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夏の海、裏切りの海
written by バルビュス
  • 告白
  • 嫉妬
  • 学校/学園
  • NTR
  • 少女
  • 学生
  • 同級生
  • 友達
公開日2021年08月22日 21:51 更新日2021年08月22日 21:51
文字数
2016文字(約 6分44秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
女子高生。文芸部の副部長
視聴者役柄
女子高生。文芸部員
場所
二人が通う高校の近くにある海辺
あらすじ
ほんの気晴らしのはずだった、水遊び。
それが思わぬことで危険なものになり、危うく切り抜けたというなら、そのときのことをあとで自慢気に語るのも無理はない……しかしどうも真実は違うらしく……。
本編
はい、もしもし……あ、ごめん、彼じゃないの、私よ、私。

うん、彼は今ジュース買いに行ってる。

そしたら彼のバッグから携帯の音が聞こえてさあ。

着信見たらあなたの番号じゃない。

それならいいかって、出ちゃったんだけど、
ごめん、驚かせちゃった?

……ならよかった。ていうかさ、聞いてよ、さっき恐ろしい目にあったの。

三人しかいない文芸部の部長と副部長の命が危なかったのよ、
当然女子部員は拝聴すべきよね。

……今度の市の文学賞、あれに彼の書いた小説を出すってのは
あなたも知ってるでしょ?
土日だけどやることもないから、二人で空き教室で原稿の手直しを
してたんだけど、全然進まなくて。

それでも半分くらいまでやったら、
教頭に見つかって早く帰れって。

かわいい生徒が学校の名を高めようと努力してるのに!

やってらんないと思ってたら
彼もおんなじこと考えてたらしくて、海行こうとか言い出したのよ。

私も大賛成で、家に戻って着替えるのも
めんどくさくなって、制服のまま海岸に行ったの。

うん?返事に元気ないけど大丈夫?

まあ、暑い日が続いているからね……
もう少しだけ待って、ここからが本番だから。

で、海岸まで来て、青い空の下で砂浜に
波が打ち寄せてるのを見たら、
嫌なことみーんな吹っ飛んじゃってさ。
(波の効果音)

波打ち際でふざけて水かけあったりしたのよ。

そうしていたら、岩場の方にも行ってみようか
ってことになったのよ。

日差しがきつかったから、持ってきたペットボトルを
回し飲みしてまた歩いてさ。

やっぱり岩場だと波も荒くて、迫力あるなあ……って
二人で見とれてたんだ。
(波の効果音)

スマホ持ってくるんだった。残しておきたかった。

ふたりとも波打ち際で落としたら嫌だから、
自転車のかごにカバンごといれっぱなしだったの。

って、ここまではよかったんだけどね。

あ、彼が帰ってきた……こっちの缶ね、ありがと……
今、彼女に今日のこと話してるの。

だーめ、代わってあげなーい!

……でさ、帰ろうと思って後ろを振り返ったら、道がないの。

最初なにが起きたのかわかんなかった。

そのままつっ立ってたら、彼が潮が満ちたんだって
つぶやいたの……。

私たち、岩場に孤立しちゃったのよ。

ゾッとした。

スマホはないから助けは求められない。

私、制服のまま海に飛び込もうとしたの。

ひょっとしたらまだ足がつくんじゃないかと思って。

ほんと、パニックになってたんだろうね。

そうしたら彼が後ろから……抱きしめてくれたの。

痛い!照れることないでしょ、脇から叩かないで……
抱きしめて飛び込むのを止めてくれたの……
これでいいでしょ?

まったく……彼は、この岩の上なら満潮でも水の上だから
大丈夫って言うんだ。

もう信じて水が引くのを待つしかないのは
わかってたんだけど、不安でしょうがなかった。

今までいた場所に波がかかって、少しずつ水の中に
消えてくのを見ちゃうとね、だんだん震えが止まらなくなってきたの。夏なのに。

ねー、話がいいとこなのにどこへ行くの?
……トイレって、デリカシーってものないの?

ああごめんね……それでも彼は私を必死に抱きしめながら、
大丈夫だから、大丈夫だからって何度も励ましてくれたの。

私嬉しさで泣きそうになったのと、このままおぼれちゃうかも
って恐ろしさで胸がいっぱいになっちゃって……。

告白、しちゃったの。
(波の効果音)

何言ってんだと思ってるんだろうけど、
二人ともおぼれ死んだら永遠に伝えられないんだと思って。

彼も最初は落ち着いてとか、助かるから、とかごまかしていたんだけど、
どんどん海水が上がってきちゃって、
ついに、ついによ、僕も君のことが好きだって言ってくれたの!
(波の効果音)

もうここで死んでもいいーーー!
って叫びそうになったけど、そうしてたらようやく水が引き始めてさ。

満潮のピークとかそんなんじゃなくて、神様が私たちを救ってくれたんだと
思うようにしてる。

それでね……きゃっ、なに、戻ってたんなら教えてよ。

ちょ、ちょっとどこに手を入れてるのよ、告白したらいきなりなんて
心の準備ってものがあってさあ。

あん……さっきも言ったでしょ、塩水でベタついてるから、
家でシャワーを浴びたあとって……。

……ねえ、さっきから黙ってるけど大丈夫?もしもし、もしもし!

……切れたか。

……まあここまできれいに叩き潰してあげたんだ、
向こうも未練がなくなって大満足でしょ。

まったく二人のための文芸部に土足で踏み込むは、夫を誘惑するは、薄汚い泥棒猫が。

でも彼に返す本に手紙を忍ばせるなんて、その程度の知能じゃね。

こっちは部室にカメラ、メールにメッセージアプリまで監視してたのに損した。

ええと、今夜砂浜で会いたいと。

そっか、数日前から夜光虫が増えてきてるからなあ。

幻想的になった波打ち際で告白ってやつですか。

アイデアだけは使ってあげるわ、感謝なさい。

……もしもし、あ、おばさん?彼……いますか?

……ごめん。スマホ……探してたよね。

ほんと、ごめん。どこで入り込んじゃったんだろうね。

うん、もちろん返すよ。ついでに……いや、ついでじゃないの、大事な話があるの。

今夜、海に来て。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
夏の海、裏切りの海
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
バルビュス
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