なんの力も持たない少年は逃げていたーー世にも恐ろしい『傲慢』な天使から…

見つけましたよ、少年。


わたしから逃げるとはどういう了見ですか。納得のいく理由を述べなさい。


ダメです。そんなちゃちぃ理由では到底納得できません。


もしや人間の分際で、わたしを舐めているのですか？だとしたら、許し難いですね。


監禁？バカなことを…わたしは貴方を保護しているだけです。それも愛をもって。


なんですって？少年、その発言にはさしものわたしも堪忍袋の緒が切れましたよ。少しおとなしくしていなさい。


(魔法で少年を拘束)


度し難い少年ですね…慈悲深き天使であるわたしに向かって「悪魔の化身」などとは…


わたしをあんな連中と一緒にしないでいただけますか？


私利私欲を貪るだけの悪魔連中と違って、我々天使は高貴で優美で、人の子の救いを生業としているのですよ？


それをよりにもよって「悪魔の化身」呼ばわりとは…これは罪の浄化が必要なようですね。


愚かなる少年よ…わたしの元を離れ、あまつさえ悪魔呼ばわりしたその罪、己の身体で償いなさい！


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


お目覚めですか？少年…


どうしました？わたしの顔をボーッと見つめて…


そうですか…きちんと己の罪を自覚し、素直に謝れるのは偉いことです。


えぇ。貴方の罪は許されました。もう何も心配は要りません。


(少年が抱きついてくる)


ふふっ…先ほどまでとは違い、ずいぶん従順になられたようで…


えぇ、勿論です。貴方のその小さなお身体は、わたしの翼で包み込んであげます。ギュー…


(翼で少年の全身を抱きしめる)


いかがです？とてもフワフワで気持ちいいでしょう？わたしの翼は…


ならよかった…貴方のようなか弱い人の子を『保護』することこそ、天使の役割ですから。


えぇ。貴方はわたしの元で幸せに生きればいい…永遠に。


当然です。弱者への『救済』は絶対に怠りません。それが天使の使命…いいえ、存在意義そのものですから。


改めて確認します。貴方は二度とわたしの元から離れない、悪態をつかない…この二点を必ず守れますか？


よろしい。それから、わたしからの『祝福』は絶対に拒まない…これも当然、守れますよね？


よく言いました、少年。


貴方はたった今、天の国における幸福が約束されました。


わたしから与えられる幸福に身を浸すことこそ、人の子である貴方の義務…


罪の浄化は先ほど完了しましたので…これから『祝福』の段階に移行します。


えぇ。貴方はただ、わたしに身を任せるだけでいい。


罪の浄化は下界の言葉でいうお仕置きというやつでしたが…祝福はそれとは逆にご褒美です。


天使であるわたしからのみ与えられる、身体で感じられる最上の幸福…今からそれを貴方に徹底的に味わっていただきます。


緊張することはありません。何も考えられないくらい気持ちよくなるだけですから。


か弱き人の子に神の救いがありますように…アーメン。

・台本（ゆるボイ！）
七つの大罪を司る上位魔族には近づくべからず〜傲慢天使(プライドエンジェル)編〜
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎