鳥人族の女執事は、怠惰な性格でとっても生意気。仕事をほっぽり出して翼の手入れに夢中な彼女に仕返しをするも、その行為にはある重大な意味が…！しかも行為の責任を取らされることになって…

※羽、羽根:はね　翼:つばさ
［自宅。書斎。］

(鼻歌)
ふんふん〜……ふん…ふんふん………
…はい。何でしょうか。鼻歌？いえ、歌ってませんが。
いいえ、歌ってないです。
私は翼の手入れをしていただけですが。人間のご主人様にはわからないかもしれませんが、鳥人にとっては重要なことなんです。
いえ、私のことは気にせずお仕事に集中なさってください。

(再び鼻歌)
…ふん…ふんふん〜……
…はぁ、小学生でももうちょっと集中して宿題に取り組むかと思いますが。
ご主人様の集中力は小学生以下ですか？まったく…
納期とか、大丈夫なんですか？
ふ〜ん…いえ、ご自身でスケジュール管理をしっかりなさっているのなら別に構いませんが。
はい？いえ、私は手伝えませんよ。執事とは言え、ご主人様の業務についてはほとんど何も知りませんので。
それに、今は私も忙しいので。ええ、とても。
ちょうど換毛期なので…羽が抜けてくるんです。
古い羽をそのままにしておくと、新しい羽も痛めてしまうんです。
特に生えたての羽はデリケートですから。
だからこの時期はこうやって…丁寧に羽を抜いてあげないといけないので…
とっても忙しいんです。ご心配なく。ちゃんと抜いた羽は処分しますから。
という訳で、私の協力は期待しないでください。

はい？お茶ですか？ティーパックで宜しければその棚に仕舞ってありますよ。
お湯はそちらの電気ケトルで沸かしてください。
なんで私がご主人様のためにお茶の用意をしなきゃいけないんですか。それくらいご自身でやってください。
それより見てくださいよ、この羽。風切り羽根の次に大きい羽なんですが、とっても綺麗に抜けました。ほつれも歪みもないですし、サイズも良好です…せっかくですから羽ペンに加工して飾りましょうか。
えぇ、欠かさず翼の手入れをしてきた成果ですから。この羽は私の誇りです。
鳥人族でも、生まれて初めての換毛で抜けた羽や、特に立派な羽は記念品として保存することは多いんですよ。


ふぅ。今の羽で最後ですかね。見てくださいよ、これ。ほぼ全ての羽が生え変わりました。
どうです？なかなか美しいでしょう？
特にこの自慢のライン！発色もきれいで、付け根からの羽先までしっかり揃ってます。
なかなか上出来だと思いませんか？
もう。書類ばかりじゃなくてもっと私を見てくださいよ！そして褒めてください。
えぇ、まぁ。業務に集中しろとは言いましたけど。そこはほら。バランス、ですよ。
それに、自分の執事を褒めるのもお仕事のうちでしょう？私の機嫌を損ねたら今日の晩ご飯は食べられないんですから。
はい？何言ってるんですか。触らせませんよ。言ったじゃないですか。翼はデリケートなんですよ。特に今みたいな生え変わったばかりの新しい羽は。
鳥人族同士でもめったに触らせないんですよ？それにご主人様に触られて、羽が傷んじゃったらどうするおつもりですか？乙女の翼を傷つける代償は大きいですよ？
わかったらさっさと業務に戻ってください。

(小声で)
はぁ…翼を触るという意味をわかって言っているんでしょうか。勘違いしちゃいますよ…

(突然翼に触れられ、驚く)
きゃああ！
ご、ご主人様…！？急に触るなんて…！！と、とにかく！手を離してください！今すぐに！！
ちょ、ちょっと…！本当に離して…！んっ…！ダメです…ダメなんです…！！
その羽は…ひ、飛行中に風を感じるための羽で…あっすりすりしないでくだっ…
そこは！体で1番敏感なところなんです！！

(息切れ。肩で息をしながら。)
はぁ…はぁ…やっと離してくれましたね……こ、腰が抜けてしまいました…
改めて言っておきますが、ご主人様が触ったのは感覚器官の一種で、鳥人の体の中で1番！敏感な部分なんです！
特に私は鳥人族の中でも高速で飛べるように進化した種族なので…際立って敏感なんです…
そんなところを他の人に触られなんてしたら…

な、なんですかその手は…や、やめてくださいよ？こっちに近寄って来ないでください！
話を聞いていましたか！？翼は本当に敏感なんです！！
わかりました！お仕事のお手伝いでも何でもしますから！！
だからやめっ…あっ…ふっ…んんっ……だめっ…！
風切り羽根もぉっ…だめです…！くすぐったくてぇ……

(腰が抜けて、力がはいらない)
はぁ…はあ…ご主人様のばかぁ……
もうお嫁に行けません…私は汚されてしまいました……
そうですよ…！ご主人様に…無理矢理…！！
敏感な翼を触らせるのは！つがいとして将来を誓い合うという意味があって…
だ、だから普通はそんなに気安く触らないんです！！恋人ですら滅多に触らないのに…！
それをこんなに簡単に触るなんて…！！しかもあんな隅々まで…！


ふ…ふふ…いいでしょう。つまりご主人様は、私と一生添い遂げる覚悟ができた、ということですね。
何が違うのですか？私をこんなに乱しておいて。
認めない、と言うのでしたら「ご主人様は私に手を出した癖に責任を取らないような奴だ」と言いふらしますよ？
周囲の人から無責任な人だと思われても宜しいのですか？
そうですよね。そんな噂が広まってしまえば、お仕事に支障が出てしまうかもしれませんね？
でしたら私に何か言わなきゃいけないこと、あるんじゃないですか？

ふふ、今はその言葉だけで良しとしましょう。
責任、ちゃんと最後まで取ってくださいね。ご主人様。

・台本（ゆるボイ！）
鳥人族の生意気な女執事に仕返ししたり、責任を取らされたりする。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
奏流 漁(幼女かなで)