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私ハ君ヲ“自由”ニシテアゲル。
written by 夜木嵩
  • ヤンデレ
公開日2022年12月27日 18:09 更新日2022年12月27日 18:09
文字数
2362文字(約 7分53秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
少年を手に入れたい少女
視聴者役柄
家の束縛から逃れたい少年
場所
少女の家
あらすじ
目が覚めたのは、見知った女友達の家。
彼女は、あなたをあの辛い家から守るために連れてきたのだという。
けれども、それはあなたを縛る人の違いでしかないことを、彼女自身は気付いていない。
本編
……おはよう。

あー、きょとんとした表情がまた素敵……惚れ惚れしちゃう。

そっか、君は今、何が起こってるかわかってないんだよね?

ここは、私の部屋。
そう、君が寝てるのは、私が普段寝てるベッド。
へへっ、そうだよ、私が寝てるところで、君が寝てたんだよ?
この事実だけで私、ドキドキしてきちゃうや……

だって、ここに君がいるんだもん。
私の手の届くところなんてものじゃない、こんなの手のひらの上に君がいるみたい……!

ここに、君がいるんだよ……

えっ、あー、なんでって?
そうだよね、私の家に来た記憶とかない、よね。

私が、ここに君を連れてきたんだよ?
また君が一人で自分の家の前に立ち尽くしてたから。

何か、考え事をしてたのかな。
後ろにぴったりくっついても、まったく気付かなかったね。

よしよし、ビックリしたよね。
起きたら知らない場所なんて、怖いもんね。

でも、もう大丈夫だよ。
ここは、あの家と違って、君のためにある場所だから。
私も、君のためにいるんだから。

もう、君を苦しませたりなんかしない。
そのために私は君を連れてきたんだよ。

ね? だから、もうすっかり朝になっちゃってるけど、外泊だとか、門限だとか、そんなつまらないことで怒られる心配もないんだよ?

だって、あそこはもう君の家じゃないんだから。
あんな場所なんか、君の家じゃないの……

そう、君の新しいおうちはここ。
でも、そんなこと気にする必要もないよね。
もう君は、ここから出ることはないんだから。

というより、私がここから出さない。

だって、そうしたら君がまたあの家に戻っちゃうかもしれない。
君にそのつもりがなくても、あの人たちに見つかったら連れ戻されちゃうだろうし。
君は、あの人たちに逆らえないんだもん。

君……さ、逃げるってことを、自分の弱さだと思っちゃってるでしょ?
あの家でのルールがどんなに理不尽でも、それが絶対で、破ってはいけない。
守れないのは、全部自分が悪いから。
つらいと思うのは、全部自分が甘いから。

そうやって、気持ちを押し殺しちゃってるように、見えるんだ。

ねえ、今、帰りたいって……思ってる?
帰りたいってより、「帰らなきゃ」って。

だよね。
君は、あの家に染まっちゃってるから、そう思っちゃう。

でも、心の中には、出来るなら、あんな場所、あんな人たちから離れて自由になりたい気持ちだってある。
そうだよね?

だから、昨日も家の前で、寒いのに、玄関の扉も開けないまま、辛そうな顔でずっと立ってた。
ずっと、逃げたいって思ってた。
ずっと、逃げたいっていう気持ちを殺そうとしてた。

いいかな。
そんなのが昨日だけじゃなく、何度もあったの、私は見てるんだ。

はっきり言って、それは異常なんだよ。

君の居場所になるはずの家が、そんなにも苦しい場所になるなんて、おかしいこと……なんだよ。
君の気持ちが、弱さだって、悪さだって思わせられる場所なんて、おかしいんだよ……

あの人たちは、君に自由なんて、くれないんでしょ?
君が、あの人たちの思い描いたように、レールの上を進むだけの機械みたいになるように望んでる。

それで、それは君の望んでいることなの?

違う、よね。
だったら、あんなにいつも苦しそうな顔、してないもんね。
もっと、笑ってくれるもんね。

私ね、君の笑ってる顔、好きなんだ。
……あんまり、見せてくれないけど。

それでも、そのためだけに生きたいと思えるくらい、かっこよくて、キラキラしてるんだよ。
いっぱい、いっぱい見せてほしい。

それなら、私が君のこと、笑えるようにしてあげなきゃって思ってね。
私が頑張って、君のこと、幸せにしてあげなくちゃって。

勝手だよ?
勝手だけど、君を幸せにしたいって気持ちだから。

君に降りかかる苦しみから、私が全部守ってあげるの。
それどころか、今まで苦しんだ分も、私が全部幸せに書き換えてあげるんだ。

そうしたら、君はこの部屋の中だけの生活でだって、いっぱい笑ってくれるでしょ?
私の大好きな顔、見せてくれるよね?

君は、嫌……かなぁ。
こんな勝手な気持ちで攫われて、狭い部屋に閉じ込められちゃうのは。

急だもん、訳がわからないよね。
どうしたいか、心の整理、つかないよね。

いいんだ。
これが全部独りよがりだったとしても。

だって、同じ好きな人の苦しむ顔でも、私が苦しめてるのと、違う人に苦しめられてるのじゃ、まるで意味が違うんだもん。

君が、私の手の届くところにいなくて、そこで傷付いてるとしたら、私は守ってあげられない。
大好きな人に誰かが嫌な思いをさせてるなんて、考えるだけで、もどかしくて、腹立たしいの。
特に、あんな愛のない人たちの、自己都合に振り回されるような君のこと、今まで通り見て見ぬふりなんて、私、嫌だよ。
辛い君を見るのが、辛いんだよ。

でも、もうそんな辛さ、感じなくていいんだね……

もう、君も怯えることなんてないんだよ?
部屋の中でなら、君のどんな振る舞いも許してあげる。
好きなだけ、わがまま言っていいんだよ。

全部、私が愛してあげるから。

だから、ここが新しい君のおうちで、初めての君の居場所。
どうか、気を休めて欲しいんだ。

自分勝手なルールに縛り付けられたりしない、理不尽な暴力なんてない、君の幸せのための場所にしてあげるんだから。

だから、今までのことなんて辛い記憶、全部捨てちゃお?

今日からは、新しい人生。
私は君の大切なパートナーとして、君のこと、いつだって守ってあげるから。

だから、私が守れない場所に行っちゃ、ダメなんだよ?

そう、逆に、ここにいてくれるなら、私は君のこと、守ってあげるの。
何より、大好きな君の笑顔が見たいから。

もう、君は頑張る必要なんてないの。
このまま、ここにいてくれるだけでいい。

だから、笑って欲しいな。
新しい、自由な人生の始まり。
一緒に祝おうよ。

改めて……ようこそ、私のお部屋へ。

私はあの人たちと違って、私のもとからも、幸せからも、逃がしたりしないからね?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
私ハ君ヲ“自由”ニシテアゲル。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
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