キャラクター

ローラ（以下Ｌ）ヴァンパイアハンター。見せ場は冒頭のどっちが悪役かわからないくらい下衆なところ

エイミー（以下Ａ）ローラの幼馴染で今はヴァンパイアの一味。一見かわいい子ちゃんだけど徐々に野望を見せてくる後半が見せ場

【Ａ】
喉が渇いた

痛い……痛いよ……
腕が痛いの
ちょっとだけこれはずしてよ、ねえ
ちょっとだけでいいの
ねえ痛いよ、死んじゃう


【Ｌ】
しおらしくしても無駄だよ
ヴァンパイアがその程度でくたばるもんか

ほら、欲しいのはこれだろ

人間の血は用意できないから、家畜の血だけどね
新鮮だし、ないよりマシだろ

ああ、やっぱり欲しいんだ？

（血を少しずつ捨てる）


【Ａ】なにするの？


【Ｌ】
さあほら、はやく知ってることを言うんだよ
じゃないと残りもみーんな排水溝に吸い込まれちまうよ
もったいないねえ


【Ａ】　やめてよ・・・


【Ｌ】
そんなに欲しい？
じゃああげるよ、ほら

・・・・・
おっと失敗した　床にこぼれちまったね
だめじゃないか、ちゃんと口を開けとかなきゃ

もっと舌を出して

ああ、また失敗した

あたしの手が汚れちまったよ
舐めて

（舐める）

おっと、噛みちぎるんじゃないよ


【Ａ】　もっと・・・もっと！


【Ｌ】　吸血鬼のアジトはどこだい？


【Ａ】　・・・・・・


【Ｌ】
まあそう簡単には言えないよね
昼間に隠れ家を襲われたらひとたまりもないからね

けどあんたもたいがいしぶといね
ここへ来て何日になる？
アジトの場所さえ教えれば、幼馴染のよしみであんたの命だけは助けてやろうって言ってるのに

そんなに仲間が大事か？


（髪の毛をつかんで痛ぁ！とか何かやる）


【Ｌ】
あんた変わってないね、エイミー
この髪、この顔、全部最後に見たあの頃のままだ

まるでこっちが悪いことをしてるような気になるじゃないか
こんな子どもみたいな女の子をいじめてさ

あんたを見てるとあの頃を思い出すよ
なつかしいね
おぼえてる？
あたしたちが育った修道院の裏手の墓地でさ
よくかくれんぼして遊んだよね

シスターに見つかって怒られたっけ
死者の眠りを妨げてはならないって

あの頃は、そんな穏やかな日々が永遠に続くと思ってた

ほら、満月の晩に二人でこっそり抜け出して時計台にのぼってさ
約束したよね　大人になってもずっと一緒に居ようって

なのにあんたは、あの女にたぶらかされてヴァンパイアになった

それがあたしへの最大の裏切りだってわかってたはずだろう
あたしがどれだけやつらを嫌ってるか知ってたくせに
あたしの両親と弟はあいつらに殺されたんだよ


【Ａ】
前から嫌いだったのよ
あんたのそういう未練がましいとこ

頑固で融通が利かなくて
いつも自分だけが正しいみたいな顔してさ

忘れろとは言わないけど過去は過去じゃない

あの頃あたしには、あんたしかいなかった

今目の前にいるあたしを見てほしかったのに
あんたはいつだって違うものを見てた
違うことを考えてた

あの時あたし言ったじゃない
闘うことなんて考えないで、あたしと二人で平和に暮らそうって
あんたの悲しみはあたしも一緒に背負うから、支えあって生きていこうって

なのにあんたはヴァンパイアハンターになるって言ってきかなかった

あんたはあたしより死んだ家族への復讐を選んだ

先に裏切ったのはあんたの方じゃなかったの？


【Ｌ】
違う、違うよ
エイミー、あたしは

あたしは強くなりたかったんだ
両親を殺された時みたいに、いつかあんたを失うのが怖かった

ハンターになればあんたを守れると思ってた
失わずに済むと思ったんだ

あんたの、その不吉なくらい美しい顔を見るたび不安だったよ
いつかよからぬ輩に目を付けられるんじゃないかって

けっきょくその通りになった
けどさ、よりによってヴァンパイアになるなんてね


【Ａ】
なっちゃったもんは仕方ないでしょ
ねえ、過ぎたことよりこれからのことを相談しない？

うわさくらい聞いたことあるんじゃない？
あたしはボスの右腕だって

これは極秘情報なんだけど
ボスはもう高齢なの　だいぶ力が弱ってきてる

でもあたしの力はどんどん強くなってる
不思議よね
あたしがこんなふうになるなんて
闇に落ちた時の魔力の強さは
人間だったころの身体の強さとは関係ないものなのね

今じゃあたしが次のボスになるのも時間の問題

そうなったらどうなると思う？

あたしのことは泳がせといた方があんたのためよ

あんたに便宜をはかってやらなくもないんだからさ

簡単な話よ
あんたは今まで通り英雄ごっこをすればいい
まあ、雑魚くらいいくらでもくれてやるわ

みんな今まで通りあんたに感謝するし
報酬だって今よりもっと手に入る

まずはあんたの評判を高めるのね
それからあたしたち吸血鬼が
金持ちを選んで襲って、あんたを雇うように仕向けてさ
ちょうどいいところで手を引いてあげる
まるであんたが追い払ったみたいにね

昔と同じよ　
あたしは勇ましいあんたの引き立て役
ただほんのちょっと役柄が変わるだけ

だけどね、あんたも肝心なところは見逃してくれなくちゃ
それでおあいこでしょ


【Ｌ】
あたしに吸血鬼と裏取引をしろと？
ばかにするな


【Ａ】
昔とちっともかわらないのはあんたの方だわ

そっちこそいい加減大人になりなさいよ
いつまでわからないふりしてるつもり？

世の中ってのはね、バランスで成り立ってるの
何事もやりすぎはだめ　深追いはだめよ
ちょうどいいところで手を打って、うまく立ち回らなきゃ

それにね、もう取引は始まってるの

あんたと仲間たちが海辺の隠れ家に乗り込んできたことがあったでしょ
あんたたちはこっちの数を正確に把握していなかった
地下道で崖の洞窟と繋がっていることも知らなくて
圧倒的に不利だったわ
実際あんた以外のハンターは全員死んだ

疑問に思わなかったの？
どうしてあんただけ生きて戻れたのか
本当に運と実力だったと思ってる？
うぬぼれるんじゃないわよ

先行投資だったのよ、あれは

ハンターはどうせまた次々と現れる
ヴァンパイアも仲間を増やす
この戦いはまだまだ終わらない

だったらせいぜいうまくやりましょうよ

あたしがあんたを、うまいこと活躍させてあげるっていってるの
あんたにぴったりでしょ　まるで伝説の女騎士みたい

飾り物の救世主だっていいじゃない
それで人間どもが喜ぶならさ

あんただっていつまでも若くないのよ
適当に駆除するふりして一財産ためこんで、いい加減なところで引退したら？
あたしが協力するって言ってんのよ


【Ｌ】

吸血鬼狩りは金儲けの道具じゃない！


【Ａ】
ローラ　あんた本当にばかね

人間との取引は今に始まったことじゃない
あたしたちはずっと昔から
人間たちの組織とひそかに結びついて利用し利用されてきた

ハンターだって人の組織である以上同じことよ
きれいごとだけじゃやってけないの

だけどね、ローラ
昼と夜は二つで一つ
両方あるからこそうまく回るんだと思わない？
あたしがあんたの、夜になってあげる

他の誰にそれができる？

あんたの唇なんか　身体なんか
喜んでそこらの男に譲ってやるわ
でも忘れないでね
本当にあんたの命を握ってるのは
ヴァンパイアの中枢にいるあたしだってことを

ねえローラ、あたし
あたしは今でもあんたを・・・


（電話が鳴る）

【Ｌ】
・・・はい
わかりました　すぐに向かいます

Ｌ
仕事ができたみたい
あたしは出かけるけど、血の瓶はここに置いておくよ
手が届きそうで届かない距離ってそそられるだろう？
動けもしないくせに、強がって御託並べていられるのも今のうちだよ


（数時間後）

【Ｌ】
遅くなったな　様子見てくるか

・・・！　扉が壊されてる

やっぱり・・・逃げたね

近くに仲間がいたのか？
どうやってこの場所を・・・
尾行された？
もしかしてあいつの言う通り、もうすでに組織の中にスパイがいる？
いや、まさか


エイミー・・・

あんたが去ったあの日から、
一度も忘れたことはなかったよ
やっと探し出して捕まえたのに
けっきょく殺せなかった

殺してくれと言うんじゃないかとどこかで思ってた
でも違った
あたしの予想を超えるやり方で、あんたは・・・

・台本（ゆるボイ！）
【声劇】ドＳヴァンパイアハンター×ヤンデレ吸血鬼【２役/二人用】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
クリスらびっと