魔王と化した貴女を、幼馴染の男の子が救うお話。明けない夜を終わらせるために、彼がたった一人で貴女に立ち向かってきて…？

(荒い息)


つっかれた〜…おい、迎えに来たぞ……魔王様。


あ？何でって…いつまでも面倒なこと続けんじゃねえよって、言いに来ただけだけど？文句あっか？


勇者〜？なんかムカついたから、ぶん殴って気絶させた。「僕が魔王を討伐するんだ〜！」とか抜かしてたからさ…


まぁな…魔王は討伐されるべきなんだろうな。少なくとも、人間の常識的にはそう。


まぁ、でも…俺からしちゃ、そんなの知ったこっちゃねーし？つーかそもそも、魔王討伐とか現実的じゃねーし？もう言葉で説得した方が早いんじゃね？って話。


…あぁ、聞くと思ってるぜ？俺の言葉なら、まだ届きそうだし…現に今、こうして俺の話は聞いてくれてるし。


だよな〜…ホントはこえーよ。なんで、一般人の俺が世界を一捻りできる魔王の前に立たねばならんのだ。理不尽極まりねーわ。


もっとも…俺からしたら、お前は魔王っつーか、幼馴染なんだけどな。


昔からよく言ってたよな？「明日なんか来なきゃいいのに」って。「このまま生きてたって何もいいことない」とも…ネガティブなことばっか言ってさぁ、聞いてるこっちの気が滅入りそうだったわ。


つーか、本当に永遠の夜をもたらすやつがあるか。マジで朝日昇ってこねーじゃん。このままじゃ俺ら、一生おやすみしてなきゃなんねーし…それは人間としては、ちとキツいんだわ。


(ため息)


だから言ったろ…迎えに来たって。ずっと夜を続けたって仕方ねーし…何よりお前自身が余計しんどいだけじゃん。


だってそうだろ？お前、今の自分の顔、鏡で見てみ？顔がやつれて、目の隈もエグいし…あと、めちゃくちゃ痩せてる。もちろん、悪い方の意味で。


ほっとけねーから、ここに来たんだろ…だ、大事な女が苦しんでんのを、見て見ぬふりなんてできるか…！


大事に決まってんだろ…！だからわざわざ、魔族どもの襲撃掻い潜ってここまで来たんじゃねえか…！


こっちは命賭けてんだ…はいそうですかって、大人しく引き下がれっかよ…！


たしかに俺は勇者じゃねーけど…お前の幼馴染ではある。だから、苦しんでるお前に手を伸ばす資格はあると思う。


お前だってそうだ…俺の手を取る権利がある。助けを求める権利がある。苦しい時は苦しいから助けてって、素直に言えばいいんだよ…！


あぁ、もう…！めんどくせえな…！いいから、こっち来いって！


(魔王に近づいて抱き寄せる)


ったく…手間かけさせんなよ。魔王なんかになりやがってさぁ…


…いいったらいいの。俺がいいっつってんだから。俺はお前と一緒に朝を迎えたい。


ほら、前に行ったの、覚えてるか？めっちゃ朝日がよく見えるとこ…


そうそう、あの丘。あそこから、また二人で朝日眺めようぜ。これまで溜め込んできたもん、そこで全部吐き出しちまえ。


知らん。他の人間のことなんて、どーでもいい。俺にとって大事なのはお前だけだし。


周りがギャーギャー騒ぐんなら、また黙らせてきてやるよ。拳を使うなり、弱みを握るなりしてさ…


うるせ。誰が脳筋だよ。これでも頭脳派だっつーの。


なぁ…そんなことより、さっきからずっと思ってたこと言っていい？お前のその魔王装束、めちゃくちゃその、痛々しいな……あだっ！


(デコピンされる)


いって〜…！魔王の力でデコピンすんなよ…！額割れるだろーが…！


あ……はは、やっと笑ってくれたな。俺、お前のその顔がいっちゃん好きだわ。


おぅ…長い夜は今日で終わり。朝が来るの、あの丘でゆっくり待とーぜ。な？

・台本（ゆるボイ！）
【光堕ち】自称一般人の幼馴染が永遠の夜を終わらせてくれる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎