仕事から帰った貴女は、居候先のおじさんの晩酌の相手をすることになった。酒に酔った貴女はおじさんに好意を伝えるが、彼はいまだに別れた元妻への未練があって…？

お疲れさん。今日も
仕事、頑張ったみたいだな。


いや…俺はいつも通りだ。
特に何かあったわけじゃない。


…そういうお前さんは
何かあったみたいだな。


また仕事で嫌なことでも？


いいさ…言いたくないならそれで。


それよりほら…酒でも飲むか？
お前さんの好きなウイスキーだ。


分かった…グラス、もらえるか？


(お酒を注ぐ)


好きなだけ飲めばいい。
俺も飲みたいだけ飲む。


…そういえば、いつのまにか
駅前のラーメン屋が潰れていたな。


あそこのラーメンは
けっこう好きだったんだが…


そうか…入ったことないか。


まぁ、あそこは若い女性一人じゃ
入りにくい雰囲気だからな。仕方ない。


そうだな…潰れないうちに
お前さんを連れて行けばよかったな。
すまない。


…あぁ。この歳になると
後悔することばかりが
増えてきて嫌になる。


今日特に何かあったわけじゃない
というのは本当だが…昔のことを
振り返っては「あぁしておけばよかった」
とか、そんなとりとめのないことばかり
考えてる。歳はとりたくないもんだ…


…悪かったな。おっさんのつまらない
愚痴ばかり聞かせてしまって。


嫌だったら、自分の部屋に戻っていいからな。


そうか…お前さんは優しいな。


それとも、近ごろの若い女の子は
みんなお前さんみたいに優しいのか…


まぁお前さん以外の若い女の子と
接する機会はないから、分からないが。


だな…お前さん以外の子と
無理に接する必要もないか。


…俺にとってのお前さん、か？


そうだな…初めてうちに来た時は
とんだお転婆娘だと思ったが…


あれは自分の心の闇を隠すための
演技だったんだな。後から知ったよ。
気づくのが遅すぎたかもしれないが。


いまだに家族とは連絡を
取っていないのか？


そうか…もう完全に絶縁状態か…


いいさ…ずっとここに居れば。


お前さんを憐んで拾ったのは
俺だからな。最後まで面倒は
見てやらないと…


迷惑なんかじゃないさ。
むしろこんな独り身のおっさんに
構ってくれて嬉しいと思ってるよ。


妻と別れて一生独り身だと
思っていたところにお前さんが
来たんだ。感謝してる。
晩酌の相手もしてもらって…


あぁ…お前さんと飲む酒は美味い。本当に…


…隣か？いいぞ。好きに座れ。


(女の子が隣に座る)


物欲しそうな目、してるな。
俺の酒、そんなに飲みたいか？


いや…手は出さんさ。
お前さんを拾った時から
そう決めてる。


性欲も枯れ果ててるし…
何より今でも俺は妻のことが
好きだからな。


あぁ…未練ったらしい男さ。
別れたのは十年も前のことなのにな…


(腕を絡め取られる)


…どうした？もう酔っ払ったか？


お生憎様、だな…
歳の離れたピチピチの若い娘に
手を出す気にはなれん。悪いな。


…仕方のない奴だ。なら少しだけ
相手、してやる。いくぞ…


(デコピン)


あまり大人を誘惑するな。
いつか痛い目を見るぞ？


はは…そうか。
今痛い目に合わせたのは
俺だな。すまない。


(頭を撫でる)


これで許してくれるか？
今の俺にはこれで精一杯だ。


子ども扱いするさ。お前さんは
いつまで経っても俺にとって
可愛い子どもだ。


どれだけ成長しても、変わらんさ。
その分、俺は歳をとってるしな。


せめて肩を…？こうか…？


(肩に手を回す)


こうしてると、
若い娘にセクハラしてる
親父そのものだな…


…警察は勘弁願いたいな。
まぁ今さら逮捕されたところで
失うものは何もないが。


分かってるさ…若い女の子には
手を出さない。お前さん含めてな。


好き…そうか。俺もだ。


あぁ。お前さんのことが好きだ。
じゃなきゃ、家に置いたりしない。


どっちの好き、か？
もちろん、娘としてだな。


…だいぶ酔っただろう。そろそろ眠るか？


…もう夢の中か。ずいぶん早く
寝落ちするな、コイツは…


寝床まで運んでやらないとな。よいしょ…


(お姫様抱っこ)


軽い…ダイエットしていないのは
知ってるが…少し心配になるな。


(布団に女の子を寝かせる)


ふぅ…結局、悩み事が何かは
言わなかったな…


だけど…俺はいつでも
お前さんの味方だからな。


頭の片隅にでも入れて
おいてくれれば、それで…


今はゆっくり休めばいい…おやすみ。

・台本（ゆるボイ！）
家出先のイケおじとの晩酌
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎