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二人だけの仮想世界
written by 夜木嵩
  • 幼なじみ
  • ヤンデレ
  • 切ない
公開日2021年07月27日 16:55 更新日2021年07月27日 16:48
文字数
3043文字(約 10分9秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
幼馴染
視聴者役柄
少年
場所
仮想世界
あらすじ
目が覚めた時、そこは幼馴染の作った世界の中だった。
元の世界に帰れないと知り絶望するあなた。
しかし、やがてそれが狂気的な切実であることに気付いてしまう。
本編
「おはよう。
そしてようこそ、私の世界へ。

ごめんね。意味が分からないよね。
目が覚めたら見知らぬ空間にいて、自分の部屋で一人寝たはずの君の目の前に私がいる。
そのことへの細かい説明は後にして、まずは私の聞くことに答えてほしい。
一方的になっちゃってごめんね?

最初に、身体は自由に動くかな。違和感さえなければ大丈夫。
あと、痛みは感じるかな。ちょっと頬抓るよ。
痛い? それなら問題はないみたいだね。

あともう一つだけ……私のことはちゃんと覚えてるよね。
幼馴染で隣に住む同級生、どこへ行くにも一緒のしつこい奴、か。
多分、記憶の面でも異常はなさそう。
ただ、しつこい奴とは言わなくてもよかったと思うけど。

私はしつこい奴なんかじゃないよ。
ただ君のことが好きで一緒にいたんだから、気付いてほしかったな。

そうだよ。君の遊ぶ時にはもれなく私もついて行って、女の子なのに泥だらけで帰って親に心配されたりもしたんだけど、それでも君と一緒にいられることが幸せだったんだ。

なんて、それも今では過去のことだけどさ。
君も私の好意より私たちの置かれている状況のことを気にして、どうでもよさそうに聞いてるみたいだし。
わかったわ、そのことを教えてあげないと私の恋心も届かないみたいだから。

さっき、君には体が動くか、痛みを感じるか、記憶はあるかを確かめてもらったよね。
記憶や運動はともかく、痛みなんて普通は確かめる必要なんてないはず。
これで何となく察することがあると思うけど、ここは違う世界なの。
眠っている間に君をこの世界に連れてきちゃったんだ。

それで、気付いている通りすべては私が仕組んだことなんだ。
君がここにいることだけじゃなくて、この世界の存在だってそう。
傲慢な言い方をしてしまえば、私がこの世界の神ということになる。
創造主でありなおもホストとしてのありとあらゆる権限を持っているの。

そう言われてもしっくりこないよね。
試しにひとつ、マジックをしてみようか。
タネも仕掛けも大有りだけどね。

今、後ろには君が目覚めたベッドがあるでしょ?
床に寝かせるわけにもいかないから、君の部屋のベッドごとこちらに持ってきたの。
だからそのベッドは君の見慣れたもののはず。

それが、私の手にかかれば……はっ!
ほら、見た目で分かるくらいの高級ベッドに早変わり。
どうかな? 私、ここではこんなことが出来るの。
ちょっとプログラムを書き換えるみたいな感じでこの世界を自由に作り変えられるんだ。
君は何か、要望とかある? 多分、何でもできるけど。

他の人……?
あー、ごめんね、そればっかりは元の世界から呼ばないといけないから出来ないや。
それに、私は二人きりのままがいい。
君と一緒にいたいから、君だけをここに連れてきたのに。

他ならいろいろと出来ることもあるよ。
例えば、今ここは真っ白で何もない空間だけど、このベッドに合わせてここをお金持ちの部屋に変えたり。
はいっ!

どうかなどうかな? すごいでしょ!
ここでずっと暮らしていくには何の心配もないよね!

あ、言ってなかったね。
元の世界にはもう、帰れないんだ。
私がその権限を持っているから、システムとしては君を帰すということは可能だけど、私はそんなことしてあげない。
独りぼっちは嫌だから。

君を元の世界に帰してはあげないけれど、元の世界より満ち足りた暮らしを約束するつもり。
不満なんて感じさせる隙さえも与えてあげないんだから、ずっとここで一緒に暮らそ?

そんな、帰りたいだなんて言わないでよ。
帰さないから。君を私で満たして、元の世界なんて忘れてしまえばいいんだよ。
ここでは君の嫌いなもの全てから解放されるんだから。
ただ、私と愛し合うだけで生きていける。
ね? 元の世界のありとあらゆる苦痛を思い返せば、ここでの暮らしの方が絶対にいいはずだよ?

もちろん君と二人きりになったからには、人目も気にせず何だってできるし、ちょっとは私の好きにさせてほしいな。

ねえ、私がそう言ったらなんで後ずさりしたの?
私の好きにするって言葉、そんなに怖いかな?
痛いことなんかしないのに。

あ、そうそう、この部屋、扉付けるの忘れちゃったから出られないよ。
これでますます私の思い通り、君を目の前にして妄想が捗るなあ。
ねえ、今夜は何しようか……って、この世界に昼も夜もないんだけどね。

こーら、逃げないの。
どれだけ出口を探したところで、この部屋を作った私が出口はないって言ってるんだから。
その窓も開かないよ? そこ、花瓶あるから気を付けて。
おーい? 聞いてる?

どう……したの? そんな悲しい顔で私を見つめて。
……花? そこにあるマリーゴールド?
特に、おかしなことはないと思うけど……

……もしかして、思い出しちゃったのかな。

そうだよ。その花、君がくれたものなんだ。
黄色のマリーゴールド、花言葉は健康だって君は言ってたね。

だけど私には、悲しみにしか映らなかったよ。

ううん、違うよ。君の気持ちとして花をくれたことはとても嬉しかったの。
でも、その時にはもう私はどうにもならないほどに病魔に蝕まれていた。
はっきり言って、助かる見込みはないってもう知ってたの。

君がどんなに思いを届けて、回復を願ったところで、私はそれに応えることが出来ない。
病室の窓辺に置いたそのマリーゴールドが私に生きてと咲いている、その哀れさに私も私に失望してたんだ。

ただの幼馴染の二人でいたかったからその記憶は消しておいたんだけど、君のくれたマリーゴールドはどうしても置いていけなくてね……。

そして、君だって置いていきたくなかったの。

そもそもこの世界を生み出した理由は元の世界の私が死んでしまうから。
代わりの世界を自分で作り上げて、死のない世界へと逃げ込むことにしたの。
プログラムでできた仮想世界なんだけれど、そんな感じ、一切しないでしょ?

多分、それが私の元の世界への未練なんだろうね。
当然ここに来るまでの私は生きていただろうけど、今頃はどうだかわからない。
時間は同じように進むみたいだから、君と違って戻る体を失ってるかもしれないね。
君も、戻る権限は私が持ってるから、私と同じで帰れないんだけどね。

どうしてこの世界に人を作らなかったのか?
それには、そうするしかなかったわけと、そうしたわけがあるの。
単純に、元の世界の私に人をプログラム出来るほど時間がなかったというのがひとつ。
そして、どうしても私は君と一緒に生きていたかったの。

君を連れてこなければ私は独りぼっちの何もない世界。
元の世界の全てを置き去りにして、ありのままの虚無の孤独を享受するだけの永遠でしかなくなってしまう。
それじゃ結局死んでいるのと同じだと思わない?

でも、そこに君だけを連れてきた今、この世界には君と私しかいない。
私は君だけを見ていられる。
君は私だけを見ていてくれる。
それだけで二人は記憶を刻める。世界が生まれる。生きてるって言えるんだ。

どうせ世界を作れるのなら、私の望む世界にしたかったから。
私のわがままに巻き込んじゃって、ごめんね。

謝ったところで、君はここから帰さないし、ここでは愛し合うぐらいしかすることがないんだけどね。
でも安心してほしいな。この世界では私も君もずっと生きていられるから。

はぁ、こうして重くなるから私の病気の記憶を君から消したんだけどなあ。
でもいいや。ここでの私たちは永遠だから、君と笑い合える日も愛し合える日も必ず来るよね。

ほら、忘れよ? 元の世界のことなんて、もう関係ないことだよ。
この新しい世界で、二人だけの幸せを築いていこうよ。終わらない幸せを」
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
二人だけの仮想世界
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
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