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【ヤンデレ共依存】令嬢との身分違いの恋【ボイスドラマ台本】
  • ファンタジー
  • ヤンデレ
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
2884文字(約 9分37秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
本編
(夜の教会)

こんばんは、シスター
ねえ、私の話きいてくれる?

あたし、追われてるのよ
人を殺しちゃったの

きっかけはつまんないことだった
どうしてああなっちゃったのかな

きいてくれるの?
そう、ありがと....

あたしはしがない村の出身で
街に出てきて食料品店の配達をしてたのよ
ああ、そんときはまじめに働いてたよ
その前に盗みで捕まったんだけどね
心を入れ替えようと思ってた ほんとだよ

毎朝食材を届けることになってる家があったんだよね
街の中の古い屋敷で、婆さんと孫が住んでたよ
びっしり蔦が絡んで 庭の木もやたら生い茂っててさ
そこだけ時間が止まったような家だったんだけど

そこに住んでる孫娘ってのがそりゃもうかわいい子でさ
こんなあたしにもやさしくて
ひとなつっこくてかわいくて ちょっと気まぐれでさ

ついちょっかい出しちゃったのよ
うまくいくなんて思ってなかったけどね
ものは試しって言うだろう

けどからかってるうちにだんだん本気になってきちゃってさ

でもそこからが驚く話
その子もあたしが好きだって言うわけ

最初は舞い上がってたよ
こんないい娘があたしなんかを?って
嬉しくなっちゃってさ

それから家に上がりこんだり
仕事のあと連れ出して遊んだりしてたんだけど

でもひとつ問題があった

どんなに仲良くなっても
ちょっとした口づけ以上のことは
何ひとつさせてもらえないんだよ

ねえ、ひどいでしょ
好きだって言ってくれたのにさ

だけどねえ、人の心をもてあそぶような女じゃないんだよ
あの子の気持ちは確かに本物だった
それがわかってたから、全部許したよ....

仕方ないよね
きっと育ちが良くてものすごく信心深いから
たとえ心では惹かれても
女のあたしを受け入れられないのよ

まああたしが男だったとしても、結果は同じだったかもね
結婚相手にふさわしくない身分じゃなかったんだから
せめてもうちょいマシな家に生まれてりゃよかったけどさ

だから、一度は両思いになれただけで幸せだった
そう思ってあきらめたんだよ
友達に戻ろうって....

ただその頃にはあたし、その子の家に住んでたんだよね
もちろん最初は違うとこに住んでたよ
けど途中であの子のばあちゃんが死んじゃったのよ

さびしかったんじゃないかな
家に来ていいって言うからなんとなく住み着いちゃってね
家賃も浮くし、まあ仲良くやってたわけよ

あのことをのぞけば

だけどほら、あの子はあのとおり信心深い子でしょ
きっぱりあきらめたんだよ、あたしは
だって、無理にとは言えないじゃない 好きなら余計に

だからさ、夜はほかの女と会うことにしたんだよ

だってそうでしょ
街に出りゃもっと気軽でさばけた女が山ほどいたからさ

あたし言ったんだよ
あんたとは清らかな関係のままでいい、って
心で想ってくれるだけでも十分幸せだから、もうそれだけでいい、って

だってそう思うしかないじゃない
譲歩したんだよ、あたしは
それがあの子の望みだったんじゃないの?
綺麗な関係のままでいることがさ

ところが、そこからだったんだよ
何かが狂いだしたのは

あたしがほかの女と出かけると、あの子いやだって言って泣くの
あたしの手がちょっとでも他の人に触れるのがいやだって
耐えられないって
他のひとのところへ行かないでほしいって言うの

なんでかなあ
泣かせたいわけじゃなかったんだけど
じゃああんたが相手してくれんのっていうとそれもできないんだよね
わけを問い詰めたけど
理屈じゃなくてとにかくできないもんはできないって

なんとなくわかってたのよ
あの子のどうしようもない気持ちは

でもねえ、ああいうの魔が差したって言うのかな
あたしなんだか変な気分になってきちゃってさ
ちょっとずつおかしくなっていくあの子が
なぜか前よりもっと愛しいの
もっともっと苦しめたいと思ってしまう

それでね わざと煽るようなことしちゃったんだ
やさしくしたり冷たくしたり
他の子の存在を気付かせるようにしむけたり
酔った女の子を夜遅く家に連れ込んだこともあったな

何か目覚めちゃったんだよ
心配させたり嫉妬させたり....
それがどうしようもなく気持ちいいの

ああ、もう、あの快感があれば身体なんていらないくらい
なんて浅ましいのかしら
好きな子を幸せにするどころか
苦しめて気持ち良くなろうなんてさ

でも初めてだったんだよ 誰かにあんな感情向けられたのは
もしかしてこんな幸運はこの先二度とないかもしれない
だったらとことん味わい尽くしておかなきゃと思ってさ

あんたにわかる?この気持ち

ああ、シスターにはわかんないか

それに、そうやって煽ればいつか限界が来て
あの子が変わってくれるんじゃないかって希望もあった

ねえ、どんなに腕のいいコックだって
厨房の鍵が閉まってたら料理なんかできないんだよ そうでしょ?
でもほんの少しでも扉が開けば、その先だってあるかもしれない

あの子を揺さぶればその機会が来るかもって
どっかで期待してたんだよね

でもそのうちわかった
あれはね 一番やっちゃいけないまずい手だったんだよ
あの子は考えを変えるどころかどんどん頑なになって
いつのまにか、あたしを憎むようになっていった

だったらさ あたしを追い出せばよかったんだよ
だってあそこは、あの子のばあちゃんの家だったんだから
最初からあたしが住む権利なんかないでしょ

でもあの子はどうしてもあたしを手放そうとしなかった
変だよね あたしは
何の役にも立たない あの子を苦しめるだけの存在なのに
それでも離れるのは耐えられないってそう言うの

じゃああたしが他の女と会うのをやめればいいの?
でもそれにはもう遅すぎた
あたしはあの子を傷つけすぎて もう信じてもらえなかった
あの子があたしを見る目は前と違ってた
不安と疑いでいっぱいで 

それから あの子の中に
欲望が目覚めていくのが分かった

どんな欲望ってそれはうまく言えないんだけど
あの子の欲望はあたしのものとは違う
一目見てわかったよ
あの子が求めるものとあたしが求めるものは
永久に交わることはないだろうって

そう わかってた
その欲望に負けたとき あの子はきっとあたしを殺す
自分だけのものにするためにね

いや、ことによったら殺されるよりまずいことになるかもしれない
知ってるんだよ あの子が医学や解剖学の本を集めてたこと
最初は気にも留めてなかった
ああ、お嬢様ってのはああいうもんを読むんだなとしか
でもね ある時見ちゃったんだよ
ある本の挿絵の上に、あの子が描いたあたしの顔のスケッチが貼られてたんだよ
ほら、ガキがよくやるだろ
裸の女が描かれた絵の上に、あたしの顔をくっつけてるわけ
それだけならほんとにガキみたいな悪戯さ
一つ妙なのはね
それはね、手足を切り落とされて胴体だけになった女の絵だったんだよ

だんだんわかってきた
自分がどこにいるのか なにをやってんのか
悪魔が住んでる穴の入り口で餌まきながら突っ立ってるようなもんだよ
あの子が欲しい?
こりゃ食うか食われるかの話だぞってね

だから逃げることにしたんだけどさ....
でもあの子はそれを許さなかった

........
よく思い出せないんだ 最後の夜に何があったか
でもひとつだけわかる
もしあたしが自由に外を歩いてるとしたら
それは二人のうちどっちかが死んだ時だって

ねえ、シスター
あたしのこと見える?

あたし 生きてる?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【ヤンデレ共依存】令嬢との身分違いの恋【ボイスドラマ台本】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
クリスらびっと
ライター情報
 クリスはYouTubeで怪談朗読から出発した個人勢です。
 自キャラのボイスを投稿したのをきっかけにシチュエーション台本も書くようになりました。
 これは音読のしやすさやおもしろさ、演じてみたいシーンや伝えたいことなどを書いた
 読み手の私にとっての理想の台本です。あまり再生されない時もあればロングヒットも誕生しました。他の方が読んでくださっているのを聴くのも楽しいです。
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