勇者のあなたは、クールな魔法使いの少女と共に冒険の旅路にあった。ある日強力な敵を倒さんと、危険なため少女には黙って単身敵地へと乗り込む。数日後、何とか討伐に成功し帰還するも満身創痍。冷静な少女も心配やら不安やらが爆発し、言葉もなくして大号泣した。初めて見る少女の取り乱し様に驚きつつも、宥めて落ち着かせ、その夜床に就こうとしていた時のことである。いつもより心なしかしおらしい彼女が、宿屋の部屋にやってきた。

(ノックする)
(ドアが開く)

……勇者
寝るとこだった？
そう

(床を歩く音)
(ベッドに座り込む)

……何、って
何も
一緒にいたいだけ
別に、何もしなくてもいい
……
？　……うん。とりあえず、もう泣き出すことはない。多分
……お茶？　何で？　もう寝るところでしょ。いいよ
勇者は、私の近くにいてくれれば、それでいい

(にじり寄り、勇者の服を掴む)
(勇者、仰け反る)

……離れちゃダメ
あれだけ離れたんだから、これだけ近づくのは当然
それとも、私のこと、遠ざけたい？
ならこのままでいて

(静かに頬をすりつける)

ん……
……逃げてる。ダメ

(抱きつく)
(息遣いだけが聞こえる……)

……ん、何？　そろそろ寝る？
分かった。じゃあ

(シーツをばさりと捲る音)

火、消すよ

(明かりを消す)

……？　違わないよ
一緒に寝るから
言ったよ。離れちゃダメって
勇者、今信用ないから
また寝てる間に出ていくかもしれないし
それは、ほんとに、嫌

(ベッドの中で抱きつく)

いつでも、傍にいてよ
離れたりしないで
……
相手が魔法使いの天敵とか、私を心配してとか、理由にならない
私も勇者の仲間。一緒に戦って、一緒に傷つくもの。今までずっとそうだった
なのに今更置いてくのは、違う
それに、それ以上に……寂しかった

(ぎゅっと勇者の服を掴む)

戦力として、仕方なく一緒にいたはずだったのに、勇者は私に構って
こんな私にも飽きずに接して、仲間と言って
いつの間にか、私は、勇者が大切になっていたみたい
近くにいて当たり前、どころか、近くにいてほしい、って
だからもう絶対、勝手に離れないで。傍にいて
……本当？　約束して
……うん
良かった。一先ず、今日は安心
うん、今日は
勇者、いついなくなるか分からない。前科者には監視が必要
だから、明日からも一緒に寝る
え、じゃない。明日も明後日も、こうやって捕まえさせてくれなきゃダメ
勇者は、私の勇者だから
ふふ

・台本（ゆるボイ！）
【フリー台本】クールな魔法使いが勇者にいなくなられると。【男性向け】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
小太刀 虚夜