腕利きのヴァンパイアハンターである貴女は、真祖と呼ばれる、吸血鬼の中でも特に力の強い個体が悪さをしないよう、こっそり見張っていた。しかし、彼は貴女の尾行にはとっくに気づいていたようで…？

……おーい？そこにいんのは分かってっから。いい加減、出てきな？


(彼女が出てくる)


お前、しつこいな…何？そんなに俺が人間に危害加えないか心配？


あっそう…相変わらず、信用ないねー。お前が監視役になってから俺、一回も人襲ってねえじゃん。


まぁ、それはそうだけどさ…血の匂いに敏感だし、その辺に指切ってる女子高生とかいたら、襲っちゃうかも。


はー、待て待て。今のはちょっとした例えだから。ホントに襲うとは言ってねえだろ。とりあえず落ち着け。な？


(ため息)


で？お前はどこまでストーカーしてくるつもり？まさか俺の家まで？


へー…じゃあ、もういっそのこと、俺ん家で暮らせばいいじゃん。そうしたら四六時中、俺のこと監視できるだろ？


え、なんで？真顔で拒否られるとめっちゃ傷つくんですが…


お前〜…俺のことをケダモノとしか思ってねえだろ？これだから偏見まみれのヴァンパイアハンターさんはよぉ…


てかさー、知ってる？吸血鬼の吸血って、食事ってより、娯楽って意味合いのが強いんだぜ？人間で言えば、ちょっとお菓子食べる的な。


そ。生きるのに絶対必要な行為ってわけでもねーんだわ。だから俺は、積極的に人を襲う理由がない。お前も俺にべったり引っ付いて監視する必要がない。ここまではオッケー？


……真祖、かぁ。俺、その肩書き嫌いなんだよねー。たしかに、オリジナルの吸血鬼ではあるけどさぁ…


あ、そうそう。純血の吸血鬼同士の間から生まれた子どもだからさ、俺。でも、真祖って肩書はなんか仰々しくてヤダ。俺なんか、どこからどう見ても、その辺で暮らしてる善良な一般吸血鬼じゃん？やっぱ監視する理由なくね？


あ、それとも～…もしかしてお前、俺のこと好き？好きすぎて、ストーカーしちゃう的な？


おい～…そんな全力で否定しなくてもいいじゃん。傷つくだろ？


まぁ、でも…どうしても俺を監視したいって言うなら、一番いい方法があるぜ？教えてやろうか？


(壁ドン)


お前が俺の眷属になればいいんだよ…吸血される快楽を知れば、お前だって俺から離れられなくなる。違うか？


(武器を取り出そうとする彼女の手を抑える)


やめとけ…この辺でドンパチすると、目立っちまうからなぁ。それに俺、手加減とか苦手だから、お前の柔肌を傷つけちまうと思うんだわ。女の子的にもそれは嫌だろ？


ははっ…なんとでも言え。もうお前からの罵倒は聞き慣れた。今度は俺の番ってことでいい？


(彼女の頭を胸のあたりに抱き寄せて、心音を聞かせる)


…どう？心音聞いてると、気分落ちついてこない？


もういいじゃん…無理に抗わなくて。どうせ力じゃ俺に敵わないって知ってんだろ？てか、ここまで間合い詰められた時点で、お前の負け。若い女の子が、ケダモノな男に容易に近づくもんじゃねえよ？


なぁ…俺のこと、監視してくれんだろ？だったら、一番近くで監視してくれよ…その方がお互いウィンウィンだもんな？


本気で俺の吸血鬼としての行動を抑えたいんだったら…お前が血を吸われる係になれ。そうすりゃ、俺はほかの人間に手を出さない。簡単な話だろ？


それとも…俺に吸血されるのが怖いか？ま、ヴァンパイアハンターっつっても、所詮は小娘。俺みてえな強くて怖〜い真祖様には、手も足も出ねえもんな？


はははっ…！いいね、そうこなくっちゃ…首、噛むぞ…


(吸血)


んだよ、その声…俺のこと、誘ってんのかぁ？はしたねえ女…


ま、いいや…これからよろしくな？俺専用監視係の、眷属ちゃん？


(引き続き吸血)

・台本（ゆるボイ！）
【わからせ】真祖の吸血鬼による女の口説き方
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎