後輩からいつものように頼み事を対処してあげたあなたは、後輩からお礼にと宅飲みの誘いを受ける。
彼女持ちであるあなたはためらうが、後輩に押し切られて飲むことに。
しかし、その誘いはあなたへの思いを拗らせた後輩の企みで……

わぁっ、ありがとうございますー！
私、虫とかぜんっぜん無理で、このままじゃ怖くて寝れないところでした！
いやぁ～、頼りになる先輩がいるって、ものすごくありがたいことですね！

いやいや、本当ですよ。
でも、そうやっておごらないところも先輩らしくていいな。

それで先輩、このあと、予定とかってあったりします？
ほら、私としてはいつも先輩に助けてもらってばかりで、何にもできてないですし、お礼……と言えるかは微妙かもしれませんけど、一緒に飲みたいなぁって、先輩がよければ。

そ、そうですよね……彼女がいるのに、遅くなるとかマズいですよね。

誠実だなぁ。

まあ、でも、たった一晩なら仕事付き合いってものもありますし、何とでも許してくれますよ！
というかそれすら許せない束縛女じゃ、先輩もこれからのこと考えた方がいいですよ？
なんてね！

遅くなるって連絡するんですか。
ということは、OKってことですよね！？

やったぁ！
ふっふ～ん、先輩とおっさけ～！

じゃあ、お酒持って来ますね～。

　（SE:冷蔵庫　開閉）

はいっ！
飲みましょ飲みましょ！

いつも先輩、ありがとうございます。
かんぱ～い！　んひひ。

私、とっても嬉しいです。
だって、普段は一人暮らしで、お仕事疲れたなぁーって思いながら飲むほかありませんから。

誰かがいるだけでこんなにも満たされるなんて。

先輩も、嬉しいんですか？
へぇ、先輩の彼女さんが飲めないから？

そうなんだぁ、いいこと聞いちゃったかもです！

それなら、毎日、来てくれませんか？
私なら、先輩のお相手、してあげられますよ？

あはは、流石に冗談です。
毎日女と宅飲みで遅くなる彼氏なんて、完全に浮気ですもんね。

先輩の家なら大丈夫かもしれない？
そっか、彼女さんと同棲してるんですもんね。

なんか、堂々としてるのも逆に裏でそういう関係なんじゃないかって、怪しまれないですか？
彼女さんが毎日異性の後輩を家に連れてきたら、先輩はどう思います？

そっかって何ですか。
先輩、そういう鈍感は結構マズいですよ？
先輩にその気がなくても、不安にさせたらそれはもう落ち度ですから。

……そりゃ、その気なんてあるわけないですよね。

ん？　気のせいです。

ですが先輩。
先輩にだって、どうしようもないこともあるんです。

もう、うとうとしてますし、いいですよね……？

（囁き）先輩。

んっ……（キス）

　（SE:シャッター音）

んへへ、簡単に撮れちゃいましたね。
浮気の証拠写真。

先輩、様子おかしいですよ？
……って、勝手にキスされて写真撮られて、浮気だなんて言われたら誰だって焦りますか。

先輩を想ってやまない後輩と二人きりの宅飲みなんてしても、OKサインでもなくただの鈍感ですもんね、先輩は。

あー、待ってくださいよ、そんなフラフラの身体で無理して逃げないでくださいって！
外で倒れますよ？

　（SE:鍵のかかったドア音）
　（ここから冷たい声で）

なんて、こうなることぐらいわかってたので、鍵掛けておいてましたけど。

わかってても、傷付きますね。
意中の先輩に、文字通り逃げられるだなんて。

なぁに怖がっているんですか先輩。
私が何をするように見えてるんですか？

これ以上はマズい？

全然マズくなんかないですけど。

……いや、彼女にとってはマズいですね。

いえ、脅したり危害を加えたりする気はないですけど。
でも、そうですね……彼女さんが、私の不条理をそのまま感じてくれたらいいのにとは思いますよ。

彼女は何も悪くないとか、何もわかってないくせに言わないでくださいっ！
先輩がわかってたら……こんなことにはなってないんです……！

私の胸は、張り裂けてないんです……。

先輩。
先輩には、私の愛って、どんなふうに見えてるんですか？

やっぱり、彼女との仲を引き裂こうとする、最悪の愛、ですか？
黙ってても、わかりますけど。

なんか、嫌だなぁ。
先輩には、笑ってほしいのに。

いいです。
何も言えないんなら、答えてくれなくても。

じゃあ、次。
もし、先輩に彼女がいなかったなら、私の愛は、こんなふうに見えますか？

……頷いた。

ねえ先輩。
それって、今の私の愛が最悪だって、暗に認めてることになりますよ。

いいです。
先輩の素直な気持ちがそれなんですもん。

悪いのは、私なんでしょ？
だって、先輩には彼女がいるから。

恋人がいる人のことを、好きになってはいけない。
これが、世の中のルールなんですよね。

ルールを破れば罰を受ける。
思い人からは愛を拒まれ、他人からは悪人のように蔑まれる。

みんな知ってる単純なことです。

でも、先輩は彼女がいるからって、誰にも好かれないように振る舞うことなんてしない。
きっと、先輩が彼女を射止めた時と変わらない素敵な先輩。
むしろ、人を大切にすることを知って、もっと魅力的になってるのかも。

好きになってはいけない人を、好きになってしまわない方法は、誰も知らない。

　（ここから気持ちをはっきりと出す）

私は、先輩のこと、好きですよ。

嫌いって言い聞かせたり、他の人のことを考えるようにしたり、好きなことに打ち込んでても。

先輩のこと……好きなんですよ！

ねえ、先輩。
私は、それでも悪い女ですか？
悪いなら、何をしてはいけなかったんですか？

ねえ。

ねえ！

何も言えないんだ……。

じゃあ……じゃあ、なんで、私が先輩のことを好きになることが許されないんですか！？

運命だとか……受け入れられるわけないじゃないですか！
だって先輩はここにいるし私もここにいる。触れたい先輩のこといくらだって触れられるし触れてほしい先輩に私のこといくらだって触れてもらえる。愛してるって言えば先輩の耳にちゃんと伝わるし先輩の言葉を何でも受け止められる。

先輩のこと、今すぐ思いのままに愛せる。

それなのに、それなのに……。

ねえ何がこの愛を拒むんですか？
ねえ何が私と先輩の間にあるんですか？
ねえ何が間違ってるんですか？　というか間違えちゃいけない理由なんてあるんですか？

恋人だとか、嫌だとか、無理矢理だとか、なんかよくわかんなくて。


私は先輩を愛したいから愛すんです。


ほら、暴れないでください！
どうせ逃げられないし、どうせ薬も効いてくるので、時間の問題です！

だから嫌だとかどうでもいいんです。
嫌なら最初から私が手を出せないようにしてればよかったんですから。

先輩が悪いんです。
私に好かれてることをそのままにして、私に隙を見せて扇情してきたくせに、今この瞬間すらも、ちゃんと私と向き合ってくれない先輩が……！

ねえっ、ねえっ！

　（SE:押し倒す）

ほら、無理に暴れたって先輩の身体は満足に動かせないんです。
諦めて、ください。

あれ、疲れ切っちゃいました？
意外と素直に抵抗をやめてくれるんですね。

……いい子です。

　（間）

好きな人のことを泣かせるとか、私、悪い女だな……

　（SE:脱がせる）

・台本（ゆるボイ！）
この愛が、禁じられていたとしても
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・台本制作者
夜木嵩