兄さん、これ。……そ、お弁当。今朝、朝練で慌てて出てったでしょ？その忘れ物。

ん、別にいい。それじゃ、わたしはこれで。

なに？……次からはもっと目立たないところで渡してくれって、なんで？どこで渡そうが一緒でしょ？

目立つ？わたしが？……そう。けどそんなの知らない。

なんでわたしが目立つのか知らないけど、わたしが実害を被るわけじゃないし、いちいち場所を選ぶのがめんどくさい。

それじゃ、友達待たせてるから。じゃあね。



おかえり。夕飯、もうすぐできるってさ。

ん？あぁ、別にいいよ、そんなの。お弁当届けただけで、大したことしてないし。

なに？……あぁ、今日は特に何も予定ないから早く帰ってきた。

彼氏とのデート？ないよ、そんなの。だってもう別れたし。

なんでって、なんか思ってたのと違ったから。それだけ。

うん、最初は兄さんと似たタイプだと思ってたから、それだったら付き合ってもいいかなって思ったんだけど…

そ、付き合ってからなんか兄さんとは全然違うなってわかったから。だから、わたしの方からフった。

別に……向こうもそれなら仕方ないかぁって感じだったし、あっさり別れたよ。

まぁたぶん、他に好きな子でもできたんでしょ。知らないけど。

そこで兄さんがなんでわたしの将来を心配するのかがわからないんだけど…

あ、ご飯できたって。行こ。

あ、着替えまだか。とりあえず着替えてリビングに来なよ。



洗面所空いたよ。どーぞ。

え、なに？さっきの話の続き？何の話してたっけ？

あぁ、彼氏と別れたってやつね。

あれ、その話もう終わったんじゃなかったっけ？

あぁ、なるほどね。わたしのタイプが兄さんみたいな人ってのが気になるんだ。

ホントは恋愛なんてそんなに興味ないんだけど…

もし付き合うなら、兄さんみたいなのがいいなって思っただけ。

うん、努力家で真面目で、いつも何事にも一生懸命な兄さんのことは尊敬してるし、すごいなって思ってる。

これから勉強するんでしょ？ほら、これ。頑張ってる兄へ妹からの餞別。

うん、そのシャーペン、今使ってるのよりだいぶ使いやすいと思うよ。

じゃ、勉強頑張って。わたしは先に寝るから。おやすみ。



おはよ。相変わらず朝早いね。

わたし？昨日早く寝たから早く目が覚めただけ。

ほら、お母さんが前日に作ってくれた弁当。今日は忘れちゃダメだよ？

わかってるならいいけど………ん？いや、わたしも出かけるから準備してるだけ。

あ、兄さん。途中までチャリ、後ろ乗っけて。

そう、ニケツ。別にいいでしょ？

わかった、すぐ準備する。ちょっとだけ待ってて。



え、なに？……あぁ、休日なのにこんな朝早くに出かけるのも不自然か。

その辺の河原で風景画描く。だからスケッチブックと鉛筆持ってきた。

むしろ休日にしかできないでしょ、こんなこと。

えと、それは……たまたま早く目が覚めたっていうのと、あとは、兄さんと少しでも長い時間を過ごしたかっただけ。

ねぇそれ、わたしのこと馬鹿にしてる？

あぁ、そう…わたしが美人かどうかなんて、どうでもいいんだけどさ。

うん…告白なら結構されたことある。例の彼氏以外は全部断ったけど。

告白された回数？そんなの忘れた。っていうか、いちいち数えてない。

そういう兄さんこそ、告白されたことないの？

そっか。世の中の女の子って意外と男を見る目ないんだ。

うん、だって兄さんみたいな何事も一生懸命頑張ってる人を放っておくなんて、周りがどうかしてる。

たしかに兄さんはそんな目立つタイプじゃないけど…部活も勉強も陰で頑張ってるし。

あ、そっか。周りがどうかしてるんじゃなくて、単に兄さんの努力が人の目につきにくいだけなのか。

大丈夫だと思うよ。いつかは誰かが兄さんのことをちゃんと理解してくれる。

少なくともわたしは兄さんのこと理解してるつもりだし。

ん…どういたしまして。そろそろこの辺でいいよ。下ろして。

ありがと。兄さんも部活頑張って。いってらっしゃい。



おかえり。ご飯できてるから食べていいよ。

そ、わたしが作った。お腹すいたでしょ？

どういたしまして。とりあえず手洗って着替えてきたら？その間にご飯、レンジであっためとくから。



そう。美味しいならよかった。

食器、あとで洗っとくから適当に流しに付けといて。

あ、そうだ。兄さん、これ。

うん、漫画。兄さんが読みたいって前言ってたやつ。

友達から借りてきた。読んでいいよ。汚さないようにね。



兄さん、そういえば……って寝てる。まぁ部活で疲れてたみたいだし仕方ないか。

毛布は……あった。これでもかけとけばいいか。

兄さん、いつもお疲れ様。たまには肩の力抜いて休みなよ。おやすみ…

・台本（ゆるボイ！）
クールで美人な妹との日常
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎