専業主夫とＯＬ妻のあまあま夫婦生活。
…の裏では、ヤンデレ夫があんなことをしていたというお話。

【リビングにて】

せーの

（手を合わせる音）

いただきまーす！


どう、海老のてんぷら美味しい？

本当？

この前は衣がフニャフニャになっちゃったから

リベンジできて良かった～。

あ、ねえねえ！

今日、いつもの八百屋さんに行ったら

ピーマンおまけしてくれてさ。

だからね、無限ピーマン作ってみたんだけど。

どうかな？

あ、何その顔！

まーた食わず嫌いして！

子供じゃないんだから食べなさい。

ほら、口開けて。

はい、あーん。

…よし。

ただでさえ君はいつも

仕事で帰りが遅いんだから

美容と健康のためだと思って

ちゃんと食べようね？分かった？


（スマホの着信音）

あ、電話だ。

ゴメン、ちょっと出てくるから食べてて？


◆以下、通話中のボイス◆

もしもし、俺だけど。

何の用？

飯時に掛けてくるなって言っただろ。

消されたいのか？

…ああ、あの話か。

ちゃんと上司に話をつけられたんだよな？

うちの妻を新しいプロジェクトのリーダーに就かせる話。

そうか…明日内示が出るのか。

この前も言ったけど、チームは女の社員中心にしろ。

男は…そうだな、年配の既婚者だけは許してやる。

は？無理じゃねえよ。

何のためにお前を妻の会社に

送り込んだと思ってるんだ。

いいか、ちゃんと俺の言うとおりにすれば

お前の不倫の証拠写真は処分してやる。

じゃあな…俺の奴隷第１号君。

引き続きよ、ろ、し、く。

◆通話中のボイス終わり◆


お待たせ～。

あ、いや、お袋からだよ！

う…ううん…大丈夫。

…大した用じゃなかったし。


それよりさ！

明日の夜、久しぶりに外に食べに行かない？

君が好きそうなイタリアンのお店、見つけたんだ。

ディナーの予約、僕がしておくから。

え？贅沢？

そんなことないよ！

君はいつも仕事を頑張ってるんだし

僕も内職で貯めたお金があるんだ。

たまには特別な時間

プレゼントさせて？


（しばらく経った後）

せーの

（手を合わせる音）

ごちそうさま！

あ…食器はそのままでいいよ！

君は仕事でお疲れでしょ？

お風呂、沸いてるからいつでも入って！

あと、洗濯物とか

アイロン掛ける服あったら出しといてね！

もちろん寝る前にはマッサージもしてあげる！


（夜中、誰かに電話をかける夫）

◆以下、通話中のボイス◆

もしもし？

おい奴隷、ちゃんとツーコール以内に出ろ。

そんなに消されたいのか？

今日から指令を追加する。

洗濯カゴに入ってた妻のシャツ…

男の「整髪料」の匂いがしたんだ。

なんでだよ…

会社は俺が車で送り迎えしてんだし

電車で男と密着もしないはずなんだ。

おい、どういうことだよ！

お前、ちゃんと見ておけって言っただろ？

いいか、オフィス内で妻に接触した人物

会話時間、距離、内容

今日からまとめて俺にレポートでよこせ。

ん？

もう、勘弁してほしい？

そうだな…お前が社会的に消えてもいいなら

やめてやっても良いけど？

もちろん肉体的も…ね。

俺、何だって出来るし、やるから。

じゃ。

◆通話中のボイス終わり◆


【翌日、レストランにて】

せーの

（グラスを合わせる音）

乾杯～！


リーダー就任おめでとう。

大きなプロジェクトを任されるなんて

すごいよ、さすがだよ！

へえ、ベテラン女性ばっかりのチームで安心？

そうだねえ、きっとうまく行くよ！

しばらく忙しくなると思うけど

今夜はディナー、ゆっくり楽しもうね！


はい、これお祝いのプレゼント。

君の好きな、薔薇の花だよ。

喜んでくれると嬉しいな。


…え？

「どうしてリーダーになったって知る前に

お祝いを用意してくれたのか」って？

あ、ああ…

それはね…多分…

僕たちが夫婦だから、でしょ？

大事な時には、通じ合うんだよ夫婦って。

それよりほら、ディナー冷めちゃうよ。

食べよ？


あ、そう言えば。

はす向かいの家の奥さんがね

「おめでた」らしいよ。

うん、そうそう第三子。

すごいよね、奥さん君と同い年だっけ？

あの家、ますます賑やかになるね。

羨ましいなあ。


あ…もちろん僕たちは

自分たちのペースを大事にしようね！

ほら、ただでさえ

君が働いて、僕が主夫っていう

決して一般的じゃない形だけどさ

そんなの関係ないよね？

隠しごともなく

お互い本音を言い合って

心と心が通じ合ってることが

一番大切だよね。


そうだよ、ゆっくりでいいんだよ。

理想の家庭って

突然できあがるものじゃなくって

地道に一日ずつ

今を重ねていくしかないんだ。

僕は、そのためだったら

どんな努力でも重ねていくからね！


そう…

どんな努力でも、ね。


ほら、グラス空いてるよ。

もっと飲んで？


【ディナーの終わりに】

さあ、帰ろっか。

あれ…？

どうしたの、そんなにもたれかかって。

ワイン飲みすぎちゃった？

仕方ないな。

タクシーで帰ろうか。


あ…でも明日は土曜だから

急いで帰ることも無いのか。

どこか、休める場所探すよ。

この時間だと…そうだな

ホテルくらいしかなさそうだけど。

ううん、いいんだよ謝らなくて。


（独り言をいうように）

…ワインに入れた薬

効いたみたいだね。

大丈夫。

今夜はたくさん癒してあげる。

僕のこの手は

君を癒すためにだけにあるんだから。


満たしてあげなきゃいけないんだ。

僕のあたたかい味で

永遠に。

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレ愛妻家のいびつな献身の形
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
市 砂鳥