鬱病治療のため、最新式の手術をすることになった若い天才外科医...
実は彼女は、あることからあなたに恨みを持っていた！

聞こえますか？

気分はどうですか？

ああ、そうでしょうね
でも安心してください
手術は成功しましたよ

ええ、無事あなたの脳に電子制御チップを埋め込みました
あなたの勇気に感謝します
あなたが被験者としてこの新しい治療法に協力してくださったことは
決して無駄にはしませんよ

まずはゆっくり休んでくださいね
私が必ず、完治までサポートします

おやすみなさい....

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（翌週　病院の庭）

こんにちは　

気分はいかがですか？

そうですか　それはよかったです

ああ、気分がよくなったからといって無理はしないでくださいね

脳に電気チップを入れる手術ですから....
一度切開していますし
くれぐれも当分は安静に
ゆっくり元の生活に戻していきましょうね

はい？
どうかしましたか

私の顔が何か？

綺麗？私が？
いえ、そんな....

でもよかった
何かを好ましいと感じるのも
他の人間に興味がわいてくるのも、健康の証
脳が順調に回復している証拠ですよ
このぶんなら....

何ですか？
なにかおかしなことを言いました？

....もしかして、拗ねてます？

....ありがとう
（綺麗と言ってくれて）嬉しいですよ

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（数週間後　夜のロビー）

おや？どうしました？
こんなところで....

ええ、今日は宿直なので朝までいますよ

眠れないんですか？

昨日から食事もあまり食べていないようですが
何か心配事でも....？

もしよかったら、少しお話しますか？

ついてきてください

（扉を開ける）

....仮眠室です
ここなら二人だけですよ
普通は患者さんは入れないんですが

あなたは特別だから

いえ、なんでも....

でも本当に良かった
オペの後、順調に回復してもうすぐ退院
最新の治療ですから不安もあったでしょうけど
よく協力してくれました

この調子なら、すぐにも日常生活に戻れそうだったのですが
また調子を崩してしまうのは心配ですね
気がかりなことがあるなら何でも相談してください

どうしたんですか？

退院したくない....？

私と離れたくないから....？

何を言ってるんですか
私はどこへも行きませんよ
今後も定期的に通院してもらい、経過を見守ります
私はこれからもずっとあなたの主治医ですよ

どうしたんです
そんなに取り乱して
泣かないで

震えてるんですね

大丈夫ですよ
さあ、ここに横になって
私はどこへも行きませんから。ね？

....
あら？
どうしました？
もしかして....感じてしまったんですか？
ほんのすこし撫でただけで？

なんて淫らな患者さんなのかしら
泣いたかと思ったら今度はそんなふうに誘うような目をして....
気持ちいいですか？
こんなところが？

感情があふれて止まらない？

ああ、そうでしょう
味わったこともないような気分でしょうね

ふふふふふ
ああ、おかしい
おまえは本当にかわいらしいのね

まだわからない？

まさかとは思ったけど、
おまえ本当に私を覚えていないの？

中学の時同じクラスだった山本よ
安心して　今でも独身だから
両親が離婚して苗字が変わっただけ

ねえ....もしかしてあのことも忘れてしまった？
２年生の２月１４日　おまえに告白の手紙を書いて渡したわね
おまえはそれを仲間に見せて、みんなで笑いものにしてくれたっけね

ようするに、当時からおまえはどうしようもない愚か者だったのよ
一時の感情に流されては
はしゃいで浮かれていらぬ敵をつくって
今じゃ、このありさま

確かにあの頃はちょっとばかり人気者だったけど
それは周りも中学生だったからよね

でもまさか　あのころがおまえの人生の最盛期だったとはね
その後は芸能人の真似事なんか始めて
失敗して病んで
あげくは薬漬けのうつ病ですって
ああ、頭の悪い人間ってのは本当にどうしようもないわね

でも、これでおまえにもわかったでしょう？

確かにあの頃の私には
おまえが好むような可愛らしさも華やかさもなかったかもしれない
生意気に成績だけはいいけど、ただそれだけの地味で魅力のない女
そんなふうに見えたんでしょうね

でもね　子どもの頃ならいざ知らず
女が女になるためにはお金がかかるものなの
栄養ある食事　綺麗な服　エステに美容室にヨガサロン　
今の私の収入ならたいがいのことができるのよ
現におまえだって、私が誰だかわからなかったくらいじゃない

それにくらべて、おまえやおまえの可愛らしいお仲間たちはどうなったのかしら？
お歌にダンスですって？
ふん、そんなもので成功できる人間はごくわずか
砂の山の一粒にすぎないわ
その他大勢はどれだけ努力してもただ地面にこぼれて、落ちていくだけ

でもおまえは運がいいわ
だって今から私のものにしてあげるんだから

今日から　いいえ、正確にはあのチップを移植した時から
私がおまえの主人よ
これから私のうちでおまえを飼ってあげましょう

あら、怒ったの？　それともおびえてる？

（部屋から出ようとする主人公に）
いいわ　行きなさいよ

でも　このことを誰かに話そうとしてごらん
人に助けを求めようと思っただけでおまえの気分は不幸のどん底
まともに口をきくことすらできなくなるから

それにね　簡単に病院を変えることなんてできないのよ
電気チップによる神経制御の鬱病治療を実践しているのは
日本ではこの研究所ただ一つ
この治療法に最も精通しているのもこの私なのよ

ここがいやなら海外にでも行くしかないけど
おまえにそんな財力があるはずもない
今回治療を受けられたのも新しいプロジェクトの被験者になったからだもの

つまりね　おまえの鬱病治療にはどうしても私が必要なの

それに、おまえだって気付いてるでしょう
私から離れられない理由はそれだけじゃない

おまえの脳に埋め込んだ制御装置
少し細工がしてあるの

この制御チップが電気刺激によって幸福感を操るものだってことはおまえも知ってるわね

だからこそおまえの鬱も治ったし
そして今は私に恋をしてる

変だと思わなかった？

手術の後から急に私を意識しだして
私の姿を見るだけで嬉しくなってしまう
ほんの少しやさしくされただけで一日中幸せでいられる
それどころか、罵られても蔑まれても淫らな陶酔感が止まらない
顔を見ればわかるわ
怒るふりなんかしても無駄よ

ねえ、なぜだと思う

そうね、理屈はなんとでもつけられるわ
私が主治医だから
親身になって自分を治そうとしてくれたから好きになったと
でもそんなものは全部、後付けの言い訳よ

おまえが感じるすべての快楽、幸福
そのカギを握っているのは私の存在
おまえの脳の電気チップがそうさせているの
だってその制御盤は私がおまえ専用に調整した特別製なんだから

ふふふ....
なぜこのことを知らせたかわかる？
騙したままじゃ簡単すぎてつまらないから
抵抗し葛藤するおまえが見たかったのよ

たとえ頭では理解しても、おまえは自分の感情を止められない
いやというほど知ってるはずよ
どれだけ意思を固めても、自分の体に裏切られるその感覚
朝起きるべきだとわかっていてもどうしても体が動かせない
勝手にあふれてくる涙　止められない悲しみ
やるべきことができない
反対にいけないとわかってもやってしまう
ああ、つらいわよねえ

そう　人の意思なんて脆いものよ

いまだってそう
退院が近付いて私と離れると思っただけでおまえは
食事ものどを通らない　夜も眠れない　そのうえ泣きだすほど動揺して
少し触られただけでも快感で意識が飛びそうになる
みじめだわね

そう、これはあのとき私をあざ笑ったおまえへの罰よ
でも興味深い実験でもあった
おかげで私の仮説は完全に証明されたわ

大丈夫、壊れたモルモットでもいいの
責任をもって飼ってあげる

これからは私だけを愛し、私だけに服従するのよ
私のそばにさえいればおまえの心はバラ色
でも離れたら　神経マップがおまえを地獄に突き落とす
選択肢はないの
おまえの脳にチップがある限り私に逆らうことなんてできないんだから

さあ、わかったらもう一度ここへいらっしゃい
いい子にするならもう少しだけご褒美をあげる
力を抜いて
ただその感覚に身をゆだねればいいの
そう、そうよ、いい子ね　もう泣かないで

痛いことなんかしないから大丈夫よ
だっておまえの身体は
チップのせいで私からの刺激にすごく敏感になってるんだもの
一度にいろいろ試したら本当に死んでしまうかもしれない
ゆっくり少しずつ慣らしてあげる

さあ、目を閉じて

ほら、幸せになるのなんて簡単でしょう？

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレ病棟～脳外科医に快楽制御チップを入れられてしまう～
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
クリスらびっと