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狐村の長による気まぐれ耳かき
written by 松平蒼太郎
  • 耳かき
  • 睡眠導入
  • ファンタジー
  • 癒し
  • 妖狐
  • のじゃ系
  • 梵天
  • 耳吹き
公開日2023年01月08日 21:00 更新日2023年01月08日 21:00
文字数
2570文字(約 8分34秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
狐村の長
視聴者役柄
人間の男
場所
狐村
あらすじ
貴方は友達と遊んだ帰りに、なぜか狐だけが住む村に迷い込んでしまう。そこでその村の長と対面。彼女は貴方を人里に返そうとするが、貴方が耳を痒そうにしてるのを見て、耳かきをしてやろうと言い出し…?
本編
やっと目を覚ましおったか。


このわしを待たせるとはいい度胸じゃな、人間。


いかにも。わしは狐。この村を束ねる長じゃ。


そなた、我が村に無許可で出入りしたそうじゃが…何か申し開きはあるか?


ふむ…要するに迷い込んだというわけじゃな。


(ため息)


まったく…この村にはたまにお主のように迷い込んでくる人間がおるから困る…


まぁよい。悪気はなかったんじゃろう。
許してしんぜよう。


ん?この村か?この村は狐の村。


わしのように妖力を持った狐から、何の力も持たない狐まで、さまざまな狐が暮らしておる。


無論じゃ。この村で最も強い力を
持っているのがこのわし。


なんたって村の長じゃからな。当然であろう。


ほぅ…そなた、なかなか狐を
見る目があるようじゃな。


左様。村で最も美しいのもこのわし。


なんたって「長」なのじゃからな。ふふふ♪


しかし、そういうお主は少々醜男じゃのう。


まだ我が村のオスの方が優れておる。


ふふ…まぁそう落ち込むな。


生まれ持った顔を変えられない人間と、
妖術で自在に顔を変えられる狐とでは
差があるのも無理はない。


ち、違う!わしは素の顔がこれなんじゃ!


別にわざわざ美しい顔に変えずとも、
元々が美しいのじゃ!勘違いするでない!


なんじゃ、その疑わしそうな目は…
我が妖術の餌食になりたいか?


まぁよい…その無礼すぎる態度も
わしの寛大なる心で許してやろう。
感謝するがよい。


さて、お主を出口まで案内……どうした?
何をそんなに耳の穴をほじくっておる?


なんじゃ、お主は…
耳の手入れもろくにせんのか?
ズボラな男じゃな。


…のう、お主。せっかくじゃし、
わしに耳掃除されてみんか?


うむ。ちょうど退屈しておったところじゃ。
わしの暇つぶしに付き合え。


安心せい。耳かき棒なら既に用意してある。


ほれ…わしの膝に来い。


今回は気分が乗ったから特別じゃぞ。


ふふ、案外素直ではないか。いい子じゃ…


ではさっそく耳掃除を始めていこうか。動くでないぞ…


(耳かき)


お主…よくもまぁ、こんなに耳垢を溜めおって…ばっちぃのぉ…


わしは見ての通り、綺麗好きじゃからな…


お主の耳の中も汚れ一つない、ピカピカな状態にしてやるぞ…


…ん?これは竹製の耳かき棒じゃ。見て分かるじゃろう。


左様。この村の竹藪を加工して作った物よ。我が村には優秀な職人もいるのでな。すごかろう?


そうじゃろう、そうじゃろう。
この村に迷い込んだことを幸運に思うがいい。


村一番の美人たるわしに
耳かきまでされておるんじゃからな。


ん?なんじゃて?


チョロ…の後に何か言いかけたか?


むぅ…テキトーに丸め込んだか。


まぁよい。わしは世界で最も
寛大なる心を持つ狐じゃからな。


お主はせいぜい、わしとの出会いに感涙しながら、耳かきの感触を堪能するんじゃな。


さて…手前の方は掻き終わったので、そろそろ奥の方へ突っ込むぞ…


ふふ…なんじゃ、その声は。


醜男が変な声を出すとは滑稽極まりない。
愉快、愉快じゃ。


醜男は余計?本当のことじゃろうて。


むしろこの村では醜男は貴重なのじゃから、
誇りに思うがよい。


ま、美男であろうが、醜男であろうが、
素直な男であればわしは大歓迎じゃが。


そうじゃ。わしは素直な男が大好きじゃ。


御しやすいし、反応も面白いしのぉ。くくく…


なんじゃと?
人のことは言えないとは
どういう意味じゃ?


腑に落ちんな…もしやお主、
このわしをバカにしとるな?


本当かのぉ?ほれ、気持ちよく奥を掻いてやるから、本当のことを吐け。ほれほれ〜!


くくっ…どうじゃ?わしの耳かきの技量は?


お主の脳内を溶かすくらいには
気持ちいいじゃろう?


…ふむ。完璧じゃ。耳垢はほぼほぼ取れた。


あとはこちらの梵天で細かい
汚れを全て払い落としてやるぞ…


(梵天)


良い心地じゃろう?なんせこの梵天は
わしの毛でできたものじゃからな。


あっ、こら!動くでない!
汚れが上手く取れぬであろう!


なんじゃ…わしの毛で作った
梵天に何か文句でもあるのか?


ふん…そんな驚くようなことでもあるまいて。


わしに直に触れられてるも同然なのじゃからな…光栄に打ち震えながら、感触を堪能するといい。


…よし。梵天は終了じゃ。


ついでにおまけもくれてやる。


(耳吹き)


ふふっ♪ 身体がピクって
反応しおったわい。愛い奴じゃ。


さ、反対を向け。そちらの汚れも
完璧に落としてやる。


…うむ。その体勢でよいか?


了解じゃ。それでは始めるぞ…


(耳かき)


こちらもやはり汚いのぉ…


まったく…耳の手入れくらい
自分でこまめにせよ、人間。


…そういえばお主は
なぜここに迷い込んだのじゃ?


ふぅむ…友達と遊んだ帰り、とはな。


それは災難…いいや、幸運じゃったな。


このわしと出会えたんじゃからのう。


…?わしが自信家?
どこを見てそう言っておるのじゃ?


わしはただ事実を言っているだけじゃ。
別に自信家でも何でもないぞ。


む…なんじゃその呆れたようなため息は…
少々癪に障るな…


生意気な人間じゃ…わしの耳かきで
とろっとろにしてやろう…


ほれほれ、どうじゃ?
ここがええんじゃろう?
正直に言うてみぃ。


ふふふ♪ お主はすぐ顔に出るのぉ。
分かりやすい奴じゃ。


…何?もう梵天をして欲しいとな?


まぁ待て…耳かきがまだ終わっとらん。
梵天はそれからじゃ。


うむ…今ちょうど大物を発見したからのぉ。
これからそれを取らねばならん。


安心せい。わしにかかれば
こんなもの一発じゃ…


…ふっ、取れた。この程度は朝飯前じゃて。


うむ。耳の通りが良くなったであろう。


さ、残りはお楽しみの梵天じゃ。


こいつで全ての汚れを取り除いてくれるわ。


(梵天)


ふっ…お主、梵天の感触が
よっぽど気に入ったと見える。


ま、わしのもふもふの毛で触れられてるわけであるし、気に入るのも当然じゃな。


尻尾でもふもふ?贅沢言うな。今は梵天だけで満足せよ。


お主がもっといい男になって、再びこの村に
立ち寄ることがあれば、考えてやらんでもない。


さぁ?それは自分で考えよ。


男磨きのやり方なんぞ、わしは知らん。


…さ、梵天も終いにしようか。


最後にわしの息吹をくれてやる…いくぞ。


(耳吹き)


これにて耳掃除は終いじゃ。
お疲れじゃったな。


それでは村の出口まで案内してやるとしよう。
ほれ、わしの膝から起きよ。


名残惜しそうにしおって…本当に素直な奴じゃ。


そんなに心配せずとも、
また運があればこの村に立ち寄れるじゃろう。


次に会った時はわしが
お主に耳かきでもしてもらおうかの。


ほれ、餞別じゃ。
これを使って故郷で
耳かきの練習でもするといい。


そんな訳なかろう。同じ形をしておるが、
それはさっき使った物とは別物じゃ。


さ、行くぞ。
グズグズしてると置いていくからな。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
狐村の長による気まぐれ耳かき
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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