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シーサイド・スーサイド・マーメイド
written by 住公子
  • 癒し
  • 少女
  • お姉さん
公開日2022年12月11日 03:21 更新日2022年12月12日 03:21
文字数
1989文字(約 6分38秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
憂鬱を抱えた人魚
視聴者役柄
希死念慮を抱えた男性
場所
海辺
あらすじ
自殺の名所に訪れたあなた。そこには一人の女性が居た……。

今回はTwitterにて企画されていた「人外に慰められるシチュボ」というものにインスパイアされつつ、とあるVtuberさんをイメージした台本です。
とはいえ、その企画用そのVtuberさん用という訳ではないので、琴線に触れればご自由にお使いください。
本編
(波のSE)

あら、こんばんは。
こんな夜中に、なにをしているんですか?
ここは危ないですよ。
この入江は事故が多いことで有名ですから。
他にも有名な理由が2つあるんですけど……。
この国の方でないのなら、ご存知ないかもしれませんね。
ふふ、服装を見たらわかりますよ。
特に、この国の人はそんな装飾を身に着けたりしませんから。
とても綺麗な宝石……なんという宝石なんですか?
アクアマリン……名前も素敵ですね。
太陽の下でも見てみたいです。
きっと、素晴らしい輝きを見せてくれるんでしょうね。
……「あげる」? 
な、なにを言ってるんですか? もらえませんよ、こんなもの!
宝石の値段なんて全然分かりませんけど、物凄く高いんでしょう?
「自分にはもう必要ない」……?
……やはり、あなたもそうなんですね。

先程、言いましたよね。
この入江が有名は理由は、もう2つあるって。
その内の1つが、自殺の名所としてです。
自ら命を捨てるのに、名所もなにもないと思うんですけど。
ここは流れが複雑で岩も多いから、飛び込めば助かる確率はとても低いんです。
あなたも、ここで命を絶ちに来たんじゃないですか?
……肯定、するんですね。
見ず知らずの人間に指摘されて取り繕うことすらしないほどに、強い覚悟で訪れたんですね。
え? 私はどうしてここにいるのか?
心配してくれているんですか? 
それとも、仲間意識ですか?
私がここにいるのは……この入江が有名な最後の理由の1つです。
私――

(水の跳ねるSE)

――人魚なんです。


ふふ、驚きました?
この入江は人魚が現れるとして有名なんですよ。
今ではすっかり、他の2つの理由で有名になってしまいましたけど。
中世の頃……まだあなた達人間と、私達人魚のような[[rb:亜人 > あじん]]が近しい存在だった時代もあったんです。
あぁ、私はそんなに昔から生きている訳じゃありませんよ。
たぶん、あなたとそう変わらない歳じゃないかと。
……ねぇ、旅人さん。
良ければ、私に話を聞かせてくれませんか?
はい、陸の話です。
私は生まれてからずっと、この海の外に出たことがないんです。
最後に少しだけ、私に時間を分けてくれませんか?
……本当に?
ふふ、ありがとうございます。


……陸というのも大変な世界なんですね。
でも、面白そうなものがたくさんあるんだと感じました!
気付いていませんか?
あなたが話してくれたこと。
悲しいこともあったけれど、それ以上に楽しいことでいっぱいだったんですよ?
私がこの海で出来ることは、お友達と話すことと歌うことだけです。
でも、陸の世界には美味しい食べ物やお芝居、それにゲーム!
あと、なんでしたっけ、えーえすえむあーる?
ワクワクするものがいっぱい、いーっぱいありました!
私、陸の世界に行ってみたくなりました!


……白状するとですね。
私も、あなたと一緒だったんです。
海の世界も良いけれど、窮屈さを感じていたんです。
それは、だんだんと私の心を侵食していって。
いつの頃からか、泡になって消えてしまえればいいのにと思うようになっていたんです。
そこに、あなたが現れた。
あなたが、陸の世界を私に教えてくれた。
だから、あなたは私の恩人です。
…………。
出会って間もない人外がなにを、と思われるかもしれませんが。
あなたが、また笑って過ごせるように。
あなたが、また生きたいと思えるように。
私に、なにか出来ることはありませんか?
このままあなたが死んでしまうなんて、私は……ッ!
……?
指輪? さっきのとは違う宝石ですね。
ラピス・ラズリ、ですか。
これを、私に?
受け取れないって言ったじゃないですか!
それに、これを渡そうとするということはやっぱり、あなたは……ッ!
……違う? お礼? なんのですか?
「また生きていこうと思えたことへのお礼」……?
え……えっ? 私、なにかしましたか?
話をしてくれた? それだけ、ですか?
私と話すことで、生きる楽しさを思い出せた……。
それにお互い様って?
ふふ……あははは!
そうですね、それもそうでした。ふふふ!
でも、これじゃお礼が大きすぎますよ。
なにか、私に出来ることってありませんか?
これからも、毎日お話をして欲しい?
……指輪と合わせて、プロポーズみたいですね?
そんなに慌てて否定しなくても。
良いんですよ? プロポーズしてくれても。
ふふ、冗談ってことにしておきましょうか。今のところは。
あ、でも

(水のSE)

このままじゃ、あなたと一緒に行けませんね。
あなたがここに永住する?
うーん、それはそれで良いんですけど。
私は、あなたと一緒に色んな所にも行きたいんです。
少しだけ待っていてもらえますか?
私、人間になってきますから。
キョトンとしてどうしたんですか?
安心してください。声と引き換えに、なんてことはありません。
ちゃんと工程を踏めば、人魚にも戻れますし。
……そうです。行こうと思えば、いつでも陸には行けたんです。
でも、今までの私は、そんなことは考えられなかった。
陸の世界のトキメキを教えてくれた、あなたのおかげなんです。
これからも、よろしくお願いしますね!
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
シーサイド・スーサイド・マーメイド
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
住公子
ライター情報
すまい きみこ
住公子、通称ハム子と申します。
これまでpixivで活動していましたが、ゆるボイ!でも投稿することにしました。
ご縁がありましたら、なにとぞ。

TwitterID @kimiko_hamuko
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