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呪いの黒猫に愛されて共に地獄に堕ちる話。
written by しおぱいたん
  • からかい
  • インモラル
  • シリアス
  • ホラー
  • 切ない
  • 人外 / モンスター
公開日2021年08月25日 20:42 更新日2021年08月25日 20:42
文字数
3777文字(約 12分36秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
聴き手(あなた)を×した人々を×し回り、怪異と成り果ててしまったヤンデレ黒猫ちゃんと、
一緒に地獄に堕ちることができるシチュエーションボイスです!!
本編
(過去回想ここから)

お前様……お前様っ! しっかりするんじゃ!

この鈴に2人で誓ったじゃろう! 共に生きると!
約束を違えるなど、赦さんぞ!

目を開けろ、目を開けるんじゃ!
目を開けて、儂を見ろ!

いやじゃ! 死ぬな!!
死ぬな……ぁ……死なないでくれ……。
儂を1人に、しないでくれ……

…………。
……どうしてじゃ……?

儂はただ、お前様と共に生きたかっただけなのに……。
お前様の隣で笑って居られれば、それで良かったのじゃ……。
それだけで……それだけなのに……。

赦さぬ……赦さぬぞ。
おぬしら人間は儂の夫を殺し、幸せを奪った。

味わわせてやろう。同じように。

おぬしら人間が幸福を感じたその時。
必ず儂が、不幸のどん底に叩き落してやろう――。


(過去回想ここまで)


先輩~! こっちこっち、こっちっすよ~!

も~遅いっすよ先輩。待ちくたびれちゃったっす~。
あんまり長いこと待たされるのは、苦手って言ってるじゃないっすか~!

10分っすよ?! 10分あったら3分のカップ麺が3個、
5分のカップ麺が2個も作れちゃうんすからね?!
そんなにカップ麺作ったら、お腹いっぱいになっちゃうじゃないっすか!

ん~? あ~、そっすね、今日はちょっと先輩と行きたいところがあるんすよ~。
や~、こ~んなかわいい後輩とデートできるなんて、良いご身分っすね、先輩~!

あ~、財布の心配は要らないっす!
そろそろ先輩の財布が氷河期になっちゃうっすからね。

それは先輩がよわよわなのがいけないんすよ?
ゲーセンも、カラオケも、勉強も、ぜ~んぶ負けちゃうんすもん。
や~、敗北を知りたいっすね~!
今日は何の勝負をするっすか?
特に無かったら、肝試しをしたいんすよ~!

? 先輩、知らないっすか?
最近「化け猫の呪い」っていう、噂が流れてるんすよ。
何でも、幸せそうな人間と、関係する人間を全部祟り殺しちゃうらしいっす!
や~超怖いっすね~!

お、今日は勘が良いっすね、先輩~!
そうっす! 今日は夜の学校に忍び込んで、噂の真偽を確かめるっすよ!
勝負は簡単! ビビった方が負けっす!
ま~、ビビりの先輩じゃ、すぐ音(ね)をあげちゃうと思うっすけどね~!

またまた~強がり言って~、そう言っていっつも負けてるじゃないっすか~!

でも、そっすね~、化け猫は幸せそうな人間を狙うらしいっすから、
もしかしたら、本当に出てきちゃうかもしれないっすよ?

や~、だって、こ~んなかわいい後輩と一緒に夜の学校に入るんすよ?
お金を払ってでも代わりたいって言う人が居てもおかしくないほど、
幸せな状況だと思うんすけどね、これ。

……――”幸せ”っすよね~!
……ふ~ん、そうっすか~! 先輩は”幸せ”なんすね~。

じゃあ、勝負の内容は肝試しで決定っす!
テキトウに時間潰して、夜の学校に忍び込むっすよ!

(時間経過。場所を『学校の校門(夜)』へ)

や~、流石にこの時間になると、結構雰囲気あるっすね~!
化け猫の1匹や2匹、出てきてもおかしくなさそうな雰囲気っす!

その辺にはぬかり無いっすよ!
女子トイレの窓に、細工しておいたっすから!
用務員のおじさんも、見逃してる筈っす!
ほら! ばっちりっすね! 行くっす!
ちょっ、何恥ずかしがってるんすか!
誰も居ないんすから、入ったって文句言われないっすよ!

(場所を『学校の廊下(夜)』へ)

や~、結構暗いっすね~!
ん~、見えてるっすよ! 実は結構、夜目(よめ)が効く方なんすよね~!
ビビってる先輩の顔も、ばっちりくっきり見えてるっすよ~!

そ~んな強がったこと言っても、見えちゃってるっすからね~。
怖いなら、手でも繋いであげるっすよ~? ビビりのせ・ん・ぱ・い~!

さ~てと、先輩のビビり顔も拝んだところで、本命の体育館に行くっすよ~!
よくわからないっすけど、体育館での目撃情報が多いらしいっす。
覚悟を決めておいた方が良いかもしれないっすね!

(場所を『体育館(夜)』へ)
や~、体育館も真っ暗っすね~!
なんだか、世界に先輩と2人だけになっちゃったみたいっす!
誰も見てない、完全な2人だけの空間って感じっすね!

これは、ここで何が起きたとしても、明日まで誰も気づかないっすよ~!
先輩が頭からがぶっといかれて、助けて~って言っても、無理っすね~!

……知ってるっすか? 噂の化け猫は、
その昔人間に毒殺されたことで、化け物になっちゃったらしいっすよ。

化け猫と知ってなお、自分を愛してくれた夫と共に、静かに暮らしていたのに。
人間は、化け猫を操る下手人として、夫を殺したっす。

化け猫は怒り狂い、人間を呪い、祟り、殺し回った。
そして、ついには「不幸の黒猫」と呼ばれる怪異と成った――。

……何でそんなに詳しいのか、っすか?

……にゃは。
……にゃはははっ。
にゃっはははははははははっ!

それは、儂が化け猫――「不幸の黒猫」自身だからじゃ。

儂は幸せな人間を祟り殺すために存在する。

おぬしは、自分が”幸せ”だと言っておったじゃろう?
だからこうして、おぬしの前に現れたというわけじゃ。

どうじゃ? 驚いたじゃろう?

良いのう。良いのう。幸せを与えられ、それを奪われる。
その瞬間こそ人間は、一番愉快な顔をするものじゃ。

この肉体――名は「未幸(みこ)」と言ったかのう。
こやつを食ろうた時は、愉快じゃったなぁ。
儂に魂を食われる間、おぬしの名前を呼んで、謝罪の言葉を並べておったぞ?

にゃははははっ! 惨めじゃのう。
こやつは、死の淵におぬしを呼ぶほど愛していたというに、
おぬしときたら、中身が儂に代わっていても気づきもせんかったのじゃからなぁ。

どうじゃ? 幸せじゃったか?
こやつの皮を被った儂と共に過ごした日々は?
にゃはははは――

(聴き手「楽しかった」と答える想定。この答えを聞いて、笑い声を止める感じです)

…………何じゃと?
おぬしは、今の状況がわかっておるのか?
儂は、おぬしを慕う人間を食らい、その皮を被っておぬしを誑かしておったのだぞ?

……興が削がれた。つまらぬ。つまらぬなぁ。
愛する者を喪った、不幸のどん底に突き落とされた顔を見たかったというに。

もう、よい。おぬしの魂も食らって、終いじゃ。

(「夕(化け猫)」が爪を立てた手で、聴き手を切り裂く)
(聴き手のポケットから「鈴」が落ち、鳴り響く)

……なっ……?! おぬし、何故それを……?!
その鈴は……、まぎれもなく儂の鈴……。
共に生きると誓った。契りの証――。

……にゃは。にゃはははっ。
にゃははははははははははははっ!!

……相変わらず、異なやつじゃのう。――お前様は。
謀(たばか)るつもりが、謀られておったというわけか。

……よもや、再び今生でまみえることがあろうとは。
こうしてお前様と語らうことができる日を、夢にまで見ておったわ。
本当に、嬉しい。お前様に出会えて、本当に嬉しいぞ。

……じゃが。すまぬ。儂はもう、お前様とは共に居られぬ。

お前様と共に生きると決めた時、儂は人間を慈しむことを誓った。
だというのに、儂はこの数百年、人間を慈しむどころか殺し続けてきたのじゃ。
儂と何の因果も無い、幸せな人間を数え切れないほど殺した。

もはや儂は、お前様の妻と呼べる存在ではない。
ただの怪異「不幸の黒猫」でしかないのじゃ。

(近づこうとする聴き手を一喝する)
ダメじゃ! 儂には、お前様と触れ合う権利などない。
儂は……、儂は……お前様を信じて待つことができなかったのじゃ。

ああ、辛いとも。悲しいとも。
できることなら、またお前様に触れたいよ。
また、お前様の優しい手で撫でてほしい。
お前様の腕で、抱きしめてほしい。

でも、ダメじゃ……。ダメなんじゃ。

にゃ、にゃははは! 大丈夫、儂は「不幸」ではないよ。
こうしてお前様が会いに来てくれた……それだけで……満足じゃ。

だから、やめるんじゃ……儂に近づくな。
お前様に近づかれては、儂の決意が、揺らいでしまう……。

ダメ……ダメじゃ……ダメ。

(聴き手、「夕」を抱きしめる)

……あ……。
ダメじゃと、言っておるのに……。
人の身で怪異に抱き着くなど、大馬鹿者じゃ……。

にゃはは、変わらんのう。
お前様の我が身を顧みなくて頑固なところは。
人の身でありながら、自分が傷ついてでも儂を守ろうとする。
そういうところが、昔から嫌いじゃった……。

じゃが……。お前様のその優しさが……――暖かい。
……暖かいのう……。お前様は、本当に暖かくて、心地よい。

にゃはは、儂は本当に堪え性の無い畜生じゃのう。
お前様にちょっと求められただけで、この有様じゃ。
ダメじゃのう。いくつ歳を重ねたとて、弱いままじゃった。

……なぁ、お前様。
儂はもう「不幸の黒猫」じゃなくなってしまったよ。
人間への憎しみも、どこかへ行ってしまった。
もはや老い先の短い、ただの黒猫じゃ。

怪異と成ったのは儂の責任じゃが――、
ただの黒猫にしてしまったのは、お前様の責と言えるじゃろう。
ちゃんと責任を取ってくれるんじゃろうな?

にゃはは、そうじゃったな。
お前様は、約束のために転生をしてくるような大馬鹿者じゃったわ。

ならば、もはや何も言わぬ。
……共に逝くとしよう。

(これまで殺された人々が呪いとなり、地獄の業火となって出現する。
 今までは怪異の力で抑えていたが、力が無くなったため表面化したイメージです)

人を呪わば穴二つ。人々を殺してきた、当然の報いじゃ。

にゃはは……今生で共に天寿を全うすることはできなかったが――……未練はない。
こうしてお前様と、共に死ねるだけで、それだけで儂は幸せじゃ。

また儂と共に居てくれて、ありがとう。
お前様と一緒ならば、たとえ地獄だろうと大丈夫。

今度こそ、ずっと、ずっと一緒にいよう。
――愛しておるよ、お前様。

(炎に飲み込まれ、地獄に堕ちて終了)
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
呪いの黒猫に愛されて共に地獄に堕ちる話。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
しおぱいたん
ライター情報
サークル「ぱいたん工房」のしおぱいたんです!

当サイト開発&運営のサークル「減塩旅団」の代表もしています!
※「ゆるボイ!」に関するお問い合わせは、チアリちゃん(公式twitter)へご連絡ください~!

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