異性への愛が強すぎるヤンデレは、よく薬の力で相手をものにする。薬の入手先は一体どこなのか。その答えであるとある研究所に、あなたは偶然辿り着いてしまった。

（近代的な研究所のドアが開かれる）


はいいらっしゃーい。どちら様ー

うん？

君、お客さんじゃないな？

やっぱり。迷い込んだのか

こんな辺鄙なところに迷い込むのも珍しいが

調べて探してようやく見つけられるような場所だからな

まぁいい。客以外の人間も久しぶりだし、歓迎しよう。お喋りしようじゃないか

入って入って。お茶でも出すよ

大分無機質な空間だが、見ての通り観葉植物を置いたりアロマミストを焚いたりと努力しているから、居心地は良い方だと思う

これも、ハーブティーだ。飲むと落ち着くぞ


（ティーカップを差し出す）


ここはまぁ、表立っては出回らない特殊な薬を作って売りつけている、隠れ家的な研究所だ


いわゆるアングラってやつ

だから下手にここのことを口外しない方がいい。うちのリピーターに狙われるぞ

それで、作っている薬はいろいろあってな

性別を入れ替えるTS薬、身体や精神年齢を若返らせるロリショタ薬、遺伝子配列をいじって獣人やスライムなどの人外に変身するカフカ再現薬……まぁどれも、服用者に「過負荷」がかかる代物だがな？　はっはっはっは

しかしどれも面白いだろう？　自分で使うかは置いといて、欲しいと言う者が日夜買い付けに来る

みな異常性癖を拗らせた者ばかりでね。用途を聞けば、それはもう気持ち悪い気持ち悪い。笑いを堪えるのに必死だったさ

実際の効能や後日談などを報告するよう言ってあるから、毎日楽しみが尽きないよ

ただ、最近の客はつまらないねぇ。素直なヤンデレばかりになった

分かるか？　ヤンデレが

ここに来るヤンデレ達は大抵、まず相手を眠らせて拉致監禁して拘束する。その後は人によるが

ちなみに飲ませ方だが。経口摂取がメインだから、飲み物に混ぜて気付かれないよう飲ませるのが大半だ。……今、君が飲んでいるハーブティーのようにな

クフフッ……身体が熱くなってきただろう。眠りに落ちる直前、ヒトは体温が上がるよなぁ？

……なんてね。冗談だよ

何故私が君に睡眠薬を飲ませるんだ

……身体が熱くなるなんて当然だろう。あったかいハーブティーを飲んでるんだから。血行が良くなるぞ

フフ、肝が冷えたか？　それが被害者の気持ちだ。この世界では至るところで生まれている

だからこれからは、そうやって出された飲み物を不用意に飲まない方がいい

いや、君がヤンデレに好き放題されるのを待ち望んでいるなら、ガンガン飲んでくれて構わないが

と言っても、そもそも相手がいないか。すまない

しかしヤンデレというものは、私にとってはつまらないんだ

使う薬はほとんどの場合、睡眠薬止まり。しかもごく短い、半日や数時間かそこらで起きるよう指定してくる

相手の反応が見たい、という気持ちは分かる。自分に染まっていく過程はさぞ興味深いだろう

だがその程度の睡眠薬を私に求めに来るのは、少し努力不足じゃないか？

頑張ればその辺の病院でも手に入るんだぞ

私のところに来るのであれば、もっと強力な効果を持つ薬を求めに来てほしいものだ

同じ睡眠薬だとしても、40週間きっかりで目覚めるよう調整したものとかな

40週だぞ？　40週。この数字だけでいろいろと想像が捗るというものだ。クフフフッ……

おっと、怖がらせてしまったか？　すまないね

とはいえ既に依頼され作ってしまったものだからな。用途や効果も把握済みだ

それでもそのような変態はごく少数だ。大抵、少し眠らせるだけでいいと寝言を口にする

困ったものだよ……

……おっ？　君は同情してくれるというのか

……なんと。それだけでなく、好きとまで

あぁ、嬉しいなぁ。とても嬉しい。……無警戒にミストを吸い込んでくれて

経口摂取なんて時代遅れだよ。視線誘導で誘われてここへ迷い込んだ時点で、君はもう私の掌の上

私のモルモットとして存分に働いてくれよ？

さて、では手始めに、この薬で寿命を200年ほど伸ばそうか

私の傍で末永く研究に貢献してくれよ

フフフ……

・台本（ゆるボイ！）
【フリー台本】ヤンデレ蔓延る世界の裏側で、科学者は薬を作り続ける【男性向け】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
小太刀 虚夜