0
やくもたつ庭
written by 水谷 翡翠
  • 告白
  • シリアス
  • 純愛
  • 片思い
  • 切ない
  • 戦国時代
  • 歴史
  • ひすいの台本
公開日2023年01月01日 02:27 更新日2023年01月09日 23:11
文字数
312文字(約 1分3秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
男性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
明智光秀
視聴者役柄
指定なし
場所
生まれ育った屋敷の庭
あらすじ
濃姫が嫁ぐ日、従兄弟の明智光秀はなにを思うのか。

濃姫は、織田信長の正室で斎藤道三(別名美濃の蝮)の娘。幼名は帰蝶。
明智光秀は、のちに織田信長に仕える武将、そして本能寺の変を起こす張本人。幼名彦太郎。
本編
朧雲(おぼろぐも)に閉じられた
馴染みの庭を見遣れば
どこか薄ぼんやりとした
幼き己を見た気がした。

彦太郎(ひこたろう)と呼ぶ鈴の音(ね)が、
今では消えぬ風のようだと
云(い)うてみたことがある。
ぬばたまの密(みつ)な睫毛(まつげ)を
震わせた蝶は、
一寸先(いっすんさき)には
蝮(まむし)の娘の顔になる。

そんな女を己は、確かに好いていた。
姉のようでいて、友のようでいて、
惹かれてやまぬ彼女は、
今頃、尾張(おわり)への花嫁道中だろう。

駆け回った庭石には、
しとりと斑(まだ)らができた。
濃い鼠色(ねずいろ)はたちまち広がり、
己すらも濡れ鼠(ぬれねずみ)にする。


そうだ、このまま、
この癒えぬ痛みも
暖かな遠い日もすべて流してくれ。


人に成らざる想い人に
並び立てぬ己は、
どこまでも、人であった。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
やくもたつ庭
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
水谷 翡翠
ライター情報
和物を書くことが好きです。
もともとはnanaで書いていましたが、他媒体でも読んでもらえるように一部をこちらに掲載いたします。主に90秒前後で読める台本や台詞が多いです。
#ひすいの台本 で告知ツイートしていただけたらなるべく見に行かせていただきます。

・各台本の一人称の変更はお好きにしていただいて構いません。
・連絡はTwitter(@rakkopu_)までお願いします。別名義(らっこっぷ)になっておりますが中の人は同じです。
有償販売利用の条件
当サイトの利用規約に準ずる
利用実績(最大10件)
水谷 翡翠 の投稿台本(最大10件)