事故に遭い、記憶を失った貴方を心配する優しいメイド
彼女は貴方に記憶を取り戻してほしい理由があるようだ

(ＳＥ：走ってくる足音)

(ＳＥ：バタン！と強めにドアを開ける音)

はぁ…はぁ…

ご主人様！！

良かった……お目覚めになられたのですね。

ご主人様が目の前で事故に遭われた時はショックでその場から動けませんでした……すみません……。

私がご主人をお守りしないといけないのに私は……。

は……？

ご主人様……冗談を仰るのは……えっ……？

私を覚えていないのですか！？

私ですよ！

あなたの身の回りのお世話をしているメイドです！

まさか、ご自分の名前も分からないのですか？

(無言)
………………

記憶喪失……。

嘘ですよね？

ご主人様！嘘ですよね！？

いつもの悪ふざけですよね！？

(間)

そんな……本当に……？

(号泣)
(自分に酷い仕打ちをした主人が消えてしまい、恨みを晴らせない事に対しての発狂のような号泣)
うわあああああああああ！！

(間)
(場面転換：翌日)

ご主人様、朝食をお持ち致しました。

お加減はいかがでしょうか？

何か思い出せましたか？

(間)

そうですか……。

大丈夫ですよ。

焦らずゆっくり思い出していきましょう。

私が付いていますからね。

(独り言)
チッ……さっさと思い出しやがれ、クズ野郎。

えっ？

ああ、何でもありませんよ。

では、私は失礼しますね。

(間)

おはようございます、ご主人様。

あれから２週間ほど経ちましたが、記憶はどうでしょうか？

私も忙しく、お伺いする機会がなかったので、具合はいかがかなと思いまして。

(間)

何も思い出せない……そうですか……。

ご主人様は、私の事をどう思っておられますか？

(間)

とても優秀で、優しくて、良いメイド……ですか。

あはは……本当に別人のようですね。

ご主人様はどこまでも酷い人なのですね……。

(大きく息を吸って)

ふざけんな！

アンタが私にしてきた事を、私はこれまで１度も忘れた事はねぇ！

なに自分だけ忘れてんだよ！

記憶を失くしたってなぁ！やってきた事は消えねぇんだよ！

思い出せ……思い出せよ！！

あ？。急にどうした？だと？

アンタが思い出さねぇからだろうが！

仕事でミスした私の身体を、教育とか言ってムチで叩いたり、顔を水に沈めたり、腹を殴ったり、どれだけの事をしてきたと思ってんだ！

メイドを辞めたいって言った時には、１ヶ月もの間、私を地下に監禁して、ろくな食事もなく、餓死寸前まで追いやったんだぞ！

その時、アンタは私になんて言ったと思ってんだ！

「自分が悪いと分かったか？。お前は俺の所有物だ。２度と辞めるなどと口にするな。物に決定権なんてない」だぞ！

それ全部を忘れてんじゃねぇよ！

私は物じゃねぇ！

人間なんだよ！

この際だから教えてやる。

事故に見せかけて、アンタを殺そうとしたのは私だよ。

それで助かった挙げ句、やってきた事を忘れた？

ふざけんじゃねぇ！！

あそこで大人しくくたばっとけよ！

アンタみたいな人間のクズは、生きてる価値なんざねぇんだよ！！

……分かった。

思い出させてやるよ。

立て……。

立てっつってんだろ！

(ＳＥ：殴る音)
(ご主人様の腹を殴る)

(殴る音)
ふん！

(殴る音)
オラ！

(殴る音)
思い出せ！

(殴る音)
クソ野郎！

今までアンタが私にしてきた事だよ。

身をもって味わって思い出せ。

記憶のないアンタは私を痛め付けたクズとは別人だ。

だが私は、アンタの姿に反吐が出るんだよ。

ずっと殺してやりたいと思ってたんだ。

記憶が消えたって事は死んだに等しいが、私はアンタを許せねぇ。

このクソ野郎が！

(殴る音)

やめてくれ？

アンタはやめてくれとお願いした私を何度も殴った。

決してやめる事はなかっただろう。

全部アンタがやってきた事なんだよ。

簡単には殺さねぇぞ。

記憶を取り戻すまで、痛め付けて、苦痛を味わわせてやる。

アンタみたいなグズに、優しく振る舞うのも限界だったんだ。

記憶を取り戻した時がアンタの最期だ。

私の寝込みを襲おうなんて考えは起こすんじゃねぇぞ。

その瞬間、アンタの手足が失くなると思え。

動けないようにしてやる。

話はここまでだ。

続きといこうか。

(間)

さっさと思い出しやがれえええええ！！

このクズ野郎があああああ！！

(殴る音)

・台本（ゆるボイ！）
優しいメイドの本音
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
如月英梨