よー。駅伝、お疲れさん。

はい、スポドリ。

ちゃんとあっためて常温にしといたよ。

いつも相手への負の配慮を欠かすことがないですねって…

そりゃどーも。

一応気遣いできる女だから、あたし。

にしても、惜しかったね。

あと一歩で優勝できたのに。

いや、だって一位の人の背中見えてたじゃん。

序盤か中盤のどっかで差詰めてれば追い抜けたよね、あれ。

んー、まぁ君のチームメイトが悪いわけじゃないけど…

もうちょっと実力は欲しかったって感じよね〜。

ま、それもそっか。

強豪校相手にあそこまで追いすがれただけでも、大健闘ってとこだろうし。

アンカーの君が他の上位校ごぼう抜きしてったのには、流石に驚いたけど。

あたしの知らない間にチームの大黒柱になっちゃって…

やるじゃん。成長したね。

あたしが卒業してからなんかあった？

そかそか。そりゃいい心がけだ。

そういってもらえるなら、先輩冥利に尽きるってもんだよ。

ま、君に大それた指導とかはしてないけどね。

目標にしてくれたってのは素直に嬉しいよ。ありがとね。

さ、日も暮れるし、そろそろ帰ろ。

そういや君、どーやって帰んの？バス？電車？

ふーん、バスかぁ。長蛇の列できてるけど。

…もしよかったら、後ろ乗ってく？

そそ、ニケツ。君軽いし、いけると思う。

へー？女の子の後ろに乗るの、恥ずいんだ？

はいはい。そいじゃ、後ろ乗って。

暗くなると危ないし、ちょい飛ばすよ。



よし、到着。お疲れさん。

飛ばしすぎて吐きそうだった？

あー、ゴメンゴメン。

そこは先輩のこの可愛いツラに免じて許してもろて。

え、なに？ごめん、ちょっと聞き取れなかった。

あ、あー、うん。

ちょっと深呼吸して落ち着いてから、ゆっくり話してみ？

…それはマジの告白？

そっか…ありがと。

告白は素直に嬉しいんだけどさ…

あたしもう、大学で彼氏できちゃって…

うん、ゴメン…

そーいうことだから、悪いんだけど…

君とは付き合ってあげてもいいよ。

は？何その顔。

付き合ってあげてもいいよっつったんだけど？

あー、そんなこと言ったっけ？

あはは、うそうそ！

彼氏なんかいないって！ホント、ガチで！

ちょっとしたサプライズじゃん！

ほら、よく言うでしょ？

落としてから上げた方が、喜びが倍々ゲームだって。

心臓に悪すぎるからやめてください？

はいはい、ゴメンって。

もーやらないから。多分。

(咳払い)

ま、冗談はこんくらいにして。

可愛い後輩が勇気振り絞って告ってくれたわけだし…

断るなんて野暮なことしないよ、あたしは。

んー、まぁそんな重く考えなくていいんじゃない？

恋愛に最初からラブラブじゃなきゃいけない法則なんてないでしょ。

付き合うきっかけなんて、最初はこんなもんでいーんじゃない？

それとも君は、あたしが最初から君にベタ惚れだった方がよかった？

オッケ。双方の同意が得られたってことで、カップル成立。

あ、そうだ。君、大学はどこ受ける？

なるほど。あたしと同じ大学じゃん。

まぁ知ってたけど。

いや、人づてに聞いただけ。

それに、あたしに告った時点でもうそこはお察しでしょーよ。

うん、あたしも君が同じ大学に通うの、楽しみにしてる。

万が一、違う大学になったとしても、別に問題ないしね。

その時はその時で、遠距離恋愛でも楽しもーよ。

あ、そうそう。最近良いもの手に入れたんだった。

これ、君にあげる。

そ。合格祈願の御守り。

先輩からのささやかな心遣いってことで、持っといてよ。

じゃ、あたし、そろそろ行くわ。

うん、受験頑張んな。それじゃーね。

・台本（ゆるボイ！）
大会の後に憧れの先輩に告白してみた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎