友人とあなたの好きな人の話をした日の放課後、その話はクラスメイトの彼女にも広まっていた。
彼女は、あなたの好きな人は自分自身だと強く思い込んでいて、そのことを許せない彼女は狂気的な手段に出た。

君、ちょっと、一緒に放課後残ってくれる？
何って、私たちの大事な要件があるから。

ねえ、さっき噂で聞いたよ？
君、委員長さんのこと好きなんだって？

確かに、素敵だよねあの子。
皆をまとめる力があって、頭もよくて、何よりも可愛い。
好きになっちゃうのは当たり前って感じ？

……だけどさ、何で君まで好きになってるの？
おかしいよね？
君が好きなのって私でしょ？

私のこと好きなはずの君が、何で他の女ことが好きって噂流れてるの？
付き合ってる、とかじゃなくて好きってだけだから、友達とでもそういう話でもしたんだろうけど。

ふーん、やっぱりそうなんだ。
なんで、そこで私の名前を出さなかったの？

もう一度言うよ？
君が好きな人は私でしょ？

もしかして、私って答えたらありきたりでつまらないと思った？
そんなことないよね？
恋人だったらその相手のこと必ず言うもの。

それとも、恥ずかしかった？

ダメだよ？
いくら恥ずかしいからって他の女のこと好きって言って誤魔化すなんて。
恥ずかしいならせめて黙ってなきゃ。

それだったら私、本当は私のこと好きって気持ちで頭の中はいっぱいだけど、こんな気持ちを私以外に見せるのが恥ずかしくて言えないんだってわかってあげられるのに。

そして、少なくとも君にとって委員長さんはいい印象ってことなんだね？

……私以外の女のこと、意識してるんだ？

ひどいなぁ、君が途轍もなく私のこと好きって言ったから、私、君のこと考えずにはいられなくなっちゃったんだよ？
それなのに当の君は他の女のこと考えてたりしたんだ？

それなら、私のことしか考えられないようにしてあげないとダメだよね？
そもそも、私のことが好きなのが君なんだよ。

そう、私の君は他の女のこと好きになったりしないの。
きっと、今の君は何かに毒されて、変なこと考えちゃってるだけ。
そうだよそうだよ。

君は何にも悪くないの。
だけど、このままだと本当の君に戻れなくなっちゃうから、今から治しておかないとね？
ちゃんと、私のことが大好きな君に戻ってもらうために。

もしかして君、私の言ってること、理解できてないのかなぁ？

でも、仕方ないよね？
だって、私以外の女のこと好きになっちゃうような君じゃ、普通じゃないもの。
この事の重大さがわかってなくてもおかしくないんだろうね。
だからこそ、君を治療しなきゃいけないのよ。

まず、現在の君の状態を知るためにももう一度教えてくれる？

君の好きな人は？

　（男、無言）

答えてよ。

ねえ、どうして何も言ってくれないの？
黙ってても何にもわからないよ？

何その目、私がおかしいこと言ってるとでも言いたいの？

ああ、黙ってれば私のこと好きってわかってあげられるって言ったかもね。
だけどね、そういうときの面と向かって言えない理由って恥ずかしさでしょ？

今の君、思いっきり怖がってるようにしか見えないんだけど。
いくらなんでも、私のこと怖がるような君じゃおかしいよね？

どうしようかな。
どうすれば、君は私のことだけを見てくれるのかな。

……君の本能を書き換えなきゃ。

悪いけど、これからすることは全部君のためだから。
恨むなら、毒された自分自身、だよ？

　（女、男の首を絞める）

あははっ、その怯えた目、素敵……

ダメだよ。
抵抗なんてさせない。

体ッ重、掛けたら、いくら男の子でも何にもできないよね？

苦しいかな？
その苦しさは、私以外の女を好きになってしまった罰、私しか見えなくなる君に戻すための必要な苦痛。
苦しみ、しっかりと感じてね？

大丈夫？
もう無理？

うーん、手、緩めて欲しかったら、私のこと好きって言って。
心の中にある君の本当の気持ち、全部出し切るつもりで私に教えてよ。

あ、これじゃ喋れないか。
仕方ないな、ちょーっとだけ、緩めてあげる。

　（男、媚びる）

んふふっ、必死ね。
やっと吐き出せる息全部私への愛の言葉にしてるって感じ、伝わってくるよ。

ねえ、もっと。
こんなにいっぱい言ってくれるなんて嬉しいの。
精一杯の愛をくれる君がとてもとても可愛くて。

今度は、もっと気持ちを込めてくれる？
助けて欲しいって気持ちばっかりで、愛が弱かったと思うから。

もう一回、限界ギリギリまで苦しくなったら、いっぱい言ってくれるよね？
じゃあ、行くよ？

　（女、力を強める）

ああっ、涙目になっちゃってる……
そういうの、興奮してくるわ……

意識、遠のいちゃうね。
私しか見えなくなっちゃうね。

私のこと、好き？

　（男、必死に頷く）

あははっ、わかりやすい。
なんだか、私の掌の上って感じで可愛い。

好きなのは、私だけ？
君の意識はずっと、私だけを捉えてくれる？

　（男、必死に頷く）

そっかぁ。
そこまで本気で頷いてくれるなら、この手、必要ないかな？

それに、もうそろそろ危ないだろうし。

はぁい。
私から、空気のプレゼント。

　（女、手を緩める）
　（男、媚びる）

んへへ……嬉しい……
その気持ち、本当なんだよね？
絶対、嘘じゃないよね？

もちろん、私もよ？
君のこと、絶対に誰にも渡したくないくらい愛してるんだから。

君も、絶対に誰のところにも行かないように私のことだけをずっと愛してくれる？

　（男、必死に肯定する）

うんっ、ありがとう。
おかげでいい証拠が録れたよ。

そう言われただけじゃ、わかんないよね？

じゃーん。
見てこれ、スマホで録音してたんだ。

君の本気の告白、ばっちり全部残ってるよ？

これ、言い逃れできないよね？

これで君は絶対に私のところから離れられない。
他の人に告白とかしたら、この愛してるって言ってる音声、送り付けちゃうんだから。

もっとも、これだけ愛を叫んでくれるなら、そんな心配も必要ないのかな？

あ、そうそう、私、首絞め好きなんだ。
私のこと、好きだよね？
愛してるよね？

はぁい。
私も。

それじゃあ、これから愛しい者同士ってことで、よろしくね？

・台本（ゆるボイ！）
私の君は他の女のこと好きになったりなんかしない
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩