううん。不安にならなくても大丈夫。
ボクがちゃんと、いつでも教えてあげるからね。

キミが知りたいこと、失いそうで不安なことはこのボクが責任持って全部、全部、全部、補ってあげるから。
だから、なんでも聞いてね？


……外の景色が見たい……？

だから……言ったでしょ……？
「もうすぐ春だよ」って。
でもね、ただ、それだけ。
わざわざ見る必要なんか、一生ない。

大体、春が訪れるからって、決してそこにキレイな世界はないんだよ？
相変わらずに淀んで、くすんで、汚ない空気とか、ヒトとか、ヒト以外が、無意味に配置されてるだけの、退屈な景色しかそこにはない。
こんなにも美しいキミに、そんなくだらない場所は、到底似合わない。
似合わないんだって……

（泣きそうな声で）
ねぇ、お願い……
桜が咲いたら、咲いたよって教えるし……凄く雨が降ってれば凄く降ってたよって、ボクが全部、教えてあげるから……
ねぇ、だから、それ以上の興味を持たないで？
ボク以外……何も見ようとしないで？
ボクだけをずっと、見ててよ……？


あれ。どうした、の……？

フッ……フフッ……

2人して泣いているなんて……
やっぱりボクらは、運命共同体、だね？

……ねぇ……

いっそこのまま、ボクと一緒に、ボクらだけのこの完璧な世界の中で、全てをオワリにさせない……？


（ポケットから鍵を取り出す）
見て。
これはあそこに１つだけあるドアの、「内側用」のカギ。
実はね、キミがクスリでグッタリと眠っていたあの日、起きてくれるまでの退屈しのぎに、あのドアを少しだけ改造したんだ。

つまり今、あのドアは、内側からしかカギがかけられない仕組みになってる。
このカギをかけたら、あれは重くて分厚くて頑丈なドアだから、ちょっとやそっとじゃ、他人の力で外側から突破することができない。

そうしたら、半永久的に、ボクらは誰にも邪魔されずに、ココに閉じ込められる状態になるってこと……

ね。それってボクとキミにとって、最高のオワリのシチュエーションだよね？
フフフッ。

……え？
このカギ、キミが、かけにいきたいの……？
ふふっ。
もちろん、良いよ？
はい、どうぞ。

ドアの前まで一緒に行こうね？
フフフッ……



（大きくドアが閉まる音）
（カギがかかる）

（ドンドンドンと激しくドアを叩きながら）

……ちょっと！！
ねぇ！！

どうしてボクを突き飛ばしたの！？！？

どうして！！　キミ1人で！！　閉じこもるんだよ！！
開けてよ！！　ねぇ！！　早く！！！

（声を震わせ）
……意味がわからない……
どうしてこんなこと……

ねぇ……バカなの！？
今、キミ1人じゃ何もできない立場なの、忘れてるんじゃない！？
クスリ漬けでフラフラの身体で、このボクなしでずっと生きられるわけがないんだから！！

（舌打ち）無視すんなよ！！
……もう知らない！！　キミなんか……
どーせ！　今に泣きついてくるんだからね……！！

（ドアを蹴る）
はぁ、はぁ……クッソ……




○2日後

（ドアを何度も叩く）
おーい……

あれから2日、経ったんだけど……
まだ、意地はってるつもり……？
ねぇ、キミってそこにずっと1人でいて、水とか食事とか、どうしてるわけ？
ノド渇かないの？　お腹も、空いてるんでしょ？

今なら怒らないで、たっぷりのお水と美味しいご飯、あげるから……
ねぇ、聞こえてる……？

ごーはーん！！
あげるって！！　言ってんのっ！！！

（舌打ち）なんで黙ってるの！？
聞こえてるんでしょ！？

……いい加減にしてよ！！
ボクのこと、1人にしないでよ！！　
……最低人間！！




○5日後

（地べたに座り込み、ドアの隙間から匂いを嗅ぐ）
ん……この小さい隙間……キミの匂いがする……
今、このドアの近くにいるんだね……？
絶対にそうだ……ボクが忘れるわけないんだ、キミの匂い……
ハァ、ハァ……早く、会いたいなぁ……

……ねぇって……
ねーえ、この状態で今、一体、何日が経ってると思ってるの……？
キミ、大丈夫……なの……？
キミは、そんなにも……

（か細い声で）
1人で……死にたい……の……？

（静かに泣きながら）
……グスッ……
どうして……キミはそんなにも、残酷なことが……できるのかな……？
そんなに……ボクのことが、キライ、だったの……？

ねぇ、何をしてあげたら、そのカギを開けてくれる？
なんでもする。
なんでもするからぁぁ……

あっ。

外。

外に行きたいんだね！？
わかったよ。
一緒に、外を歩こう！？
しっかりボクと手を繋いで歩けば、キミはどこにもいかないはずなんだから。
そうだよね。最初っからそうしてあげていれば良かったんだ！
それなのに、ボクの頭が固かったせいで、キミに不満をいっぱい募らせてしまったんだよね？
ごめんね？
ゴメンナサイ……
ゴメン……

……お願い……
……許してください……
グスッ……


（カギの開く音）

（ハッと顔を上げ）

……え……
……開いた……？

（立ち上がり、勢いよくドアを開ける）
ようやく許してくれたんだね！？

ありがとう！！


……あーあー……

そんな、横たわっちゃって……
それに、こんなに、やつれて……

（隣りに寝そべって全身をくまなく嗅ぎ）
それでもやっぱりキミは、良い匂いがするね……
ヨシヨシ……
もう、起き上がる気力も、ないんだね？

……ごめんね？
本当に、ごめんね？

……大好きだよ？

（キス）
大好き……大好き……大好き……

（ギュッと抱きしめて）
ずっとずっと、会いたかった……
もう絶対、離さないよ……


ん……？　何か、喋りたいの？
頑張って……ゆっくり、口を動かして……
うん……そ……と……に……？

「外に出たい」……？

あー、うん。ふふっ。
そうだね。
今すぐ、ボクと一緒に、


こんな世界から抜け出してさ、一緒に、ラクになろうか……？

大丈夫。
キミがこれから初めて見る景色は、何も怖くはないよ。
ボクら2人だけの"外"の世界はきっと、楽しい世界に違いないんだから……

フフッ……フフフフッ……



（カギのかかる音）










おわり

・台本（ゆるボイ！）
2人だけの密室を内側から深く閉じ込めたい
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
蚊ネコ