難病に苦しむ少年の最後の希望となった女医。
彼女の治療はたしかに効果を上げているかに思われたが…。
その時明らかになる、彼女の素顔とは。

（病院の個室内。ベッドから身を起こして女医の往診を受けている）

はい、じゃあ脈を計るからパジャマをまくって……。

うん、正常ね。戻していいよ。

検査の数値も……先週よりどれも改善されているね。

本当によかったね。ここまで……長かった。

最初、君の病気が世界的にも珍しい奇病であることを知ったときは途方に暮れたよ。

だけど、私はあきらめなかった。

君があきらめない姿を見せてくれたからだよ？

それだけが私を支えてくれたんだから……うん？退院？そうだね……一度検討してみるね……。

（ドアの開く音）

あ、面会の時間だったね……ぐっ、同じ学校の方ですか？

ああそうですか、ではその寄せ書きと学校だよりをこちらに渡してお引取りください。

……なにをぐずぐずしているんです、彼は病人ですよ、あなたと会うことは彼にとって負担なんです。

さあ、早く！

（ドアの閉まる音）

……あの女……女子生徒さん、君が前に話していたクラス委員長？

はいはい、病気のクラスメートをがんばってお見舞いしてる私えらいでしょってやつね。

そうやって教師からの評価を上げてるのよね。

苦しんでいる君を利用して……許せない。

彼女はそんな人間じゃない？そんな人間よ。

いい？主治医として、病と必死に戦っている君をくだらないことで悩ませたくないの。

彼女のことはすべて私に任せて。





（ドアの開く音）

ごめん、やっぱり君の入院は延長することにしたの。

それと今後は外部の人間とは面会謝絶だから。

……でも、希望を捨てちゃだめ。

私と君と、二人で病気を克服しましょうね。

……不満そうね。聞くけど、昨日、看護師となにを話していたの？

言いなさい、彼女からなにを吹き込まれたの？

……へえ、私の君に対する治療が異常だと……。

ふうん、他の医師の意見も全く聞こうとしないと……。

うん？主治医の交代？……あの女……そこまで……。

聞いて。私の治療で君の病状は格段に回復してる。

君自身、それは十分わかってるよね？

顔色も良くなったし、やせていた体にも肉がついてきた。

私の治療にはなんの問題もないのよ。

……じゃあ退院させろと言うのね……わかった、いいよ。

ただしすぐというのは無理。そうね……二週間ちょうだい。

その日が君の退院日。約束する。





（ドアの開く音）

あらあら、どうしたの？

あと一週間で退院できるっていうのに、ボロボロじゃない。

見るからにやせちゃって……検査値もほとんど数ヶ月前に戻っちゃった。

だから頭を抱えて悩んでるのね。え、頭が割れそう？……かわいそうに。

……これでわかったでしょ、私に逆らうことがどういうことか。

……うふふ、そんなに怖がらなくても大丈夫。

君は変なバイキンの言うことにだまされただけよね。

……特別に教えてあげるね。

この瓶に入っている錠剤はね……どんな名医も見放した君の命を救った……魔法のお薬。

これを毎日の投薬から外すだけで、君はまた死の淵に追いやられてしまうのよ。

そしてこの薬を君にあげられるのは私だけなの。

私の実家の研究所で開発された、君のためだけに作られた薬だからね。

金？法律？わかんない。

とにかく結果は大成功。もう誰も私の治療に口出しなどできないの。

君の命は私のもの。わかったかな？

ああ……涙を浮かべながら、先生助けて、死にたくないってうめく君の顔、久しぶりに見るけどたまらないなあ……。

でももう大丈夫。

さあ私の舌の上の一錠を飲んで……そう、手を使わず口でね……フフ、いい子、いい子。

三十分もすれば痛みはおさまるから、効いてくるまで私の胸の中でゆっくり休みなさい。

投薬を再開すれば体はすぐに良くなるし、その間に君の心の中からバイキンを消毒するね。

終わる頃には退院なんてどうでもよくなるよ。

楽しみだなあ……これからも二人で治療を頑張りましょうね。

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレ女医の「治療」風景
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
バルビュス