冬休みで故郷の島に帰省したあなた。幼馴染のガレージに立ち寄ると、そこにいつものように彼女がバイクの手入れをしている

....あ、今年も戻ってきたんだ？

おかえり

元気だった？
東京は寒かったろ

今回はゆっくりできるの？

こっちはあいかわらずだよ

父さんと母さんなら出稼ぎでいないよ
武郎が本土の大学行きたいって言いだしてさ
学費稼がなきゃいけないからな

ああ、うん、おばちゃんも元気
そうそう、
最近ネットの口コミでちょっと有名になってさ
うちのおばちゃん霊感がすごいからって
全国各地から人が相談に来るようになったんだ

ぼくもいい加減手伝いに来いってうるさいんだけど....

うん、きみも昔からそう言ってたよね
でもさ、ああいうの興味ないんだよね

おばちゃんのこと信じてないわけじゃないんだけどさ
しょうがないよね、ぼくには見えないんだから

あ、ねえ、そこのレンチとってよ

よし、点検終わり

ねえ、今時間ある？
ちょっと出かけよっか

（ガレージの外に出て二人乗りする）

乗った？

しっかりつかまってなよ！

（発車）

ひさしぶりだね
こうやってきみと走るの

え？なに
そんなスピード出てないよ
平気平気

（バイクを降りて歩いている）

ほらあそこ、
ほら、ぼくたちが秘密基地つくった場所だよ
覚えてる？

ねえ、丘の上に行こう
こっち

....
ふう、いつ見ても
ここからの眺めは最高だね

（缶コーヒーを出す）

コーヒー、半分こしよ？

....幸せだな

きみがこうして
ずっとぼくのそばにいてくれたらいいのに

ねえ、もうあっちに戻るのやめたら
ずっとここにいなよ

そうだ、一緒にバイクで旅行しようよ
二人でいろんなとこ行ってさ

飽きたらまたここに戻ってきて
きみはずっとぼくといっしょにいればいいよ

ずっと相棒だったじゃん
なんでだめなの？

そばにいてくれたらなんでもしてあげるのに

....うん、毎年言ってるかもね
何度でも言うよ

だって　きみだってこうしてまた戻ってきてくれるじゃん

遠くへ行っても
ぼくのこと覚えててくれてありがとう
大好きだよ

....知ってるよ　前にもきいた
東京で付き合ってる人がいるんだよね

でもさ、そんなのもうどうでもいいんだよ
だって....

ねえ、わかってる？
きみをわかってあげられるのはぼくだけなんだよ

（頭をなでるか何かした）
うーん、もう　子ども扱いしないでよ
ぼくもう大きいんだよ
きみがいなくなってる間に、こんなに大人になっちゃった

（立ち上がって歩き出す主人公）

どこ行くの？

え？　松野路のほうに行きたいの
なんで？

だめだよ　あそこは
ここからじゃ遠いし
反対方向だろ
もう遅いから帰ろうよ

そうだ、ぼくの部屋においでよ
きみが好きだったエビグラタン作ってあげる
新しいゲームもあるからさ、そうしよう、ね？

待って　待ってよ

歩いてなんか行けるわけないだろ
わかった　一緒に行くよ
乗せて行くから

いいよ
相棒だろ

（目的地に到着）

もういいだろ
ここ、何もないし
ねえ、もう帰ろうよ

違う....違うよ
きみは何も忘れてなんかいないよ

きみが思い出すべきことなんか何もないよ

待って！

（急に走り出した主人公を追いかけて行って、追いつく）

....どうしたの
うん、そう
きみの家のお墓だね

お参りしたからもういいだろ
もう行こう

だめ！
だめ、思い出さないで

思い出したらまた消えちゃうから
行かないで
置いていかないでよ

（主人公、消滅していく）

またいなくなっちゃった

くっ....
何度呼び戻してもだめ
きみはまたすぐに自分の死を思い出して
受け入れて消えていく

少しは未練とかないの？
会いたいのはぼくだけ？

ふふふ....
あきらめないよ
きみをつなぎ留められるのはぼくだけ....

次こそは....

ぼくひとりの力でだめでも、たとえ人ならざる者の力を借りても....！

どこへも行かせないよ

ぼくが生きている限り　成仏なんかさせない....

・台本（ゆるボイ！）
【ヤンデレバイク】海辺の町に戻ったあなたを待っていた幼馴染【ボイスドラマ台本】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
クリスらびっと