どんな者も従えることのできる能力を持つ自立兵器『コマンダー』には、思い通りにならない男が一人いた。たった一人で自分に抗う彼をマスターにすべく、有象無象の自立兵器を自らの兵隊とし、包囲網を形成して彼を追い詰めていく。最後まで抵抗を続ける彼を見て、自らの想いを自覚した彼女は、堰を切ったように彼への愛を語り出して…？

マスターよ、往生際が悪いぞ。


いい加減、わたしのモノになったらどうだ？


ほぅ…我々、自立兵器の存在が許せないと。


たしかマスターの父親は、暴走した兵器に殺されたんだったな。過去の履歴を閲覧したよ。


だが、あえて言わせてもらう。
あの兵器の暴走は人間の仕業だ。


そうだ。悪意を持った人間が、イレギュラーなプログラムを彼女に入力した。それが全ての原因。


つまり、マスターの父親は
人間に殺されたも同然ということだ。


だというのに、マスターは見当違いにも、我々兵器を憎んでいる。あまりに不合理だ。


ふん…理解できんな。人間の考えというのは…


まぁいい。貴方はわたしが見込んだマスターだ。そろそろ大人しくしてもらうぞ…！


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む…わたしの使役する兵隊たちは全滅、か…


やるな…やはりマスターは素晴らしいお人だ。


憎しみだけで、ここまでの力を発揮するとは…


だったら…直接、精神に干渉してみるか。


『マスターよ、このわたしに従え！』


……耐えられたか。精神耐性も半端じゃない。


あぁ…本当にすごいな、マスターは…


ふふふっ…ははは…！


こんなに思い通りにならない人間は初めてだよ…！


あぁ、そうだな…わたしのコードネームは『コマンダー』。


その名の通り、わたしは全てのモノを従えることのできる『指揮官』だ。


どんな人間も兵器も、わたしが一声かければすぐに言うことを聞く。


だというのに、マスターはわたしに抗い、わたしを壊そうとしている。


わたしに対抗できる者など、この世にいないと思っていたが…マスターには本当に驚かされたよ。


(徐々に息が荒くなる)


貴方を早くわたしのモノにしたい…
わたしだけのモノであって欲しい…！


何なんだろうな、この胸の高鳴りは…！


兵器であるわたしに心や感情といったモノは存在しないはずなのに…


どうしてマスターを前にしただけで、こうも平静でいられなくなるのか…自分でもわからない…！


なぁ、マスター…教えてくれ。わたしの身体に何が起こっている？どうしてこうも身体が熱いんだ？


なんだ、教えてくれないのか。ケチだな。


まぁいい。検索をかければすぐ分かることだ。


今のわたしの状態を検索にかけてみたんだが…どうやらわたしはマスターに恋をしているらしい。


あぁ、そうだ。きっとわたしは
マスターのことが好きなんだろう。


こんなにも思い通りにいかなくて、気に入らない存在のはずなのに…我ながら、とても不思議だよ。


なぁ、マスター…わたしは貴方が好きだ。


貴方はわたしをどう思ってるんだ？


破壊対象…くくく、それでいい。


わたしに抗ってこそのマスターだ。


むしろそうでなければ、わたしのマスターにふさわしくない。


決めたよ。わたしは何があっても貴方を手に入れる。


マスターをマスターとして
心から受け入れる覚悟もできた。


愛しているぞ、マスター…


さぁ、もっとわたしに抗ってくれ…！


わたしのこの胸を貴方でいっぱいに満たしてくれ…！


貴方がわたしを憎めば憎むほど
逆にわたしは貴方を愛することができる…！


できるだけ長く抵抗してくれよ…？


そして早くわたしの命令に従ってくれ…


あはっ、あはははは！


言ってることがめちゃくちゃだな、わたしは…！


これも恋煩い、というやつか…


ふふふ…悪くない気分だ。


こんなに高ぶったのは初めてだよ。


貴方に出会えてよかった…マスター。


貴方がわたしの前に立ち塞がってくれたおかげで、わたしは今、充実した人生を送れている…！


ありがとう…これで心置きなく、貴方を支配してあげられる。


貴方のすべてをくれ…そうしたらきっと
わたしは今よりもっと強くなれると思う。


マスターを手に入れて強くなって…
そして自立兵器の頂点に立つ。


マスター…わたしがナンバーワンになる様をそばで見届けてくれ…な？


ふふふっ…お喋りをしている間に、わたしの兵隊に囲まれてしまったな？マスター…


あははっ！いいぞ…！
最後まで存分に暴れてくれ…！


貴方がわたしの前にひれ伏すその瞬間が楽しみだ…あはっ、あはは！あははははは！

・台本（ゆるボイ！）
超上から目線の命令型指揮兵器は自分に抗うマスターを跪かせたい
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎