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- 魔王
公開日2022年06月10日 22:02
更新日2022年06月10日 22:02
文字数
2438文字(約 8分8秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
最強の魔王
視聴者役柄
転生勇者
場所
魔王の城
本編
ようこそ、我が城へ
待ちわびたぞ、『勇者殿』?
我を討つべくこの地に召喚された
異邦より来たりし英雄よ
……しかし、丸腰とは舐められたものだな?
それとも、この世ならざる力を振るうのには
武器など必要ない、ということか?
曰 く、
怪力無双と雷 をも凌駕 する神速を併せ持つだの
妖刀魔剣の類ですら傷つけられぬ鋼の肉体を持つだの
まあ、眉唾ものもいくらかあるが……
その名声、我の耳にも届いておるぞ
……そうなのか?
大量の尾鰭胸鰭 が付いただけだと?
……はは、そこまで謙遜 することもあるまい
お前は数多 の人の村と交流し
その村の抱える問題を解決し
それと同じだけの魔物の里でも交流して
その里を救ったはずだ
強さの真偽はともかくとして
お前の名声は確かなものよ
それで、勇者殿
お前はどう思った?
この世ともあの世とも異なる異邦より来訪し
この世を巡り……そして我が城に辿り着いたお前にとって
この世は救うに値するか?
……
ふふ……、まあ御託 はここまでにしよう
どうあがこうと、お前は我と戦う
お前が望もうが望むまいが
お前と我は戦う
様々な想いを乗せてお前は我の前に立っている
我を倒せという声に押され、お前は我の前に立っている
ならば、お前と我は戦う……
戦わねばならぬ!
さあ、勇者殿、我を倒して見せよ
この、千年飽きもせず脈打ち、我を生かし続ける
我が心 の臓腑 を見事に穿 ち
この千年の停滞と怠惰 を終わらせて見せよ!
……その気になったか?
そうだ、身構えるがいい
いい眼だ
(間)
(ため息)
……だが、残念だ
我は残念でならぬ
この世界を旅してきたのならば、我の逸話 も知っておるはず
……そうだ
『一振りの剣 で倒すことはできない』
……我は自身の肉体の耐性を自由に選択できる
剣 で斬ろうというならば剣 で斬られぬ身体に
戦槌 で打ち砕こうというならば戦槌 に砕かれぬ身体に
我は次々に自らの耐性を変える
故に、ひとつの剣 では倒すことができぬ
あの逸話はそういう意味だ
勇者殿
お前は少なくとも二種類の武器を用意しなければならなかった
そのことは、注意深くだれかの話を聞いていれば分かったはずだ
我は今から拳の耐性を得る
それで我は拳で斃 されなくなった
これは力の強さの問題ではない
概念的な相性の問題だ
故に、この勝負は
もはや勝負足りえなくなった
如何 に怪力無双とて
『我は拳で斃 されない』
という絶対の掟を、拳で破壊することはできないのだ
……勇者殿
我は、本当に残念でならぬ
だが、勇者殿が我の前に立ったからには
我とて、もてる力をあえて使わぬなどという手加減をするわけにはいかぬ
我はお前を打ち倒すために死力を尽くす
なれば勇者殿
お前も──、
せいぜい死力を尽くして死ぬがいい
……?
勇者殿、お前いつ、どこから武器を出した?
お前はここに丸腰で来たはずだ
なのになぜ、そのような
灼 けつくように──、燃えるように輝く剣 を手にしているのだ?
……勇者殿は手品師か?
……ふむ
…………ちーと、能力?
とらっくにひかれて? 神様に貰った?
……あいてむ……すとれえじ……?
ふむ……
やはり異邦の者の言うことはさっぱりよくわからぬ
魔術とも体術とも完全に異なる……異能 、ということか?
よくわからぬが、つまり勇者殿は
見えない……おおきなカバンを持っている
ということか?
…………まあ
それは……、旅には便利だろう……な
……ふふ
まあ、よい
これで、我ともまっとうな勝負ができるということだな
良いだろう
だが、その剣、恐らく炎の属性を帯びた剣なれば
我は『炎の斬撃』に耐性を持てばよい
ただそれだけのことだぞ?
ほう、今度は紫電を帯びた斧か……
なるほど、その見えないカバンは瞬 きほどの間 に
持つ武器やら防具やらを入れ替えることもできると……
なるほど……
……ふむ
いかにも、我は肉体を作り変えて耐性を得ているが
お前の指摘する通り
耐性を得るということは弱点を得るということだ
ふふ、なるほど
なるほどなるほど!
つまりこの戦い
実質的には心理戦ということだな
我はお前の出してくる武器を予測して
自らの肉体を作り変えつつ殴りかかる
お前は我の攻撃を予想して防具を入れ替えながら
我の裏をかくような武器をそのカバンから取り出す
ふふふ
ははははははは!!
これほどに心躍 ったことはないぞ!
さあ、やろうじゃないか!!
(剣戟の音)
× × ×
ふふふ、なかなか……いや
最高に楽しかったぞ、『勇者』
これほどに気分が良いのはこの世に生を受けて初めてのことだ
……まさが七十二あるうちの我の命の七十までをも消し飛ばされるとはな
これで我の命は残り二つとなってしまった
だが、そなたももはや限界のようだ
あとは我がひと撫でするだけで消し飛ぶ命だろう
この勝負、こちらの勝ちだな
……どうした? なにか言いたいことがあるのか?
……その、『ちーと』とはどのような意味だ
あまりいい意味には聞こえぬが
……まあよい
勇者……、いきなりのことで驚くとは思うが
(間)
我の伴侶 にならぬか?
これまで我と対話できるものなど誰もいなかった
言葉は言うに及ばず、戦いという言語においても
我は誰とも対話できた試しがない
勇者、そなたと剣 を、拳を交える度
そなたの想いを受け取ることができた
身体のうちに、言い知れぬ感情が湧き上がってくるのを感じた
我はきっと、この殺し合いの中で……恋、というものを学んでしまったのだろう
ああ……まるで凍り付いた世界が解けていくようだ……
勇者よ……わが伴侶となれ
そなたも見たはずだ
この世界は、どこか歪んでいる
そして、それは我を斃 したところでなにも変わらぬ
異邦から来訪したそなたならば、それに気付いたのではないか?
我はそなたとの戦いの中で確信した
我と対話ができるそなたが、この世界の者たちと交流できるのならば……
そなたとならこの世界を変えられる
我と共に、歩まぬか? そして、この停滞した世界を……
より良きものに変えては、みないか
……っ
確かに、そなたは敗北した……
しかし、我は、そなたを脅して、む、無理に婚姻を結ぶことなど……
(間)
いずれにしても、その怪我ではまともな返事もできまい
……我が城に滞在することを許可する
まずは傷の手当てをして、ゆっくり休むが良い
体力が回復したら……
返事をきかせてもらおうぞ
× × ×
……さて、……ふむ
こういうことには疎いのだが……
看病をして気をひく、という方向で良いのだろうかの?
……うむ……家来どもにきいてみるとするか
待ちわびたぞ、『勇者殿』?
我を討つべくこの地に召喚された
異邦より来たりし英雄よ
……しかし、丸腰とは舐められたものだな?
それとも、この世ならざる力を振るうのには
武器など必要ない、ということか?
怪力無双と
妖刀魔剣の類ですら傷つけられぬ鋼の肉体を持つだの
まあ、眉唾ものもいくらかあるが……
その名声、我の耳にも届いておるぞ
……そうなのか?
大量の
……はは、そこまで
お前は
その村の抱える問題を解決し
それと同じだけの魔物の里でも交流して
その里を救ったはずだ
強さの真偽はともかくとして
お前の名声は確かなものよ
それで、勇者殿
お前はどう思った?
この世ともあの世とも異なる異邦より来訪し
この世を巡り……そして我が城に辿り着いたお前にとって
この世は救うに値するか?
……
ふふ……、まあ
どうあがこうと、お前は我と戦う
お前が望もうが望むまいが
お前と我は戦う
様々な想いを乗せてお前は我の前に立っている
我を倒せという声に押され、お前は我の前に立っている
ならば、お前と我は戦う……
戦わねばならぬ!
さあ、勇者殿、我を倒して見せよ
この、千年飽きもせず脈打ち、我を生かし続ける
我が
この千年の停滞と
……その気になったか?
そうだ、身構えるがいい
いい眼だ
(間)
(ため息)
……だが、残念だ
我は残念でならぬ
この世界を旅してきたのならば、我の
……そうだ
『一振りの
……我は自身の肉体の耐性を自由に選択できる
我は次々に自らの耐性を変える
故に、ひとつの
あの逸話はそういう意味だ
勇者殿
お前は少なくとも二種類の武器を用意しなければならなかった
そのことは、注意深くだれかの話を聞いていれば分かったはずだ
我は今から拳の耐性を得る
それで我は拳で
これは力の強さの問題ではない
概念的な相性の問題だ
故に、この勝負は
もはや勝負足りえなくなった
『我は拳で
という絶対の掟を、拳で破壊することはできないのだ
……勇者殿
我は、本当に残念でならぬ
だが、勇者殿が我の前に立ったからには
我とて、もてる力をあえて使わぬなどという手加減をするわけにはいかぬ
我はお前を打ち倒すために死力を尽くす
なれば勇者殿
お前も──、
せいぜい死力を尽くして死ぬがいい
……?
勇者殿、お前いつ、どこから武器を出した?
お前はここに丸腰で来たはずだ
なのになぜ、そのような
……勇者殿は手品師か?
……ふむ
…………ちーと、能力?
とらっくにひかれて? 神様に貰った?
……あいてむ……すとれえじ……?
ふむ……
やはり異邦の者の言うことはさっぱりよくわからぬ
魔術とも体術とも完全に異なる……
よくわからぬが、つまり勇者殿は
見えない……おおきなカバンを持っている
ということか?
…………まあ
それは……、旅には便利だろう……な
……ふふ
まあ、よい
これで、我ともまっとうな勝負ができるということだな
良いだろう
だが、その剣、恐らく炎の属性を帯びた剣なれば
我は『炎の斬撃』に耐性を持てばよい
ただそれだけのことだぞ?
ほう、今度は紫電を帯びた斧か……
なるほど、その見えないカバンは
持つ武器やら防具やらを入れ替えることもできると……
なるほど……
……ふむ
いかにも、我は肉体を作り変えて耐性を得ているが
お前の指摘する通り
耐性を得るということは弱点を得るということだ
ふふ、なるほど
なるほどなるほど!
つまりこの戦い
実質的には心理戦ということだな
我はお前の出してくる武器を予測して
自らの肉体を作り変えつつ殴りかかる
お前は我の攻撃を予想して防具を入れ替えながら
我の裏をかくような武器をそのカバンから取り出す
ふふふ
ははははははは!!
これほどに
さあ、やろうじゃないか!!
(剣戟の音)
× × ×
ふふふ、なかなか……いや
最高に楽しかったぞ、『勇者』
これほどに気分が良いのはこの世に生を受けて初めてのことだ
……まさが七十二あるうちの我の命の七十までをも消し飛ばされるとはな
これで我の命は残り二つとなってしまった
だが、そなたももはや限界のようだ
あとは我がひと撫でするだけで消し飛ぶ命だろう
この勝負、こちらの勝ちだな
……どうした? なにか言いたいことがあるのか?
……その、『ちーと』とはどのような意味だ
あまりいい意味には聞こえぬが
……まあよい
勇者……、いきなりのことで驚くとは思うが
(間)
我の
これまで我と対話できるものなど誰もいなかった
言葉は言うに及ばず、戦いという言語においても
我は誰とも対話できた試しがない
勇者、そなたと
そなたの想いを受け取ることができた
身体のうちに、言い知れぬ感情が湧き上がってくるのを感じた
我はきっと、この殺し合いの中で……恋、というものを学んでしまったのだろう
ああ……まるで凍り付いた世界が解けていくようだ……
勇者よ……わが伴侶となれ
そなたも見たはずだ
この世界は、どこか歪んでいる
そして、それは我を
異邦から来訪したそなたならば、それに気付いたのではないか?
我はそなたとの戦いの中で確信した
我と対話ができるそなたが、この世界の者たちと交流できるのならば……
そなたとならこの世界を変えられる
我と共に、歩まぬか? そして、この停滞した世界を……
より良きものに変えては、みないか
……っ
確かに、そなたは敗北した……
しかし、我は、そなたを脅して、む、無理に婚姻を結ぶことなど……
(間)
いずれにしても、その怪我ではまともな返事もできまい
……我が城に滞在することを許可する
まずは傷の手当てをして、ゆっくり休むが良い
体力が回復したら……
返事をきかせてもらおうぞ
× × ×
……さて、……ふむ
こういうことには疎いのだが……
看病をして気をひく、という方向で良いのだろうかの?
……うむ……家来どもにきいてみるとするか
クレジット
ライター情報
剣城・アイスドーラ・凍子です。
駆け出しの台本師
Twitter:@Ice_dola
いろんな設定のシチュエーションを書いていきます。
駆け出しの台本師
Twitter:@Ice_dola
いろんな設定のシチュエーションを書いていきます。
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