こんにちは、今日はとっても良い天気ね──今にも雨が降りそうで、絶好の散歩日和だわ。
どこを見ているの？私は貴方に話し掛けているのですけど……そう、貴方です。
此処には私と貴方しか居ないでしょう？それとも貴方、幽霊でも見ることが出来るのかしら？
だとしたらごめんなさいね、私はそういうのを見るのがあまり得意ではないの。
それより、こんな時間に一人で何をしているのかしら。
貴方みたいな学生さんは、この時間は学校で勉強をしてるのが普通だと思うのだけど？
私？私の事はどうでも良いでしょ……それに質問をしてるのは私の方よ。
へぇ、学校が退屈だから抜け出してきたんだ……やっぱり学校って退屈な場所なのね。
退屈しのぎに通ってみようと思ってたけど、貴方みたいな人が「退屈」って言うのなら相当な場所なのね。

でも、貴方が学校に行かないのって──本当にそれだけが理由なの？
気のせいだったら悪いのだけれど、貴方から少しだけ血の匂いがするの。
貴方自身の血とは違う──その手に染み付いた血（匂い）は、一体誰のモノなのでしょうね。

あら、気を悪くしてしまったかしら……だとしたらごめんなさい♪
私の憶測に過ぎないけど、貴方は化け物に襲われた……その血は一緒に襲われた人間の血なのでしょう？
「違う」……あらら、推理が外れてしまったようね。それなら、一体何があったのか教えて頂戴。
私はその手の「専門家」だから、馬鹿げた話でもしっかり聞いてあげるし、貴方の知らない答えも出してあげるわ。
でも、とりあえず今日は家に帰るか……そうね、何処か人の多い場所に隠れていた方が良いわ。
一番は教会に逃げ込むのが手っ取り早いのだけど、この辺りにはそんな場所もないし……とりあえず、一人になるのだけは止めておきなさい。
あ……急で悪いのだけど、私はこれで失礼するわね。
空が晴れて来た……私、太陽の光はあまり得意じゃないの。
今日は日傘も持ってきてないから、何処か日の当たらない場所を探さなきゃ……それじゃあ、機会があればまた会いましょう──大丈夫よ、貴方の悩み事は私が解決しておくから。




こんばんは……まさかその日のうちに再会するとは思わなかったわ。
そんな事より、私は「出来るだけ人の多い所に隠れてなさい」って忠告をした筈なのに、どうしてこんな路地裏に居るのかしら？
おかげで私、貴方を庇って殺されちゃったじゃない……まぁ、普通に殺された程度じゃどうって事は無いのだけど。
それにしても貴方、まさか吸血鬼に狙われてたなんて……流石の私も驚いたわ、私の縄張りに入り込んでくる奴がいた方が驚きだけど。
さっきの奴って、もしかして貴方のクラスメイトだったりするの？
へぇ……だから学校をサボってあの三流吸血鬼から逃げてたのね。
そ、そんな事より……ごめんなさい、少しだけ、血を飲ませてもらっても良いかしら？
さっきは大丈夫なんて言ったけど、流石に胸に穴を開けられたのは堪えるみたい……だから、助けてもらったお礼だと思って……良いでしょ？
助かるわ……少し痛いかもしれないけど、ちょっとだけ我慢してね。

ふぅ……貴方の血、とっても美味しかったわ。
おかげでほら、傷もすっかり元通り……流石に服までは直せないけどね。
お気に入りの服だったのに──でも、今回はその美味しい血に免じて許してあげるわ。
どうだったかしら、吸血鬼に血を吸われる感覚……とっても素敵だったでしょう？
私、どうやら貴方の事を気に入ってしまったみたいなの。
だって、あんなに美味しい血……私、初めて口にしたわ♪
それに、さっきの吸血鬼に怪我をさせたのも貴方でしょう？
貴方の手に血の匂いが残ってたのも、きっとそれが理由なんでしょうね。

面白い人間──それでは、今から貴方に質問をします。

貴方じゃとても敵わない化け物を殺した私は、貴方に一緒に来てほしいと言っています。
私の要求に従えば丁寧に私の屋敷までお迎えしてあげますが、もし断れば「多少」強引に私と一緒に来てもらう事になります……もちろんその場合、命の保証はありません。
さて、賢明な貴方は一体、何方を選んでくれるのかしら？


気に入った人間（オモチャ）を壊させるような真似はさせないで……私を失望させないでね♪

・台本（ゆるボイ！）
吸血鬼さんは新しいオモチャを見つけたようです
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹