同じサークルの後輩が頭を打って倒れたと聞き、病室に駆けつけるあなた。
意識が回復し、思ったより元気そうな彼女を見てほっとするあなたに、彼女は怪我をした本当の理由を告げてきて……？

ごめんなさい、先輩
私なんかのためにわざわざ



しばらくは絶対安静って言われちゃって……



今は全然大丈夫なんですけどね
先輩が来てくれたからかな、なんて
えへへ……



あ、ちょっと待っててくださいね
今椅子用意しますか…らっ
（つまずいてよろける）



いたた……
ご、ごめんなさい！
ちょっとふらっとしてしまって……
痛くなかったですか？



（間を置いて）
はぁ……よかったぁ
私は怪我するの慣れてるから良いですけど
先輩の体に傷がついちゃったら大変ですから



これでもちゃんと気を付けてるんですよ？
ただ昔から、おっちょこちょいなところはどうしても直らなくて



あの……先輩
もし良かったら、こっち来て座りませんか？



このベッド広いので、並んで座ったら
ちょうどいいかなって



勝手に動くとまた転んじゃいそうですし
先輩に持ってきてもらうのも、なんだか申し訳ないですから


えっと、別に先輩の隣に座りたいとか
ではなくてですね……



(恥ずかしそうに)
う、嘘です、はい……
最近会えなくて寂しかったんですっ
悪いですかっ



こんな恥ずかしいこと
言わせないでくださいよ、もう……



（並んで座る）
やっぱり、ちょっと狭かったですかね
私はこれはこれで先輩を近くに感じられて良いなって思いますけど



（間を置いて）
ふふっ……
い、いえ……先輩のことを笑ったわけじゃありませんよ？
この傷跡、懐かしいなぁって



覚えてますか？あの時のこと



私が包丁で手のひらばっさり切っちゃって
慌てて先輩に電話して



そしたら先輩は、ガーゼとか消毒とか
色々抱えて飛んできてくれて
私よりも辛そうな顔して、大丈夫って
何回もきいてくれて……



あの時の先輩
髪ぐしゃぐしゃで靴も片方合ってなくて
それで私、先輩の顔見て安心したら
つい吹き出しちゃって、それで先輩に怒られて……



全部覚えてます、昨日のことみたいに



あれが初めてでしたよね
先輩が私を助けてくれたの



あの時はすごく嬉しくて
すごく……ドキドキしました
あぁ、私は今こんなにも愛されてるんだなって



先輩が来るまで痛くて泣きそうだったのに
それが嘘みたいに全然痛みを感じなくなって



今も不思議と全然痛くないんです
先輩がそばにいてくれてるからかな



むしろ心地良いとさえ思うんです
こんなに私のことを思ってくれるのは先輩だけだから



不思議に思いませんでしたか？
私の家族が誰もここに来ないの



見捨てられてるんです、私
あの人達からすれば、私はできそこないの娘だから



私と関わりがあるってことすら
知られたくないんでしょうね
私の身に何かあっても顔も見せてくれない



それならいっそ放っておいてくれればいいのに
お金や物を与えていれば大人しくしてるだろうって
それが愛情だと勘違いしてるんですよ、あの人達
まったく呆れちゃいますよね



だから余計、愛に飢えてるのかもしれません
誰かに愛されていないと、苦しくて苦しくて
たまらないんです



だから先輩には愛して欲しいんです
もっと、もっと、たくさん



できることなら私だけを
そのためなら、なんだってします
本当に、なんでも



あぁ、そういえば……
先輩に会ったら言おうと思ってたことがあるんです



ついこの間、先輩があの子と歩いてるの見かけて……
ほら、あの子ですよ、先輩の幼馴染の



とても仲良いみたいですね
いいんですよ、隠さなくても
あの子から告白されたのも知ってます



いつかこうなるんじゃないかって思ってました
でも、やっぱり受け止めきれなくて



どうしても我慢できなくて
こんなことしちゃったんです



ねぇ……
先輩は私が怪我したって聞いた時
どう思いました？



またうっかり転んだりしたんだろうって思いました？
ドジだなって思いました？



そうじゃないんです



階段から落ちたんです
怪我をするために、わざと



もし打ちどころが悪かったら
もう先輩に会えなくなるかもしれない
って考えたりもしました



でも、どうしても止められなかったんです



先輩に心配して欲しかったから
あの時みたいに大丈夫って声をかけて
欲しかったから
先輩に愛してもらいたかったから



ねぇ……先輩
こっち向いてください



（キス音）
ふふっ……
大丈夫ですよ
この時間は誰も来ません



それとも先輩は嫌ですか？
私にキスされるの



私は好きです、キスするの
もちろん、先輩のことも
好きで好きでたまらないんです
あの子に負けないくらい



キスだけじゃなくて、もっといろんなことしたいって思ってます



先輩にならいくら乱暴に扱われたって構いません
私の体、傷付くことが多い代わりに
結構丈夫なんです
だから、先輩の好きにしてくれて良いんですよ
あの子にできないことだってなんでも



どうですか？
私のこと、愛してくれる気になりました？



ほら、もう1回
（キス音 唇を噛む）



ふふっ、ごめんなさい
ちょっと意地悪して噛んじゃいました



痛いですか？
先輩にも痛みで愛を感じて欲しいんです
私と同じになれるように



それとちょっとだけお仕置き
……なんてね



これからは、私から目を離したり
しないでくださいね
他の子によそ見するのもダメですよ



約束ですよ
そうじゃないと私、いつかほんとに先輩の前から
いなくなってしまうかもしれません
今回も運が良かっただけなんですから



断れるはずないですよね、先輩
だって、先輩は優しいから



こんなこと言われて、簡単に見捨てるなんて
できるはずがない
あの時だって、そう思ったからあんなに
必死になって駆けつけてくれた
そうでしょう？
私には全部、分かってますから



あ、もしかして、あの子の告白を断らないのも
本当はその気なんてないのに、彼女に申し訳ないとか考えてたりして
きっとそうですよね、先輩



もし断りにくいようなら、私を言い訳に使っていいですからね
なんなら私が直接あの子に言ってあげましょうか？
先輩が唇を怪我してる理由とか
先輩がどんな風にキスするのか、とか



ふふっ、そんな顔しないでください
冗談ですよ
先輩のこと、信じてますから
いつかきっと私を選んでくれるって



あぁ……もう面会も終わりですね
なんで楽しい時間って、こんなにあっという間なんでしょうね



寂しいな……



また来てくれますよね
ここでずっと待ってますから



これからも私のこと
ちゃんと見守っててくださいね
私がうっかり死なないように

・台本（ゆるボイ！）
いつも怪我ばかりしている天然後輩は激重メンヘラでヤンデレだった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ロンタ