姉が好きな人の話をするようになった。
関係ない、と話半分に聞いていたらその好きな人は私の好きな人で…。

いつもいつもいつも姉は私の好きなものを無自覚に盗っていくんだ。

でも先輩だけは渡さない。渡してたまるもんか。

【街中】
あ、先輩～。
どうしたんですかこんなところで。

ああ、私ですか？
えぇと、私もそこのカフェに用事があって…。

このパフェ食べたかったんですよね！
クラスで話題になってて…。

先輩いま…一人ですか？

もしよかったらですけど。
ちょっと付き合ってくれません？

…その、二人だと安くなるんです。
ここのお店カップル割引みたいなのやってるらしくて…。

最近お財布がかつかつで。
お願いしますっ！

ありがとうございます！

へっ！？
私服、かわいい？…ですか？

そうですかそうですか！

…よかったぁ。

って、褒めても何も出ませんよぉ！？


【電車内】　
先輩？
あ、やっぱり先輩だ。
今日は遠くへお出かけですか？

ふむふむ。
え、まさかの行先同じ？

いやあ、1人で寂しかったんですよ～。
でも先輩と一緒なら一瞬ですね！

あ…、ちょっと混んできましたね。
これだから電車は…。

…ぁ、先輩距離近いです…。

は、離れなくて大丈夫ですっ！
…守ってくれて、その…ありがとうございます。


【告白現場】
偶然、ですね。

聞いちゃいました。
…告白されてましたね。

告白、受けるんですか？

…そうですか。

後出しみたいで卑怯かもしれませんが…

私は先輩のことがだいすきです。
会った時からずっと…。

今からでも遅くないです。
…彼女はどちらかというと気が強い方ですし、私にしませんか？

ええ、知り合いも何も。

先ほど先輩に告白した女性は…

私の"実の姉"ですから。

ま、唐突に好きと言っても信じられないですよね。
どのくらい先輩のことが好きか、教えてあげます。

…最近やけに私と会いませんか？

カフェの前だったり、電車の中だったり。
思い当たる節はありますよね。

実は私、先輩と姉が会わないように邪魔してたんです。
姉が先輩を好きだと知ったあの日から。
ずっと。

最初は諦めようとしました。
だって、私が姉に敵うわけないですから。

だから偶然を装って先輩に近づきました。
いつか姉が先輩に告白するのはわかっていましたしね。

せめて先輩と一緒の時間を過ごしたかったんです。
ほんの少し…1分だけでもいいから…と。

でもさっきの告白を見て決めました。
先輩は…先輩のことだけは諦めきれない。
お姉ちゃんに取られたくないって心の中で強く思ったんです。

だから私は先輩に告白します。
私は先輩のことが大好きです。

どう、ですか？
私の気持ちは…伝わりましたか？

//悔しそうにダメ押しで
昔から。
昔からなんです。
私は姉に好きなものを盗られる。
好きだった人形も、ぬいぐるみも、おもちゃも。

先輩だけは違うと信じてます。

…違うと言ってください。
私は、好きな先輩を姉に奪われたくないんです。

もう好きなものをなくすのは嫌なんです…。

先輩の好みが姉なら、姉に性格を似せます。
服装だって、考えだって先輩の好みに合わせますから。

だから、姉ではなく私を選んでください。
一生のお願いです。


ぁ…あ、ありがとうございますっ。
絶対絶対先輩のことを幸せにしますからっ。

へ…？
ひとつだけ訂正がある…？
な、なんですか…？

私は私のままでいい…？

なんで、なんでっ。
そんなに優しくしてくれるんですか！

私のワガママで先輩の決断を変えてしまった。
せめてその償いはさせてほしいのに…っ。

きっと。
…姉もそんな先輩の優しい部分が好きなったんでしょうね。
姉妹ですから、嫌なくらいそういうのわかるんです。

じゃ、じゃあ改めて
私は先輩の彼女…でいいんですよね？

せ、先輩は
私のっ、か、…かか彼氏…ってことでっ。

あ、ぇと。
これからもよろしくお願いします…っ。

…ふふ。
嬉しいなあ…。
これで先輩は私のものなんだって思うと…。

そ、そうだ！
手とか繋いじゃいましょうか。

違います。
私と先輩はカップルになったんですから…。
こう指を一本一本絡めて…。

恋人繋ぎ！
こうやって先輩とするの憧れてたんです！
にへへ。

あ、あのっ。
たぶん姉は、これから何度もアピールしてくるかもしれません。

ライバルが実の妹ならなおさらだと思います。
私と一緒で諦めが悪いですから…。

それでも、先輩は私のことを見ていてくれますか？
隣にいてくれますか？

…だいすきです。
先輩。

・台本（ゆるボイ！）
告白現場を見てしまったストーカーな後輩は上書きするように想いを告げる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
鮎