元神主である男は龍の住む里へとやって来ていた。己の愛する妻に会うために…

うーむ…まだかのぉ。そろそろのはずなのじゃが…


おっ…！おーい！こっちじゃ！おーい！


(男が近づいてくる)


よぅ来たな。ご足労じゃった。


うむ。儂を含め家族全員、お主の到着を待ちわびておった。まぁ、案内してやるからついてくるがよい。


(彼女に連れられて、家まで案内される)


みんな、ただいま戻ったぞ。我が花婿の帰還じゃ。


あぁ、もぅ、茶化すでない。ほれ、婿殿も皆に挨拶せい。


…うむ。そういうわけじゃ。儂らはこれから別室でイチャイチャするから、くれぐれも入って来ぬようにな？


(二人で別室に入る)


すまんのぉ。お主が帰ってくると皆、いつもあのようにテンションが上がってしもうて…


ふふ、そうか。まぁ、たしかにこれから本当の家族になるのじゃからな。これくらい賑やかなのも悪くないか。


さて、婿殿…久しぶりにギューってしてやろう。おいで？


(優しくハグ)


うむ…これでこそ、婿殿の感触…とても良き抱き心地じゃ…


どうじゃった…？俗世…人間界とは、別れを告げられたか…？


そうか…お主がそのように言うのであれば、儂からは何も言わん。よう頑張ったな。


そうじゃ…せっかくじゃし、儂に膝枕されながら、耳掃除でもされてみんか？


うむ。お主の耳に合ったこのゴム製の耳かき棒で、耳垢を取り除いてみせよう。ほれ、儂の膝にゴロンせい。


ふふ…まるで子どもじゃな。愛い奴め…


では早速、耳かき棒を突っ込んでいくから、そのままジッとしておれ。ゆくぞ…


(耳かき)


これくらいの力加減で良いか？痛かったら、きちんと言うのじゃぞ？


そうか…まぁ、お主の顔を見る限り、その言葉に嘘偽りはなさそうじゃな。


ん？なんじゃ、藪から棒に…


決まっておろう。お主は儂らの命綱とも言うべき龍脈を守ってくれたであろう？


あれが無ければ、先祖代々の土地は痩せ、儂らの存在もこの世から丸ごと消えていたはずじゃ。


うむ…あの悪龍による龍脈の汚染は酷かった。儂の力ですら、どうしようもなかったのじゃからな…


それをまさか、人間であるお主が元の清浄なる龍脈に戻してくれるとはな…流石は元神主殿。神から選ばれた存在というだけのことはある。


じゃが…そのせいでお主は己の身に宿る神力を全て失ってしもうて…


む……すまん。久々に会ったばかりじゃというのに、しみったれた空気をかもし出してしもうた。


うむ…当然じゃ。お主のことは儂がずっとそばで守ってやる。


守ってやるだけではない…甘えたい時は、いつでも甘えていいのじゃからな。


嫁が存分に甘やかしてやる…このように、な？


ふふ…蕩け切った顔をしておる。あの悪龍に勇敢に立ち向かった人間と同一人物とはとても思えぬ。


かまわん…お主が戦うことはもうないのじゃからな。余生はこの里でのんびり暮らすがよい…


…そろそろ反対の耳でもしようか。ほれ、身体の向きを変えよ。ゴロンとな…


…では、こちらも始めるから、ジッとしておるのじゃぞ…


(耳かき)


む…？なぜこちらの耳にはこのような大物が…？


仕方ない…少し気合を入れて、取り除くこととしよう…


……取れたぞ。ばっちぃ耳垢じゃ。我がブレスで塵にしてやるわ。


(耳垢に息を吹きかける)


さ、続きじゃ。耳かきはまだまだ続けていくからな。


………のぉ、婿殿。その、後でもっと気持ちいいことを体感してみたいとは思わんか…？


ちょ…！せっかく儂がおぶらーとに包んで言ったというのに、なぜそのように直球で表現するんじゃ！馬鹿者め！


むぅ…婿殿はもっと奥ゆかしい男かと思っていたのじゃが…「英雄色を好む」とは真であったのじゃな…


ふふ…好きにせい。じゃが、夜戦に自信があるのは儂も同じじゃぞ？


うむ…今宵はくんずほぐれつ、同じ閨(ねや)で共に過ごそうぞ？


……耳かきは以上じゃな。最後は両耳をマッサージするから、仰向けになるがよい。


(両耳マッサージ)


いい顔じゃ…これまで見ていた中で、今が最もだらしない顔をしておる…


もっと儂に堕ちてもよいのじゃぞ…？お主はこの里に永久就職するのじゃから…


ふふふ…愛おしいのぉ。お主の可愛さで、儂の方が先にやられてしまいそうじゃ…よきよき…


……そろそろ終いとするか。お疲れじゃったな。


(両耳を交互に吹く)


…不意打ちじゃ。流石のお主もドキッとしたであろう？


ふふ♪ 今日からよろしく頼むぞ。旦那様♪

・台本（ゆるボイ！）
優しい龍嫁の母性マシマシ耳かき
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎