朝起きたら掛け布団が見知らぬ女性になっていた。
彼女はどうやらストーカーで、彼女曰く、「あなたをずっと見守るため今日から私がおふとんになる」のだという。
彼女は布団だけでなく、あなたの全てになろうとする。

():読み方に関する指示・役の動作（効果音の発生するもの）
[]:場面指定・変更

すぅぅ、はぁぁ。
すぅぅ、はぁぁ。
すぅぅ。
ん～だいしゅきなにおいぃ……んへへぇ。

んにゃ……もう、ご主人様、どうされたんですか？

だ、誰って……ご主人様も嫌な人ですね。
私、いつもご主人様のこと守ってあげてるじゃないですか。
それなのに、知らないみたいな反応、ちょっと悲しいです。

ですから、私はいつも、ご主人様を四六時中陰から見守って、危険なことがあったらすぐ駆け付けられるようにしてあげてるじゃないですか。
まあ、勝手にやってますし、何かを要求するつもりはありませんけど、それでも、なんだか胸が痛みます。

いいです。
ご主人様が無自覚でいられるくらいお役に立てていると思えば、それはそれで嬉しいので。

あ、それで、今この状況のことですか？
これはですねぇ、ご主人様の夜間のボディーガード兼、おふとんの仕事です！

私、ご主人様をお守りしてて、前々から思ってたんですよね。
ご主人様のお家はカメラ越しに見守らせてもらってるとはいえ、私も人間で眠らなくてはいけないので、これじゃ何かあっても気付けないかもしれないし、気付いてもすぐにご主人様のところへと駆け付けられないんです。
だから、どうしても夜はご主人様をお守りするには隙ができてしまって、とても心配なんですよ。

で、気付いたんです。
私がご主人様のおふとんになれば、夜もご主人様を守ることができるって！
その、今までご主人様に気を遣わせないように陰で守るって決めてたんですけど、これを機に、ご主人様を堂々と守ってあげますからね！

ということで、今日からご主人様のおふとんは私です！
末永く、よろしくお願いします！

えっ、嫌なんですか？
もしかしてにおいですか！？
でもにおいでしたら毎日ちゃんと身体は洗ってますし、注意してるんですけど、香水とかした方がいいんでしょうか……
それとも重いですか！？
ご主人様の快適な眠りのためです、もっとダイエット頑張らないと……

えっと、違いました？
ご主人様の先程の反応からですと、もしかして、怖がらせてしまいましたか？

そ、そうですよね！
急に無断で私がご主人様のおふとんになっちゃったら、ビックリしますよね！
私、思い付きで動いちゃう癖があって、ご主人様を守るためってなったら、ご主人様が既に寝てるというのについ急いでしまいました。
驚かせてしまってすみません。

ですが、今夜以降ずっと私がご主人様のおふとんになることはお伝えしましたから、このことはもう大丈夫ですよね？

とにかく、ご主人様の大事な睡眠の邪魔になってはいけないですから、ご不満があれば何でも言ってくださいね！

やめてほしい？
やめませんよ？
ご主人様をお守りするのが私の仕事です。
ご主人様のお願いであっても、ご主人様から離れるような真似はできません。

あと、念のためお伝えしておきますけど、今までのおふとんはもう一生使わないので捨てておきました！
私以外にご主人様のおふとんは必要ありませんので！

ご主人様の唯一無二は何であろうと光栄なものです。

あっ、起き上がろうとしなくていいですからね！

私、ご主人様のためにおふとん以外もいぃっぱい、お仕事させていただきますので！
ご主人様の朝のルーティンはしっかり把握してますよ？
ですから、朝食の準備も私にお任せください！

ただ、そもそもまだ起きるには早い時間でしたよね。
私が起こしてしまったというのなら、申し訳ないのですが……
もう少しゆっくりしましょうか。
ご主人様の目覚まし時計でしたら、私がなりますから。

スマホですか？
今日から私がスマホ代わりになります。
だから、そんなものもういりませんよ？

私、ご主人様のためなら、何にだってなりますし、何だってしますよ。

本当、何だっていいんです。
おふとんだってスマホだって時計だって机だってソファーだって食器だって歯ブラシだってタオルだってトイレだってサンドバッグだって人形だって何だってもう。
ご主人様が求めてくれて、ご主人様を満たせるのなら、それが私の役割ですから。

いらないだなんて言わないでください。
ご主人様に言われるとものすごく悲しくなっちゃいます。

でも、そんなこと、まだご主人様が私を頼りにしていないから言えるだけのことですよね。
これからご主人様の生活を支えていけば、きっとご主人様は私のことを認めてくれると信じてます。

私、ご主人様の全てになりたいです！
そうしたらもう、ご主人様は私無しでは生きていけなくなるんです。
んふっ、んふふふっ。

ねえご主人様、私がご主人様の全てになったら、ご主人様は私のことだけを見てくれますか？
私さえあれば何にもいらないって言ってくれますか？

スマホもカレンダーも外の景色も、何にも見ちゃ嫌です。
ご主人様の私への視線を奪うものはみんななくなっちゃえばいいのに。

でもでも、私はちゃんと物事をよくわかってるので、何にもなしにご主人様の視線を独り占めなんてしちゃいけないってわかってるんですよ？
えらいですよね？

ご主人様が私以外を見たり考えたりしちゃうのは、私じゃ満たせないものがあるってこと。
私の努力が足りないのに、ご主人様を責めちゃいけないんです。

ご主人様の全部を私が手に入れられるのは、本当に本当にご主人様の全てを、ひとつも漏らさずに私一色にできたときだけ。

だからご主人様、私にご主人様の全部を教えてください。
全部を知って全部尽くして、全部私にするんです！

ご主人様の全部、捧げさせてくださいね？

おっと、そろそろお目覚めの時間ですね。
朝食は私が作りますから、ご主人様はベッドでゆっくりしてて大丈夫です。

あ、そうそう。
お家は元々カメラで見守ってるって言いましたよね？
だから、ご主人様の行動はわかるんですよ。
何かあったら、すぐに駆け付けてあげます。

それじゃ、出来上がったら呼びますからね。

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレストーカーはあなたの全てになってあげたい
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩