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忠誠心の厚いメイド長は新米執事の俺をガンガンしごいてきたが、最後にはデレてくれた
written by 松平蒼太郎
  • 告白
  • シリアス
  • 純愛
  • ツンデレ
  • メイド
  • 鬼上司
公開日2021年11月14日 19:03 更新日2021年11月14日 19:03
文字数
5681文字(約 18分57秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
メイド長
視聴者役柄
新米執事
場所
お屋敷/某所
本編
あなたが新入りの執事ね。

わたしはこの屋敷のメイド長を務めてるわ。よろしく。

これからあなたを坊っちゃまにふさわしい執事に鍛え上げてあげる。

雇われたからには坊っちゃまのために誠心誠意、働くように。

手を抜いたりすることは許さないわよ。

しっかりついてきなさい。



違う。そんなやり方じゃ、坊っちゃまのお部屋は綺麗にならないわ。

ほら、ベッドメイクも雑。

坊っちゃまをシワだらけの布団で寝かせるつもり?

もう一度手本を見せるから、よーく見てなさい。

次、同じ失敗をしたらペナルティ課すから。いいわね?



いい?紅茶はそう淹れるんじゃないの。

茶葉の量が多すぎるし、ミルクも坊っちゃまのお好きな量より少ない。

これでは坊っちゃまの安息の時間が台無しになるわ。

紅茶の淹れ方、もう一度復習しておくように。

それから紅茶を淹れた時は坊っちゃまに直接お出しするのではなく、わたしを通すようにしなさい。

わたしが味見して判断するから。

よく覚えておいて。



何をしてるの?

こんなところでボーッとしてる暇はないわよ。

あなたにはまだまだ覚えてもらわなきゃいけないことが沢山あるんだから。

…何ですって?もう一度言ってみなさい。

はぁ…所詮、あなたはその程度だった、ということね。

えぇ、構わないわ。辞表はわたしが預かっておくから。

けど辞めるまではしっかり働きなさい。

それがあなたのここでの責任よ。



ったく…何やってるの、あなたは。

そんなへっぴり腰で、坊っちゃまを守れると思ってるの?

ほら、立ちなさい。まだ敵は残ってるんだから。

坊っちゃまを金目的で誘拐した輩を、このまま許すわけにはいかないわ。

必ず坊っちゃまを助け出すわよ。

わたしたち、二人の手で。




おはよう。

休暇申請も出してないのに、勝手に休むなんていい度胸ね。

冗談よ。謝らなくていいわ。

それより…あの状況でよく坊っちゃまを守り抜いたわね。

えぇ。敵に囲まれたときのあなたの大立ち回り…

まったく無茶をする…わたしより弱いくせに。

本当に心配したんだから…このバカ。

いいえ。何でもないわ。

それより、坊っちゃまもあなたに何か恩返しがしたいって言ってたから、坊っちゃまに何かしてほしいことを言いなさい。

わたしが坊っちゃまに伝えておくから。

ふーん?いい心がけね。

けどお願いはそれ以外にしなさい。

えぇ。だってあなたの辞表、まだ坊っちゃまに受理してもらってないもの。

ここにあるわよ、ほら。

別に?坊っちゃまに提出するのを忘れてただけよ。

怪我が治ったら、これまで休んでいた分しっかり働いてもらうわよ。

ふん…お願いは次、お見舞いに来る時までに考えておくといいわ。

お大事に。それじゃあね。



うん…まぁいいんじゃない?

坊っちゃまのお部屋の掃除はこんなもので。

ベッド?問題ないんじゃない?

坊っちゃまが気にするほどのシワは見当たらないから。

さ、次の仕事よ。

坊っちゃまが帰ってくるまでそんなに時間はないから、キビキビ動きなさい。



うん…紅茶、またこれと同じものを作って、坊っちゃまにお出ししなさい。

えぇ。これなら一応、及第点よ。

少なくとも、坊っちゃまもこれを飲んで嫌なお顔はされないでしょうし。

礼はいいから、さっさと淹れて。

坊っちゃまをあまり待たせないで。

ほら、わかったら早く行きなさい。



来たわね。あなたを呼び出したのは…ほら、これ。

そう。辞表。

坊っちゃまはあなたに辞めてほしくないそうよ。

坊っちゃまの意志はあなたも直接確認したでしょ?

その上で聞くけど…この辞表、どうするの?

ふん…なら、これからも坊っちゃまのために精進しなさい。



はぁ…ここがわたしの墓場、なのかしらね…

坊っちゃま…最後まで貴方のそばでお仕えできなくて申し訳ございません…

あの少しは使えるようになったへっぽこ執事も…坊っちゃまのこと、頼んだわよ…

え…………なんであなたがここに…?

こんなところで勝手に死ぬのは許さないって…

あなた、上司に対する口の利き方ってものがなってないわよ。

これは坊っちゃまのお言葉だって…

そう…なら仕方ないわね。

えぇ、その通りよ。

坊っちゃまを政治利用しようとしてる連中が寄越してきた刺客よ。

まず、一番邪魔者となりうるわたしを始末しに来たってところ…らしいわ。

まさかこれほどの戦力を用意してくるとは思わなかったけど。

なんで誰にも相談しなかったって…

誰かに相談したら、きっとどこかで坊っちゃまの耳に入るでしょう?

こんなくだらないことで、坊っちゃまにご心配をおかけするわけには……

…ッッ!そう、だったわね…

たしかに坊っちゃまも常日頃言っていたわ。

「使用人もペットもみんな等しく大切な家族だ」って。

少しは自惚れてもいいのかしら…?

わたしがここで死んだら、坊っちゃまも悲しむって…

はぁ…わかったわ。

今回はあなたの言い分を全面的に認めるわ。

上司に対するその無礼な口の利き方にも目をつぶってあげる。

えぇ。もう諦めたりしないわ。

坊っちゃまを悲しませないためにも。

だから…手を貸しなさい。

今はあなたの力が必要だから。

もちろんよ。この状況をひっくり返して、坊っちゃまのところに無事に帰ってみせる。




あなた…こんなところで何してるの?

坊っちゃまには…そうね、泣いて抱きつかれたわ。

坊っちゃまにあんな顔させるなんて…使用人失格ね。

あなたにいつもあんな偉そうに言ってるのに…

今回ばかりはホント、自分が嫌になってくる。

情けないったらありゃしない。

…っ!あなたも言うようになったわね。

新米のくせに生意気。

けど…その通りね。

今は坊っちゃまの元に、無事に帰って来れたことを誇るわ。

あなたもその…あ、ありがとう…

あの時、あなたがあの場に駆けつけてくれなかったら、わたしはきっと自分を諦めてた。

坊っちゃまにお仕えするという使命も忘れて。

それを思い出させてくれたことには、改めて感謝するわ。

いつも教えてもらってたことだからって…

ふふっ、やっぱり生意気ね。

けどそこまで言えるようになったんなら、あなたは坊っちゃまの立派な執事よ。

けどわたしに認められたからって、浮かれるんじゃないわよ。

まだまだ坊っちゃまのためにやるべきことは、山ほどあるんだから。

これからもその調子で頑張りなさい。新米執事くん。



まったく、坊っちゃまったら…

わたしはあのへっぽこ執事のことをそんなふうには見ていなi……

ひゃっ!あ、あなた!いつからそこにいたの⁉︎

さっきから声かけても全然返事しなかったから、近づいて声かけたって…

そ、そう。それは悪かったわね。

いいえ、ちょっと考え事をしていただけよ。

それでなに?また何かやらかしたの?

あぁ、坊っちゃまが次のパーティーに着ていく服の用意ね。わかったわ。

ん?あぁ、そうね。

坊っちゃまもそろそろいいお年だし、結婚のことを考えないと…

当たり前よ。世継ぎがいないとお家が途絶えてしまうでしょう?

服だけじゃなくて、坊っちゃまにふさわしい相手も見つけないと…考えることが山積みね。

は?なに、あなた。喧嘩売ってるの?

わたしの結婚のことなんてどうでもいいでしょ。

今は坊っちゃまの将来のことが優先なの。

余計なこと考えてる暇があったら、坊っちゃまのために何ができるか考えなさい。



(結婚、か…そんなこと考えたこともなかったけど…)

(最近、実家の親からも坊っちゃまからも、心配されてるし…)

(わたしは坊っちゃまに仕えてるだけで幸せなのだけれど…)

はぁ…やっぱりこのままじゃいけないのかしらね…

何がって、わたしが結婚しないっていう選択肢をとることが、よ……

は?ちょっと、なんであなたがここにいるわけ?

人の独り言を盗み聞きしにきたってこと?

それでわたしの弱みでも握るつもりだった?

単純に気になったって…

そうね、今のところ結婚は考えていないわ。

坊っちゃまにお仕えすることが、わたしにとっては何よりの喜びだもの。

そう…ありがとう。

あなたに分かってもらえて嬉しいわ。

あっ…(咳払い) な、何を言ってるの。

あなたも坊っちゃまに仕える身なら、それくらい分かって当然でしょう。

さ、雑談はここまでにして、仕事に戻るわよ。



お疲れ様。今日はもう上がっていいわよ。

…なにニヤついてるの?

その締まりのない顔はやめなさい。みっともないわよ。

えぇ…たしかに坊っちゃまがご結婚なされたのは、おめでたいことよ。

けどだからって、使用人であるわたしたちが気を緩めていいことにはならないわ。

むしろ、坊っちゃまがより幸せな人生を送れるよう、気を引き締めていかないと。

まったく、そういうところはまだまだ未熟なんだから…

なっ…言うことにかいてあなたは…!

どうしてそこで、わたしが誰かとお付き合いすることが、あなたの幸せにつながるっていう話になるの!

坊っちゃまもそれを望んでるって…それは…

わたしの幸せは坊っちゃまに尽くす、ただそれだけよ。

自分自身の幸せを追い求めることは悪いことじゃないし、むしろ坊っちゃまもその方が喜ぶって…

そう…少し考えておくわ。



(わたしが誰かと付き合う…今の坊っちゃまみたいに…)

(もし付き合うとしたらやっぱり…)

(な、なんでここであのへっぽこ新米執事が浮かぶのよ!)

(あ、ありえない!あの男はあくまでわたしの部下であって、異性として見るなんてそんなの…!)

(おかしい…こんなのおかしいわ。)

(少し疲れてるのかしらね…)

(坊っちゃまに頼んで、お暇をいただいた方がいいかしら…)



なんであなたがここにいるのよ…

あなたも坊っちゃまから休暇をいただいた?なんで?

メイド長のことをよろしく頼むって言われた?

〜〜っ!坊っちゃま、なんて余計な真似を…!

い、いえ!なんでもないわ!

坊っちゃまのご命令なら仕方ないわ。

ほら、行くわよ。適当にその辺ブラつきましょ。



ふーん…このお店の紅茶も悪くないわね。

まあわたしには及ばないけど。

は?何言ってるの、当たり前でしょ。

そこらのお店に味で負けるようなら、坊っちゃまを満足させられないでしょう?

あなたの紅茶……そうね、まあ今のところは五分五分じゃない?

そうよ。だからさっさと坊っちゃまを完全に満足させられるような紅茶を淹れられるようになりなさい。

それが坊っちゃまの執事としての、あなたの責務なんだから。

…なにニヤニヤしてるの?

その締まりのない顔はやめなさいと前にも言ったでしょう。

坊っちゃまの執事なら常に表情に余裕を保ちつつ、引き締めるように……って何?何か言いたそうだけど。

(むせる)

ちょ!急に何を言い出すの!

まったくあなたという人は…!

その減らず口はなんとかならないのかしら…!

はぁ…一番最初に言ったでしょ?

あなたを坊っちゃまにふさわしい執事に鍛え上げるって。

あなたを厳しくしごいたのは、あくまで坊っちゃまのためであって、あなたのためじゃない。勘違いしないで。

…分かってるならいいわ。

まぁ今さら確認するまでもないことだけど…

さ、そろそろお会計を済ませましょう。

割り勘でいいわね?

は?俺が奢りますって…

いいわよ、わたしの方が給料は高いもの。

常日頃の感謝の気持ちですって…

あなたって人はホント、どれだけ人の心をかき乱せば済むの…

いいえ、なんでもないわ。

とにかく、ここは割り勘で済ませるわよ。

あなたにこれ以上、借りを作りたくないもの。

あるわよ。とてつもなく大きな借りが。

…その話はいいでしょ。

もうお店、出るわよ。



なに?そろそろいい時間だし、帰ろうと思ってるんだけど。

最後に寄りたいところがある?

…そんなに時間をとらないならいいわよ。



ここがそうなの?

あなたにしてはずいぶん、綺麗なところを知ってるじゃない。

ふーん…この街に来たばかりの頃にたまたま見つけたのね。

そうね。とても綺麗だと思うわ。

こんなに雄大な景色は坊っちゃまにお仕えしてから、見てなかったかもね…

あ、勘違いしないでよ?

坊っちゃまが悪いと言ってるわけじゃないから。

ただわたしが…自分の仕事に夢中になって、周囲の景色を気にも止めてなかったなって言ってるだけ。

さ、帰りましょうか。

これ以上は坊っちゃまも心配されるでしょうし。

なに?……ッッ!あなたはすぐそういうことを…!

ちょっとこっち向きなさい。

(キス)

いい?一度しか言わないから、耳をかっぽじってよーく聞きなさい。

わたしは……あなたのことが好き、になってしまったみたい。

なんでって…あなたがあの時、わたしを助けたからよ。

あなたがわたしのために体を張りさえしなければ…こんな気持ちを抱くこともなかったのに。

結婚の話をされてからずっと考えてた。

坊っちゃまの幸せがわたしのすべてなのは本当だけど…

もし万が一、わたしが誰かと添い遂げることになるとしたら、その相手はどんな人なんだろうって。

そしたら…あなたしか出てこなかったのよ、頭の中に。

わたしはあなたの上司で、あなたはわたしの部下。

そんな関係になるなんてありえないって、ずっと否定してきた。

けど…どれだけ振り払ってもあなたのことは頭から離れなかった。

いえ、むしろどんどん強まっていくばかりだったわ。

えぇ、自分でも不思議よ。

あなたみたいなナヨナヨ執事を好きになるなんて。

あなたは坊っちゃましか見ていなかったわたしと違って、わたしのことも見てくれた。

敵にやられそうになった時も、結婚の話が出たときも、あなたはわたしに自分が幸せになることがいかに大事かを教えてくれた。

その答えは…この感情が偽りでないのなら、きっとあなたにあると思うの。

そう。わたしのことをメイド長としても、一人の女としても見てくれたあなたになら、わたしの全てを預けてもいいんじゃないかって。

だから…わたしは自分の幸せを正直に求めるなら、あなたと添い遂げることを希望するわ。

と、とりあえずそんなところよ。長々と悪かったわね。

…まぁこれがわたしの勘違いで、実はあなたにとっては、わたしはただの鬼上司かもしれないけど…

そうだとしたら、今言ったことは全部忘れてちょうだい。

もう日も沈むし、いい加減帰るわよ。

(バックハグされる)

な、なにを…⁉︎

……まさかあなたがこんな女泣かせな人だなんて知らなかった。誤算よ、誤算。

…うるさい。泣いてなんかないわよ。

ちょっと目にゴミが入っただけよ…バカ。



…今見て聞いたこと、全部忘れてもらえる?

あなたねぇ…!上司をコケにする気⁉︎

くっ…そうやって口説くのが卑怯なのよ。

惚れた弱みじゃないけど…そんなこと言われたら逆らえないじゃない…

…いいわよ。手くらいなら繋いであげる。

えぇ…坊っちゃまにもちゃんと報告しなくちゃ。

わたしたちが正式に付き合い始めたってことを、ね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
忠誠心の厚いメイド長は新米執事の俺をガンガンしごいてきたが、最後にはデレてくれた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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