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ベット・ソウル→←ゲット・ヒール
written by 住公子
  • ファンタジー
  • ほのぼの
公開日2022年12月31日 03:03 更新日2022年12月31日 21:19
文字数
2822文字(約 9分25秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
悪魔の女性。悪魔らしからぬ性格
視聴者役柄
しがないサラリーマン
場所
視聴者の家
あらすじ
疲れの余りに魂を捧げて悪魔を召喚し、癒やしてもらうというトチ狂ったことをしようとした貴方。
が、呼び出した悪魔は少しばかり思っていたのとは違ったようです。
まったりと美人な悪魔に癒やされる(?)お話。

2~3か所(冒頭の「美人」「美女」、終盤の「奥様」)を改変すれば男性演者向けにもなるかと思われます。
本編
悪魔たる我を呼び出したのは貴様か。
ふん……随分と辛気臭い顔をした召喚者だな。
なに? 美人ですね? 人間基準ではそのようだな。
それにしても、悪魔を見て開口一番それか。
ふむ。美女が出てくるとは思わなかった、と。
角と翼と尻尾が生えた、醜い怪物を想像していたか?
まぁ、格の低い連中は貴様の想像通りの姿をしているが。
我のような……あー……アーチデビルで通じるか?
そう、上級悪魔ともなれば、人とそう変わらん姿をしているものだ。
何故かだと? その方がお互いに話がしやすいというだけだ。
いちいち怯えられていては文字通り話にならん。
さておき、名乗るのがまだだったな。
我が名はリべド。そう名乗ることにしている。
あぁ、貴様の名には興味がない。
どうせ墓を建ててやる訳でもないのだからな。
どういう意味か、だと?
貴様は、我と契約をするために呼び出したのだろう。
悪魔との契約に支払う対価、それは召喚者の魂だ。
当然、その末路は死。あるいは、死ねればマシな[[rb:凄絶 > せいぜつ]]なものだ。
そう相場が決まっているのは、召喚者ならば常識だろう。
……それすらも知らぬほど未熟なのか、貴様は。
というより、そもそも術者にも見えんな。何者だ?
しがないサラリーマン? そんな者が何故、召喚術を?
ネットで召喚プログラムを手に入れた?
あぁ……最近出回っているとかいうアレか。
よくもまぁ、そんな胡散臭いプログラムを使う気になったな。
まぁ、いいが。

さて、長々と話す趣味はない。要件を述べろ。
自らの魂を対価としてまで、貴様が望むことはなんだ。
…………んん?
我の聞き間違いか?
いいか、もう一度言うぞ。
自らの魂を対価にするというのは、ただ死ぬことを意味するとは限らん。
場合によっては死んだ方がマシな苦しみを、死ねないまま味わうことになる。
そういうことだぞ? 分かっているか?
よし。では、改めて聞く。貴様の願いはなんだ。
……「癒やしが欲しい」
馬鹿なのか、貴様は。どういうことだ?
「デスマーチで心身ともに追い詰められていて辛い」?
いや、詳細を聞きたい訳ではないが。
確かに貴様の魂はなんというか、こう、過去に類を見ない程に淀んでいるのは間違いない。
しかしなぁ……我も長年、人間のしょうもない願いと欲望を叶えてきたが。
魂と引き換えに癒やしが欲しいというのは初めてだ。
悪魔に望むことと言えば、憎い相手を呪い殺してくれだとか、そういうのであろう。
というか、本末転倒ではないか。
健全な心身が欲しくて癒やしを求めるのではないのか?
それと引き換えに魂を差し出してどうすのだ。愚の骨頂にもほどがある。
そもそも、そんな願いを悪魔に叶えてもらおうとする発想が理解できん。
他にいくらでも適任がいるだろうに。妖精の[[rb:類 > たぐい]]にしたらどうだ。
きちんと報酬を渡せば、甲斐甲斐しく世話をしてくれるぞ。
夜魔や夢魔でもいい。
癒やしもそうだが、快楽も与えてくれるぞ。油断すると搾り取られるが。
プログラムが対応していない?
これだから機械頼りの未熟者は……。
それに? なんだ? 
どうしても我と契約がしたいと。
むう……その熱意がどこから来るのかまったく分からんが。
まぁ、いい。そこまで言うのであれば契約してやろうではないか。
貴様のことをしっかりと癒やして、万全な状態の魂を頂くとする。
では、改めて。
我が名はリベド。今後ともよろしく。

※翌日(読み上げ推奨)

む、帰ったか。
はあ? 「おかえり」と言って欲しい?
悪魔になにを求めているのだ、貴様は。
まぁいい、承知した。次からはそうしてやる。
ところで、随分と遅い帰りだが、いつもこうなのか?
……ほう。それはまた、なんとも。
地獄よりも劣悪な労働環境な気がするな。
そんな会社、さっさとやめたらどうだ。
ふむ……つまり、上司が酷いだけで、仕事自体は好きと。
それにしても、他の会社に務めるとかあるだろうに。
まぁ、貴様の好きにすればいいが。
なに? 風呂に入ってもう寝る? 
今帰ってきたばかりなのにか?
明日も早い? 食事はどうするのだ。
ゼリー飲料で済ます?
うーむ、人間というのも難儀なものだな。
魂が淀むのも、むべなるかなというところか。
……なんだ? 「おやすみ」と言って欲しい?
注文の多い男だな。
まぁ、いい。
おやすみ。

……ふむ。上司をどうにかすれば良いということか。

※一週間後(読み上げ推奨)

おかえり。
どうした? 妙な顔をしているが。
会社の様子がおかしくなった?
数日前にもそんなことを言っていたな。
上司が急に優しくなったとかなんとか。
今度は会社そのものか。具体的にどうおかしいのだ?
ふむ。社長自ら、ブラックな体質だったことを謝罪しに来たと。
うむ、上司とやらから辿って脅してやった甲斐があったな。
いや、なんでもない。こちらの話だ。
[[rb:僥倖 > ぎょうこう]]なことではないか。
これで貴様も働きやすくなるだろう。
ようやく契約を履行できそうだな。
なんだ、その不思議そうな顔は。
癒やしだよ、癒やし。
我を召喚した理由を忘れたのか?
何かして欲しいことはないのか。
「十分癒やされている」?
どういうことだ?
この一週間、我は貴様の帰りを待つことしかしていない。
帰ったら帰ったで、貴様の話を聞くばかり。
……別に話を聞くのが嫌な訳ではないから、そんな顔をするな。
「家に帰ったら人が居るのが嬉しい」?
それは我でなくてもよいのでは?
まぁ、いい。
確かに、貴様の魂の淀みは僅かにマシになってはいるようだ。
しかし、このままではいつ終わるのやら。
まぁ、悪魔にとってひと月やふた月、大したものではないが。
あぁ、もう寝るのか?
うむ、おやすみ。

ふーむ。我ももう少し積極的に動くべきか。

※一ヶ月後(読み上げ推奨)

おかえり。
食事は出来ているぞ。それとも、先に風呂か?
うむ、食事だな。すぐに用意しよう。
そうそう、先日、隣に夫婦が越してきただろう。
昼間に菓子折りを持って挨拶に来たぞ。
その時に「奥様ですか?」と聞かれてな。
うん? それは勿論、否定したが。
なにゆえ残念そうなのだ?
ははぁん……ここで我がその場しのぎで肯定して、なんやかんやあって本当に妻になる、などと言うのを期待したか?
そういうシチュエーション好きだものな、貴様。
ん? 一ヶ月も一緒にいれば貴様の好みくらい、それなりに把握している。
まぁ、契約内容は貴様を癒やすことだからな。
いざ魂を捧げる段になって、また淀まれるのは困るのも確か。
貴様が天寿を全うするまで共にいるのも悪くはないかもしれん。
その方が最上級に輝く魂を手に入れられそうだしな。
……浮かれているところ悪いが、別に貴様の伴侶になってやるという話ではないぞ?
どうしてもと言うのならば、我の真の名を使って制約でも課すのだな。
ん? リベドは偽名だ。最初に言ったろう、「そう名乗ることにしている」と。
悪魔は真の名を利用した制約を課されると召喚者に逆らえんのだ。
まぁ、せいぜい頑張ることだ。機械頼りの一般人には無理だろうがな。
ふっ……まぁ、つまりはこういうことだ。
今後ともよろしく。
あぁ、そうだ、名前で思い出した。

貴様の名前、まだ聞いていないよな……?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
ベット・ソウル→←ゲット・ヒール
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
住公子
ライター情報
すまい きみこ
住公子、通称ハム子と申します。
これまでpixivで活動していましたが、ゆるボイ!でも投稿することにしました。
ご縁がありましたら、なにとぞ。

TwitterID @kimiko_hamuko
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