普段からネットでの買い物を楽しむ貴方。いつも届けてくれる宅配のお姉さんの距離が異様に近いのは貴方を愛しているからで……

（インターホン）

お届け物です。

こちらにサイン、お願いします。

はい、ありがとうございます。

……お兄さん、カッコいいですね。

そうですかって、宅配で来てるだけの私が必要のないお世辞なんて言いませんよ。

確かに、カッコいいかは人の感性もありますけど、少なくとも私は好きですよ？

んふふっ。

それじゃ、サインももらったので受け渡して私は帰りますね。

……また、会えるといいですね。

（後日）
（インターホン）

……また会えましたね。

お届け物です、こちらにサインお願いします。

あの、お兄さんってよく、ネットでお買い物とかする人なんですか？

そうなんですね。ならまたすぐにでも会えそうですね。

いやー、お兄さんのいるエリアの担当でよかったです！

それじゃ、あんまり長話してると仕事に支障を来すのですみません。

またよろしくお願いします！

（後日）
（インターホン）

お届け物です。

今日は何買ったんですか？

教えられないですか？

……まさか、エッチなものじゃないでしょうね？

なーんて、もしそうだとしても私にお兄さんを責める権利はありませんから。

え？　本当に違うって、なんでそんなに必死に否定してくるんですかー？

おやおや、これは追及が必要かもしれませんね。

ちょっと、ご同行を……みたいな。

あ、ふざけてたらサイン貰うの忘れてました、すみません、お願いします。

はい、ありがとうございます。

いいですよ。何買っても中身は見ませんから、気兼ねなく買っちゃってください。

その方がお兄さんに会える機会も増えますし。

あ、いや、セクハラのつもりはないんです、あの、クレーム入れようとかやめてください。

お兄さんに限ってそういう人じゃないとは思いますけど。

それじゃ。

（後日）
（インターホン）

お届け物でーす！

もう、いつものことになっちゃいましたね。

はい、サインお願いします。

え？　身に覚えがない？

そうなんですか、でもこれ、依頼主の苗字からしてお兄さんの親御さんとかではないんですか？

言ってくれてないあたり、サプライズなんでしょうね。

やっぱりそうでしたか。

はい、サインありがとうございます。

あと、さっき届けに行った方から、なんでかよくわからないんですけど飴貰っちゃって、私飴好きじゃないんですけど、要ります？

ありがとうございます。

飴、好きなんですか？

あ、袋はこっちで捨てますから今食べちゃってください。

（扉を閉める）

え、どうかしましたか？

ああ、何で入ってきてるのかってことですか。

それならじきにわかりますよ、その飴、舐めちゃったんですから。

（時間経過）

目、覚めましたね。おはようございます。

あ、身体、動かせないんですか？

当然ですよ。だって、今お兄さんの身体は縄で縛られてるんですから。

ほどいてくれって、誰に言ってるんですか？

私がお兄さんを縛った犯人なんですよ？

絶対にほどいてなんかあげません。

それどころか、私も一緒にお兄さんを縛っちゃいます、ぎゅーっ。

え、目的、ですか？　こんなふうに抱き締められておきながらわかんないんですか？

（囁き）お兄さんと、楽しいことがしたいんです。

何って、とぼけても無駄ですよ？

興奮隠しきれてないじゃないですか。

それも、一度は遠ざけようとした女に。

ええ、それがお兄さんにこんなことをした原因です。

私、クレームは入れないでくれってあの時頼みましたよね？

不快な言動だったのは自覚してましたが、クレームを入れられると困るんです。

お兄さんのいるエリアから外されちゃって会えなくなっちゃったんですから！

実際、クレームを入れること自体私のことが不快だから次から違う人にしろって言ってるものですし、お兄さんの裏切りなのは明白ですよ。

そんなの、許せません。

お兄さんは私から離れちゃいけないんです。

だって、私はいつだって、お届け物と一緒にお兄さんへの愛を届けてたじゃないですか！

いいえ、気付いてないというのは言い訳にはなりません。

むしろそれは罪なんですから。

恋する女性の気持ちを受け止めるのが男性の役目、私の気持ちをお兄さんは受け止めてくれなきゃいけないんです。

鈍感で、あまつさえ私を遠ざけようとして、どれだけ私が傷付いたことかわからないですよね？

でも安心してください。

お兄さんの罪は、お兄さんが何もしなくともこれから償えますから。

ええ、縛られて楽しいことをさせてくれればいいんです。

それに、万が一逃げたとしても、お兄さんの親が許してくれないでしょうけどね。

あ、訳が分からないって顔してますね。

それだと抑止力にならないので、ちゃんと教えてあげましょう。

まず私、あなたのクレームで担当を外されたって言いましたよね？

それなら、今回私が荷物を届けに来たの、変だと思いません？

そうです。今日は仕事のふりして来ちゃったんです。

しかも、荷物もお兄さんの両親からの贈り物ではありません。

今あなたを縛っている縄とか、お兄さんとの監禁生活に必要なものを段ボールに入れてきたんです。

透視されてたらヤバかったですね、なーんて。

でも、お兄さんが何の疑いもなく荷物を受け取ったように、依頼主の欄に書いてあったものは両親の名前、住所に違いなかったはずです。

どうして知っているのかって、会いに行ったんです。

それも、お兄さんの彼女を装って。

いい人たちですね。温かく歓迎してくれましたし、『息子をよろしく』だなんて言ってくださりましたから。

もし私たちが結婚するなら、証人になってくれるでしょうから安心ですね。

はい、そういうわけでお兄さんに逃げ場はありません。

そもそも逃げる必要なんてないんですけど。

それじゃあお兄さん、お待ちかねの楽しいこと、始めちゃいましょうか。

お兄さんの愛、無理にでも貰ってあげますから。

・台本（ゆるボイ！）
馴れ馴れしい宅配のお姉さんが実はヤンデレで監禁してきた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩