やぁ、お目覚めかい？
まだ夜だから安心して──ってそっか、君は人間だったっけ。
それなら、もう夜だけど心配する必要はないよ……とか、そっちの方が良さそうかな。
ん、ここかい？
ここは僕の家だよ、ゆっくりしていってね。
どう？僕の部屋、とってもお洒落でしょ♪
どの家具もすっごい拘っててね、君がいま横になってるベッドとかは──っていけない、話が脱線しちゃった。

話を戻すけどね、君……気を失う前の事は覚えているかい？
どうして自分がここに居るのかとか、そういうの……そっか、思い出せないか。
うぅ、我ながらとんでもない事をしちゃったなぁ……

えっとね、君が気を失った原因なんだけど……その、僕が血を吸い過ぎちゃったからなんだ。
吸血を怠って血に飢えてた僕に「不味かったらごめんね」って、抵抗もせずに血を吸わせてくれて……
おかげで理性も取り戻せたし、それにすっごい美味しい血にもありつけて……本当、感謝してもしきれないよ。

でもね、その……
本当に悪い事をしちゃったって思ってるんだけど、美味し過ぎてその……君の血を吸い過ぎちゃってね。
僕の理性が戻った頃には君、血が足りなくてその場で倒れてたの。
そのままにはしておけないから家まで連れてきちゃったけど……本当にごめんなさい！
「気にしなくて良い」って……あはは、本当、次からは気を付けるよ。

でもさ……その、驚かなかった？
いつも顔を合わせてる僕が、人間じゃなくて吸血鬼でした……って。
というか吸血鬼云々の前に、あんな理性の吹き飛んだ僕を見ても普通に接してくれるなんて、君って本当に良い人だよね。
「困ってそうだったから」って……あはは、まぁね。
実際めちゃくちゃに困ってたから、すっごい助かったよ。

あ……そうだ！
君に迷惑かけちゃったお詫びって訳じゃないけど、君のお願い……今からなんでも聞いてあげる。
あ、何でもって言っても「抱かせろ」とかそういう……
その、ちょっとえっちなお願いは要検討だけど、そういうの以外だったら何でも良いよ。

え……バトラー？
バトラーってその、お嬢様とかの傍に居るあの……？
あれを僕にやってほしいんだ。
別に良いけど、メイドの方じゃなくていいの？
いやまぁ、僕ってそういうフリフリした可愛い服はそんなに似合わないけど……まぁいいや、君からのお願いだからね。
執事服なら何着か用意があるから、すぐに着替えて来るよ。

失礼いたします……お待たせいたしました、ご主人様。
ふふ、どうだい？
自慢じゃないけど、こういう服を着こなすのには自信があるんだ。
さてさて、それじゃあ僕の素敵なご主人様？
どうか何なりと、僕にご命令を──

（お腹の鳴る音）

あー……えっと、その……
あはは～あれだけ吸ったから大丈夫だと思ったんだけどなぁ……
えっとさ、その……こんな事を頼むのは本当に忍びないんだけどね、もうちょっとだけ君の血……その、分けてもらえるかな？
追加のお礼もちゃんとするから……ありがとう、この恩は一生忘れないよ！
こほん、それじゃあせっかくこの格好をしてるんだから執事らしく……
ご主人様、首元を少々、失礼いたします。
さぁ、体の力を抜いて……それでは、頂きます。

（吸血）

ふぅ……ありがとう、とっても美味しい血だったよ♪
おっといけない、今の君は僕のご主人様だもんね。
ご主人様の素晴らしい血液を僕のような一介の執事にお恵み頂き、誠にありがとうございます。

──って、おやおや？
君、なんだかボーっとしてるみたいだけど……あぁ、血を吸われるのが気持ち良かったんだね♪
大丈夫、それは正常な反応だよ。
吸血鬼に血を吸われるのはね、とっても気持ちの良い事なんだ。
貴重な経験だし、今はその快感に身を任せちゃっても良いんじゃないかい？
その間、僕は君の……とっても可愛いご主人様のお顔を拝謁させて頂くからね♪

さぁご主人様、この世のどんな物よりも素敵なそのお顔……もっと近くで、僕に見せておくれ？

・台本（ゆるボイ！）
【吸血鬼/ボーイッシュ】イケメンボクっ娘吸血鬼のピンチを救ったお礼に執事コスでおもてなしをしてもらったら……
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹