盗難の疑いをかけられ捕まったメイドのあなた。
取調室にあらわれたのは、学園時代の級友だった....

（廊下を歩いてきて、見張りの人に声をかける）
ご苦労様....

（部屋に入る）

あら、見覚えのある名前だと思ったらあなただったの

私、覚えてる？
セント＝ブランリリー高等女学院で同じクラスだったわね

でも、あなたは卒業を待たずに学期の途中で退学していった

ええ、知っているわ
お父様の事業がうまくいかなくて
屋敷を手放すことになったのよね？

てっきりもうどこか外国で暮らしてるのかと思ってた...
フォルトール伯爵家のメイドになっていたとはね

ねえ、あなたの雇い主って
ルイーズ・フォルトールのお父様じゃないの？

ふーん
それじゃ今あなたあの人の屋敷で暮らしてるのね

私？私は見てのとおりよ
祖父が刑務所長なの
父も母も役人なのよ

奇遇ね　こんなところで再会するなんて

大丈夫よ　落ち着いて
私も仕事だから
あなたの無実を証明するとしても
まず手順を踏まなきゃ

荷物検査は済んでるわ
後で返してもらえるでしょう

これから私がいくつか質問させてもらうから

わかってる　さっきの人に全部話したのよね
でも繰り返して質問する決まりなの

あなたが本当に何も盗んでいないなら
何度きかれても破綻なく同じが話ができるはずよ
そうでしょ？

ああそれから、身体検査もさせてもらうわ

上着を脱いで

そこの壁の前に立って　
後ろを向いて　両腕を開いて

髪をほどいてもらえる？

ごめんなさいね　たまにいるのよ
こうして結い上げた髪の中に何かを隠してる人

きれいな髪ね
いい匂い
あら、これどうしたの
首筋のところに...　
痣？いいえ違う　赤くなってる
何の痕かしら
痛いの？

虫刺され？
ふーん、まあいいわ

向きを変えて
壁を背にしてこちらを向いて立って

失礼　口を開けて
中、少し触るわよ？
嚙まないでね

....そうね、問題ないわ

次はここ...

ああ、動かないで

ごめんなさいね　たまにいるのよ
こういう胸のところに何かを隠してる人

本当はこんなことしたくないの
でも仕方ないでしょ　仕事なのよ
昔の学友だからって特別扱いはできないの

どうかした？
恥ずかしがることないわよ
私にとってはいつものことなんだから

あなたには想像もつかないでしょうね
どんな連中がここへ来るか
娼婦に盗人に詐欺師....

そんな顔をされると
新鮮で嬉しくなっちゃうじゃない

いいわ
次はその台の上に横になって

膝を立てて　左右に開いて

（つま先だけ開いて膝はくっついてる）

違う、こうするのよ、ほら！

ごめんなさい　
でもね、こういうところに隠す人もいるのよ

スカートを持ち上げて、自分で持って
ほら、ここにランプを近付けるから
しっかりスカートを抑えてないと
火が燃え移ったら大変でしょ

ねえ、脚を閉じたら調べられないでしょ

どうしたの？そんなに真っ赤になって
私が知り合いだから気まずい？

困ったわね　今日は女の審問官は私一人なの
私がいやなら男の人に調べてもらうしかないわね
ここを隅から隅まで....

そう　わかってくれればいいの
いい子にしてれば早く済むから
じっとしてね

あら　これは何？
腿と脛に同じ長細い跡がついてる
何かで縛られたみたい

あらあら、こんなところにまで虫刺されの痕？

ずいぶんと破廉恥な虫を飼ってるみたいね
それとも
飼われてるのはあなただったりして？

ねえ、もしかして
今でもルイーズと関係を持ってるの？

隠さなくてもいいわよ　今更でしょ
あなたとルイーズの仲は学園にいた時から有名だった

知ってた？
あなたと仲良くなりたい子は大勢いたのよ
私もその一人だった
でも上級生で学園の女王だったルイーズが
あなたを独り占めして誰も近づけようとしなかった

あなたのお父様が破産した後、ルイーズはあなたに声をかけたんでしょう
彼女の口利きであなたは伯爵家のメイドになった

もっともメイドはただの口実
実際にはルイーズ専用のお話相手兼雑用係ってとこじゃないのかしら
ついでに夜の相手もしてるわけ？

....そう　否定しないのね

もういいわよ　起きて

だいたい読めたわ　この先どうなるか

フォルトールの屋敷で、年末に出入りの業者に支払うはずだったお金がなくなったのよね？
それもたまたまあなたが一人で本や書類の片づけをしていた部屋の中から

あなた最近ルイーズに何か話したんじゃない？
家を出たいとか何かそんなこと
それから間もなく盗難事件が起きた
違う？

心配しなくていいわ
きっとしばらくしたらルイーズがあなたを迎えに来る
あなたがやったんじゃないという確かな証拠を持って

なぜ？
誰だって予想できるわよそんなこと

まさか忘れたわけじゃないでしょう？
在学中に起きた盗難事件のこと

ほら　礼拝堂の補修工事のために集めた寄付金がなくなったでしょう
当時の状況からあなたが疑われて大騒ぎになった

でもルイーズの証言であなたは救われた
お金は結局まったく関係ないところから出てきたわね

あの時からよね　あなたがルイーズに心酔するようになったのは
それまではどちらかというとルイーズの片思いって噂が出ていたくらい
だってあなたはもともと女王の取り巻きになるような子じゃなかった
誰にでも分け隔てなく親切だったわ

ところが盗みを疑われてあなたは孤立し
ルイーズだけがあなたを信じた
あなたはたった一人の味方だったルイーズに嫌われたくなくて
あの人の囲いになったのよ

でも本当は
ルイーズはあなたを信頼していたわけじゃない
ただ事実を知っていただけだったとしたら？

何を言いたいかわかるでしょう？

あなたも薄々気付いてるんじゃない
自分が罠にとらわれていること
それもばかみたいに単純な罠に

このまま一生あの人の顔色をうかがって生きるの？
それとも　自由になりたい？

（紙にメモを書く）

私の住所よ　持っていて
でも部屋に持ち帰ってはだめ
記憶したらこの紙は捨てて

ルイーズの家を出るときは誰にも話してはだめ
最小限の荷物だけ持って何も言わずに出てくることね

私はたいていここか、家にいるわ
あなた一人くらい泊めてあげるわよ

いい？ルイーズは今日ここであなたが私に遭ったことを知らない
決してあのひとにこのことを話してはだめよ

彼女は今までも巧妙にあなたを孤立させてきたはず
もう屋敷の外にあなたの味方は一人もいない　違う？
私のことを知ればきっとまたどうにかして逃げ道をふさぐわ
だから秘密にしておくの

忘れないで
檻に入るときは放り込まれたのだとしても
出るときには自分で歩いて出るしかないの

もしあなたをそこから力づくで引きずり出そうとする人がいたら
それはきっと、ルイーズと同じ種類の人間なのよ
だから、私はそうはしない
だって
あなたにとって第二のルイーズにはなりたくないから

職務上深入りはできないの
さようなら
私にできることは多くはないわ

でもあなたのために祈ってる
あなたと、それから
あなたが際限なく養分を与えている
ルイーズという名の悪魔のために....

・台本（ゆるボイ！）
婦警【取調室】無実の罪で尋問され身体検査される【シチュエーション台本】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
クリスらびっと