会議用のプレゼン資料を作って遅くまで残業していた貴女の前に、別の部署の先輩社員が現れた。
彼は社内に忘れ物をしてしまい、会社までわざわざ取りにきたということだが、資料作りに苦戦している貴女を見かねて、声をかけてきた。

あれ？お前、まだ残ってたの？

ふーん…会議用のプレゼン資料の作成、か。大変だな。

俺？俺はちょっと忘れ物したから取りにきただけ。

えーっと…あったあった。これだ。

ん、スマホのワイヤレスイヤホン。なぜか机の中に放り込みっぱなしだった。

で？何に苦戦してんの？ちょっと見してみ？

ふんふん…あー、これね。ちょっとマウス貸して。

ここをこうして…ほら、見栄えよくなったろ？

ん、どーいたしまして。他なんか改善したいとことかある？

え、俺から見て？そーだなー…

まぁ全体的な内容に関しては文句ないけど…あとはこの辺の文面ちょろっと書き換えれば、そこそこ自然な感じになると思うけどな。

あー、そうそう。そんなもんでいいんじゃね？ほら、もう帰ろうぜ。あんまり頑張りすぎると、身体保たねえぞ。

…？どうした？もしかして肩凝ってる？

そっか。まぁそんだけデスクワークやってりゃ肩も凝るか。

え？疲れ目？じゃあはい。目薬。

俺もよく目、疲れるから。かなり効き目あるぞ、それ。

あと肩だっけ？ちょっとだけ揉んでやろうか？

うん。別にいいよ。しんどいんだろ？

あ、でもアレか。今どきこういうのって、下手するとセクハラ認定されるんだっけ？

すまん、流石に配慮が足らんかったわ。嫌なら全然…

…え？マジで？いいの？あとで変な噂流したりとかしない？

んー、まぁそこまで言うなら…穏便に済ましてくれると助かる。

(肩揉み)

おー、すげー凝ってる。半端ないな。

うん。揉みがいあるわ、これ。めっちゃ硬え。てか力加減これでいい？

オッケー。じゃあこのまま揉んでくわ。



お前もよく頑張るよなぁ…こんな遅くまでさ。

まぁとりあえずあんま頑張りすぎんなー？テキトーなとこで手ェ抜けよ？

うち、そんなブラックじゃないけど、たまにクソ忙しいときはあるから…

あ、俺？まぁお前とは部署違うけど…別にいいじゃん。仕事頑張ってる後輩の姿がたまたま目に入ったんだからさ。

んー、まぁ先輩の要らんお節介焼きだから、気にすんな。

え？そう？優しいってか、ちょっと声かけただけなんだけど…

ふーん…よく分からんけど、穏便に取り計らってくれるんなら、それでいいや。

よし、そろそろ肩揉みいい？ちょっと手ェ疲れてきた。

おう、お疲れさん。俺らで最後だし、会社のセキュリティかけて、ササっと帰ろうぜ。あと途中まで送ってくわ。




あ、この辺でいいの？そっか。じゃあお疲れー。また明日な。

え？……俺の帰り道？向こうだけど？それが何？

まぁたしかに反対方向だな。それが？

いや、流石にさっきまでの人気のない暗い夜道を、女の子一人で帰らせるわけにはいかんだろ…流石の俺もそれくらいの配慮はできるって。

俺は平気。別にこっからそんな遠くないし。

謝んなって。俺が勝手にやったことだから。

んー、逆に気を遣わせちゃったかー…じゃあひとつだけお願い聞いてもらっていい？

え、なんでいきなりそんな緊張すんの？そこの自販機のブラックコーヒー奢ってって言おうとしただけなんだけど…

うん。今ブラック無性に飲みたい気分だから。頼むわ。

…サンキュー。そんじゃ、今度こそお疲れさん。

ん、どーいたしまして。こっちこそ缶コーヒー、ごちそうさん。じゃなー。

・台本（ゆるボイ！）
別部署の先輩社員が残業していたわたしにしれっと世話を焼いてくれた
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・台本制作者
松平蒼太郎