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人生に迷った声の良い女の子を救ったり救われたりする話
written by 住公子
  • 学校/学園
  • 少女
  • クール
  • ダウナー
公開日2023年07月08日 13:04 更新日2023年07月08日 13:04
文字数
2492文字(約 8分19秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
希死念慮を抱えた少女
視聴者役柄
男子学生
場所
学校の屋上
あらすじ
とある理由から屋上でぼんやりとしていた貴方。
そこに、一人の少女がやってきます。
彼女はなにか悩みを抱えているようで……?
本編
あら、先客がいるとは思わなかった。
授業中よ? どうして屋上にいるの?
お互い様なのは、まぁ、そうだけど。
隣、座っていい?
そう、ありがとう。
それで、貴方はどうしてここに?
いいじゃない、最後の話し相手になってくれても。
そう、最後。
……どういう意味か?
貴方がここにいる理由を教えてくれたら、私も教えてあげる。
「ならいい」って……。
なぁに、ニヒルでも気取ってる?
今どき流行らないわよ、そういうの。
女の子はね、優しすぎるくらいの男の子に惹かれるの。
覚えておいて損はないと思うわよ。
……心底どうでもいいって顔してるわね。
女には興味ない……あ、もしかして男に興味があるタイプ?
ふふ、今度は心底嫌そうな顔。
意外とすぐ顔に出るみたいね。

それで? そろそろ話してくれてもいいんじゃない?
……ふぅん。つまり、ただのサボりか。  
あーあ、もったいぶった割には期待外れ。
つまらないわね、貴方。
……怒らないのね。
てっきり、今度は顔真っ赤にするかと思ったのに。
私にどう思われようが興味ない、と。
そこはクールなんだ。
まぁ、当たり前か。初対面だものね。
それに……それはなんというか、好都合だわ。
これから私が何をしようと興味がないんでしょう?
止められでもしたら困るし。
分かってる、次は私の番ね。
私はね、飛びに来たの。
……? 文字通りの意味よ?
この屋上から、飛んでみようと思って。
自殺とは違うかな。
結果的に死ぬかもしれないけど、目的じゃないから。
ただ純粋に、飛んでみたいだけ。
どう言えばいいのかしら……自由になりたいのよね。
色々な面倒事から解放されたいの。
一方的な期待を押し付けてくる親とか。
嫌がらせをしてくるクラスメイトとか。
それを見て見ぬふりをする教師とか。
そういうのから全部ね。

……ん? あぁ、うん。
どうも、いじめられてるみたいなのよね、私。
いや、みたいっていうか、なんていうか。
上履きを隠されるとか机に落書きをされるとか、そんな程度。
どうでもいいからスルーしてるんだけど、嫌がらせをしてくる人達はそれも気に入らないらしくて。
かといって暴力を振るってくる訳でもないから、面倒だなぁって。
え? だって、殴ってきたら、殴り返しても正当防衛になるでしょ?
……そんなに引かなくてもいいじゃない。冗談よ。
一応先生に相談してみたんだけど、反応は芳しくなかったわね。
まぁ、教師も所詮はサラリーマンだから仕方ないのかしら。
漫画やドラマに出てくるような理想の教師を期待していた訳じゃないのだけど。
ん? 両親?
どっちも医者よ。そういう家系なの。
特に父方は名門……と言うのかしらね。
兄弟揃って有名な病院に勤めてる。
当然、私も医者になるのを期待されているって訳。
ね、それこそ漫画みたいでしょ。
子供の頃は、こんなことで悩むとは思ってもみなかった。
当たり前に自分も医者になると思ってたし、友達にも恵まれてた。
教師は……まぁ、少なくとも困ったことはないわね。

医者になりたくないのか?
んー……そうね。人の為の仕事って興味無いのよね。
というよりも、もっとやりたいことがあるの。
私ね、声を使った仕事がしたいんだよね。
声優とか、歌手とか、あとは演劇とか、そういうのね。
きっかけは些細なことだったの。
中学の時に好きな子がいて、その子に声を褒められた。
本当に、ただそれだけ。
なんというか、ありがちでしょ?
これでその男の子が貴方だったら、もはや陳腐ですらあるけど。
記憶にない? でしょうね。彼は別の学校に進学してるし。
そもそも、好きだった相手を忘れて初対面だなんて言わないわよ。
何年も前ですっかり変わってるとかならまだしも。
……親には言ってないわ。
医者になりなくたいってことも、いじめのことも。
言っても無駄だって分かってるから。
さっきも言ったでしょ? 
親は勝手な期待を押し付けてくるって。
私が医者以外の道を歩むなんて考えもしていない。
そんなことを私が考えるなんて微塵も思ってない。
いじめについても、「そんな些事に構ってどうする」とか言うんじゃないかしら。
……話してみないと分らない、か。
そうかもしれないわね。
やってみないと分らないことはあったのかもしれない。
でもね、私はもう決めたの。
決めたから今、ここにいるの。
ここから、飛ぶために。
面倒事から解放されて、自由になるために。
全てに向き合う勇気のない、自分から逃げるために。

さて、と。
そういうことだから、そろそろ行くわ。
話に付き合ってくれてありがとう。
なに? 止めるの?
命を粗末にするな、なんて言わないわよね?
ニヒルでクールを気取るなら、エゴを押し付けるのはやめてくれる?
そんなつもりはない? じゃあ、なに?
……声がもっと聴きたい?
私の声がもっと聴きたいから死なれちゃ困る?
ぷっ、あはは……なにそれ。
そんなに真顔で言う事?
そんな自分勝手な説得――いや、説得かなぁ? まぁいいや――初めて聞いた。
凄い陳腐。
でも、ちょっと嬉しい。
前言撤回。貴方はつまらなくなんかないわ。
むしろ面白い。もっと知りたくなってきちゃった。
そうね……一度、家族に話してみようかな。
駄目なら駄目で、また考えればいいか。
うん? 最悪、仕事しながらでも芝居はできる?
シチュエーションボイスに声劇……へえ、こんなのがあるのね。
私、やりたいって思うだけで何もしてなかったんだなぁ。
飛ぶことなんていつでも出来るし、やれることやってみてからの方がいいか。
この短い時間で人を前向きにさせるなんて、何か才能あるんじゃない、貴方。
本当に、ありがとう。

ところで。
私の声が聴きたいって言ったわよね。
私がその……なんだっけ、シチュボ? を出したら聴いてくれる?
そう。それって、貴方が生きる理由にはなる?
そのままの意味よ。
貴方がここにいた理由、私と一緒だったんじゃない?
言ったでしょ。貴方、すぐ顔に出るって。
話してる内に、ピンと来たの……違ってたらごめんなさいね。
……秘密、ねぇ。
まぁ、いいわ。
当面の目標は、貴方が次も聴きたいと思えるものを作ることにする。
まずは何が必要なのか調べないと。
あ、連絡先交換しましょう。
いいもの作って、真っ先に教えて上げる。
私のファンクラブ会員第一号にしてあげてもいいわ。
調子に乗るな?
ふふ、いいじゃない、少しくらい。
これからも、よろしくね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
人生に迷った声の良い女の子を救ったり救われたりする話
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
住公子
ライター情報
すまい きみこ
住公子、通称ハム子と申します。
これまでpixivで活動していましたが、ゆるボイ!でも投稿することにしました。
ご縁がありましたら、なにとぞ。

TwitterID @kimiko_hamuko
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