…は？なんで人間が出てくるの…？

召喚のための魔法陣には触れてないはずなのに…

え？……貴方、何者？

どうしてわたしが、ソロモンだって知ってるの？

いや…もしかしてコイツ、人間の皮を被った悪魔…？

でも悪魔の気配がまったくしない…

…わかった。敵愾心(てきがいしん)はなさそうだし、そこに掛けて。

お茶でも飲みながら、ゆっくり話そう。



…信じられない。貴方が未来人だなんて…

それで？わたしから悪魔を使役(しえき)するための手ほどきを受けたいってこと？

そう…残念だけどそれは無理。

わたしは悪魔を使役していない。

むしろ奴らをこの世から駆逐しようと思ってる。

この地上に蔓延(はびこ)ってる悪魔は、わたしの一族が原因だから…

元々、悪魔なんて地上には存在し得ない生き物だった。

でもわたしの遠い祖先が、悪魔召喚の儀に手を染めてしまった。

内乱をおさめ、この国を統一するために手段を選ばなかった。

そう…悪魔の力を使って地上を統一し、王国を築き上げた。

そして今…王位にあるのがわたし、ソロモンというわけ。

ここまではいい？

わかった。なら話を続ける。

国は統一されたけど、内情は乱れてる。

悪魔によって富や力を与えられた人間が、各地で暴走してる。

天の国まで侵略しようとする愚か者まで現れる始末だし…

それだけじゃない。

悪魔によって生み出された怪物や魔物も跋扈(ばっこ)して、どうにもならなくなってる。

こうなったのも全部、わたしの一族が悪い。

いくら国を治めるためとはいえ、悪魔の力をあてにするべきじゃなかった。

この王国は呪われてるから…

だからわたしがその呪いを断つ。

わたしの代で、このおぞましい悪意の連鎖を終わらせる。

もちろん、考えはある。

だけど貴方には話さない。

当たり前。貴方が悪魔側の人間じゃない保証はどこにもない。

…⁉︎ な、なんで急に土下座なんか…⁉︎

…どうしても教えてほしい？

悪魔をコントロールする方法。

なら証明して。

貴方が悪魔に魅入られた存在じゃないってことを。

ううん、難しいことじゃない。

悪魔と戦い、撃退する。これだけ。

悪魔を撃退するだけの力を示し、わたしに忠誠を誓って。

そしたら悪魔をコントロールする方法を教えてあげる。

といっても、あまり期待しないで。

わたしも部分的にしか悪魔をコントロールできないから。

そう。部分的にしかできないからこそ、奴らを残らず倒す必要がある。

貴方に覚悟はある？

悪魔の囁きに踊らされず、己の意志を貫く覚悟が。

わかった。なら構えて。

これからわたしが契約している悪魔を召喚する。

そいつを完膚なきまでに叩きのめして。

わたしの心配は要らない。

悪魔には「わたしの敵」である貴方と戦ってもらうよう、言い含めるだけだから。

そう……なら始める。

貴方の力と意志、わたしに見せて。



お疲れ様。意外とできるんだ。

貴方の力と意志、たしかに受け取った。

今したことは、弱った悪魔を指輪に封印しただけ。

この指輪は大天使ミカエル様からいただいたもの。

悪魔を残らず屈服させるようにって言われて授けられた。

…貴方の言う通り、たしかにこれがあれば悪魔をコントロールするのは容易い。

だけど、この指輪の効力も完全じゃないし…

なにより、わたしが死んでこれを悪用されたら、多分人類は滅びる。

あるいは悪魔の支配下に完全に置かれる。

だから、一匹残らず悪魔を封印した後は、この指輪をわたしごと葬る。

それが悪魔をこの世から駆逐する、一番確実な方法。

自己犠牲でもなんでもいい。

わたしは自分に出来ることをするだけ。

…もう友達に悲しい思いはさせたくないから。

何でもない。とにかく貴方の忠誠は認める。

これからわたしに力を貸してくれると助かる。

貴方のこと、一応頼りにさせてもらうから。

・台本（ゆるボイ！）
地上の偉大なる王様は孤独に戦う少女だった〜魔術王・ソロモン編〜
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎