僕と彼女はお互い同性愛者の親友で、二人とも恋人を寝取られて失恋した。そんなマイノリティの二人は屋上で黄昏れながら自分たちの個性について語り合う。

なあ。

なあってば。

チッ、無視かよ。
まあいいや。

あ～あ、何が悪かったんだろうな。アタシら。

幼馴染二人とも同性愛者で、同性の恋人ができて、そして二人とも失恋するなんてな。
しかも二人とも恋人を異性に寝取られたときたもんだ。

あの子はこれまでの子とは違うって、思ってたのになあ…
お前の彼氏も私たちに偏見なくて、理解してくれてた風だったのに。

お互い、ほんとに見る目ないね。
それとも、根本的に同性を恋愛対象に見れるやつってろくな奴いないのかな。
アタシ含めてね。

ほんと、まともなのはお前くらいだよ。
お前が女だったらな…
いや、やっぱいい。考えてみたらキモすぎた。

ははは、怒んなよ。
お前みてえな女いたらお前も笑っちまうだろ？

逆にアタシみたいな男もお前は全然タイプじゃねえだろ？
…オイ、今おえっって言っただろ！
ふざけやがって…

はぁ、でももしアタシが男が好きだったら、お前は悪くないほうだと思うよ。
同じ悩みを抱えて生きてきた同士、いろいろと気は合うしな。

いっそ両方ともいける性癖だったら、こんなに迷うことなんてなかったのかな…

アイツらは…そうだったんだよな…

なぁ、男ってそんなにいいのかな？
アタシらも自覚してないだけでちゃんと異性も愛せるのかな？


…ちょっと、試してみない？

何をって…チューに決まってんだろ。
軽いやつでいいからさ。

それともそんなに嫌か？アタシとするの。
ならいいじゃん。ファーストキスはもう済ませたんだろ？

…ごめん。お互い思い出したくないよな。
ほら！さっさとやるぞ。

(見つめ合う)

プッ、フフッ
ごめんごめん、ちゃんとやるから。

ちゅ…

ど、どう、だった？

だよな。全然だめ。
一ミリも興奮しない。
口ゆすいでいい？

…さすがに冗談だよ。

やっぱおかしいんだな、アタシらって。
お前のことは好きなのに、好きじゃないらしい。
あくまで親友で、恋人にはなれないんだな。

だから何だって話だけど。

なあ、お前はこれからどうすんの？
やっぱり恋愛したいと思うか？

そうなんだ。
うん、アタシも。
やっぱ諦めらんねえよ。

いつかぜってぇめちゃくちゃにエロい女とイチャイチャしてやる。
なんだよ、動機が不純だって？
うるせ。お前だって付き合うならイケメンの方がいいんだろ？
このムッツリめ。

ぷっ、あっはは、はははははは。
あ～なんかもうどうでもよくなってきた。

一回失恋したくらいでな～に落ち込んでんだか。
アタシらしくもねえ。

お前も、いつまで不貞腐れてんだよ。
アイツらのことなんか全部忘れて、なかったことにしようぜ。

んで、お前のファーストキスの相手はアタシだ。
それなら嫌な思い出にはならねえだろ？

あ？なんか言ったか？
それ以上言ったらもう恋愛相談乗ってやらねえぞ。

ん、それでよし。
じゃ、そろそろ帰ろうぜ。

おう。また明日な。ばいばい。

・台本（ゆるボイ！）
マイノリティ同士の傷の舐め合い
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ろべ