僕にはハロウィンになると必ず一緒に過ごすヴァンパイアがいる。
今日もそのつもりで待っていたんだけど、何故だか来ない。
連絡先も分からないし、このまま寝ようかなーと時計を見たら、ドアチャイムの音が部屋の中に鳴り響く。
こんな0時過ぎに誰だろう。もしかして……。
期待と不安を胸に抱きながら、ドアを開けた。

【】：状況
（）：声色 or SE

【0時過ぎに読み手がドアを鳴らす】
（チャイムの音）

はぁ……はぁ……い、いま何時？！

……はぁー、やらかしたぁ。
ハロウィンパーティに遅刻する怪物って何者よ……。
あたしだったわ……。

【突然のことで驚く聴き手】

あぁ、びっくりするのも当然よね。
なんたって、キミとのハロウィンパーティ無遅刻無欠勤である、このあたしが真夜中に訪問なんだし。

あたしたちみたいな怪物はね、ハロウィンの時期になるにつれてチカラが増すのよ。
気持ちが高ぶって、なんにでもなれる、みたいなイメージでいいかな。
でもヴァンパイアとか、ワーウルフとか、そういうヤバい奴らが表に出たら人間社会に迷惑をかけてしまう。
一応そういう迷惑をかけるなーみたいな契約を、キミたちの先祖と結んだわけなのよ。

だからって、暴れまわちゃう若い子たちはいる。
そういう子たちを、あたしはしばいてしばいて、しばきまわってたら……。

0時過ぎ。キミと過ごすハロウィンが終わってしまったのよ！

（ショックの音）

やらかしたわ。今夜は暴れる若い怪物たちが多かったから、ちぎっては投げたり、巴投げに背負い投げしたりと。制圧してたらもうボロッボロなのよ。疲れたぁ……。

【日をまたぐとチカラが消えるの？　的な聴き手】

うん、そうよ。
ハロウィンは0時で終わり。
またいだら、みんなもいつも通りってわけ。

それまで暴れん坊を抑えておくのがあたしの仕事だったの……。
はぁ……せっかくだったら眷属候補と一緒にハロウィンパーティしたかったのになぁ……。

いいカボチャが手に入ったから、スプーンでくりぬいて、カボチャヴァンパイアー、とか言いたかったし。
中身をいい感じに調理して、カボチャパイにしたかったし。
眷属候補のキミに！　数百年前から研究に研究を重ねた手作りカボチャパイをあーんってしたかったのにぃー！

はぁ、死にたい。
不老不死だから死なないけど、死にたい……。
次の楽しいハロウィンが残り365日だと思うと、しんどい……。

【じゃあこれから楽しめばいいのでは？　的な聴き手】

へ？　いまからハロウィン？
もう日をまたいだわよ？
まぁヴァンパイア的にはむしろ今からが本番なんだけども。

ほらキミ、明日は普通に学校があるんじゃないの？
いい子はちゃんと寝なきゃ。健全な眷属にはなれないぞー。

【読み手の悲しい顔は見たくない聴き手】

……そ、っか。あたしのこと、気遣ってくれたんだ。
キミはいっつもそうだよね。あたしに優しい言葉を口にしてくれる。
何百年ぶりだろうな。そんな優しい言葉をくれる人間と出会ったのは。
ちょっと抱きしめていい？　いいわよね。勝手にするから。

【抱きしめる】

キミに出会ってから、もう何年だったっけな。
あたしのことを怖がらずに、1人の存在として仲良くしてくれている。
本当に嬉しい。乾いた地面に一滴の水滴が落ちたぐらい、心にジーンとくる。
足りない。もっと欲しい。そう願うほど、キミがただの人間だって思い知らされる。
あぁ、本当に。キミもヴァンパイアだったらよかったのになぁ。

【眷属になったら、あなたのそばに居られる？　的な聴き手】

ううん。眷属になっても、永遠には一緒にいられない。
だって元々が人間の身体なわけだし。
本当にかぐわしい血の匂い。このまま無垢なカラダのままでいてほしい。
だからキミは眷属候補。永遠に、眷属候補。

今も、昔も。これからも。たった一人の「眷属候補」なのよ。

【離れる】

よし、キミの匂いは胸いっぱいに吸い込んだし、真夜中のパーティしちゃう？
あたしとキミだけの。年に一度の楽しい夜遊びを。

ふふ、顔真っ赤ね。
じゃあさっそく……。

（溜め）

このカボチャをくりぬくわよ！

・台本（ゆるボイ！）
ハロウィンパーティに遅刻して、0時過ぎに家に着いてしまった社畜ヴァンパイア女子
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
二葉ベス