気まぐれに奴隷の獣人を買ってみた。
手足縛られてるし、封印の魔術まで施されている。
流石に可哀想だと思って自由にしたら、メイドになりたいと言ってきた。
まぁこんな可愛い女の子だ、目の保養にはなるだろう。

だけど、しばらくして後悔した。
あの獣人はとてつもない独占欲を持った、ヤンデレであったのだから。

【】：状況
（）：声色 or SE

【ご主人さまご飯もぐもぐ】

ふと思ったのです。私は何故こんなにも幸せなのでしょう？
い、いえ！　不満などございません！
ご主人さまに救っていただき、今もこうして自由にさせていただいて。
感謝以上の気持ちが生まれてしまいます。

ですから、ふと気になったのです。
私はどうして幸せなのでしょうか？　という疑問が。
やはり住んでいる環境を幸せと呼ぶのでしょうか？

違いますね。
ご主人さまと一緒であれば、例え王宮の神殿でも、馬車馬の小屋だろうとも幸せでいられる自信があります。
場所は変わりなく、やはりご主人さまと一緒だからでしょう。
ですからご主人さま。私と主従の契約だけではなく、愛し合う夫妻として関係を深めるべきかと。

……え？　確かに前にもこのような話はしましたね。
その時は「何故ご主人さまはご主人さま」であるかについて、熱い討論を交わした末、たった一人の妻として私を娶って（めとって）くださる、と結果が出ていたはずです。

なのにも関わらず、ご主人さまは徹底してNOの返答をしますよね？
もしかして、本当はご主人さまは私のことなんてどうでもよくて、街にいる若い娘にうつつを抜かしているのではありませんか？

いいえ、そんなことあってはなりません。
何故ならご主人さまは私のことを救ってくださいました。
まさしく私はご主人さま無しでは生きてはいけない。
つまり一心同体、というわけです。

それとも、ご主人さまにとって私はただのメイドであり、本当は奴隷と同じように思っていらっしゃるのですか？
そんなことありませんよね？　私とご主人さまは運命の糸でつながっています。
頑丈で、絡み合って離れない。ハサミで強引に断ち切ろうとしても、そのハサミをも巻き込んで結び直す。

その目。分かっております。メイドながらいささか調子に乗りすぎていると、心得ています。
ですがもう後戻りなど出来ません。ご主人さまは私しか見てはいけないんです。
昨晩、パーティにご招待されたことは覚えていらっしゃいますよね？
その時、逢引きされた薄汚い人間、覚えていますよね？

私は帰り際にその薄汚い人間をお掃除いたしました。
当然です。いくら従者がいようと、獣人には力も速さも遠く及びません。
過去にご主人さまを惑わした女たちも、もちろん皆さんゴミ箱行きです。

だってご主人さまを見ていたから！
ご主人さまに色目を使って、あわよくば娶ろう（めとろう）としたから！

いけません。そのような無作法極まりない態度では。
その点、私はご主人さまのお作法を受け、ご主人さまの求める仕草を一挙手一投足、寸分の狂いなく、ご主人さまに提供しています。

すべてはご主人さまが私を見てくださるように、と。

……ですが、そのような受け身の姿勢ではご主人さまは見てくれません。
本来、女性の方から殿方へ求婚する際は慎ましくが理想と存じ上げます。
しかし、分かってくださらないのであれば、こちらも攻めの姿勢を取らざるをえないのです。
実はそちらの朝食にささやかながら薬を混ぜさせていただきました。

ご心配ありません！
例え魔獣だろうと、コロッと寝落ちてしまうような強力な薬です。
ご主人さまのようなただの人間では抵抗することもなく、すぐに楽になってしまいます。

そのあとは、ご主人さまが他の女を見ないように牢に閉じ込めます。
もちろん私もご一緒させていただきますよ？
それからご主人さまには嫌と言うほど私の欲望を満たしてもらいます。

大丈夫です！　こちらも獣人御用達の精力剤をたっくさん調達しておりますので。
ご主人さまがご婚約を結んでくださるまで。

……いいえ。ご主人さまがお約束していただいても、絶対に離したりいたしません。
だって、私を救ってくださったのは、ご主人さまなのですから……。

・台本（ゆるボイ！）
独占欲マシマシの元奴隷ヤンデレ獣人はご主人さまの愛を確かめたい
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
二葉ベス