周りには内緒で付き合っているお嬢様と、今夜は「約束の場所」で待ち合わせをしている。
約束の時間を少し過ぎたあたりで、自分の方に駆け寄ってくる女性の姿が見えた……

//少し息を弾ませながら
こんばんは

遅くなってしまって、ごめんなさい

家を抜け出すのに、手間取ってしまって……

それで、えと、あの、色々と話したいことがたくさんあるのですが

まずは、その……
//


(深呼吸)


……お久しぶりです

あなたに会えて、とても嬉しいです

お元気でしたか？

……おぉ、それならよかったです

健康に毎日を過ごすのはとても良いことですからね

私の方も、体調を崩すことなく、この夜が来るのを楽しみにしておりました……

と、言いたいところなのですが

つい先日、少し風邪を引いて、喉を痛めてしまいまして……

今はもうすっかり治ったのですが

私の声、どこか変じゃありませんか？

風邪を引いてからずっと、なんだか喉に違和感があって……

……！

よかった！　あなたにそう言ってもらえて、すごく安心しました

…………あの

少し、歩きませんか？

あの時の様に、手を繋いで、ゆっくりと、お話をしながら


…………
……
実は、家を抜け出す時に、兄が協力してくれたんです

私は、父に「少し外の空気を吸いたい」と嘘を吐いて家を抜け出そうとしたんですが、

父は「また風邪が酷くなってはいけない」と心配して、なかなか許してくれませんでした

でも、私はあなたにどうしても会いたかった

今日を逃してしまえば、次はいつ会えるかもわからない

あなたに、「約束を破る女」だとは思われたくなくて、必死でした

そうしたら、兄が父を説得してくれたんです

「自分が一緒についていくから、それなら父さんも安心だろう」と言って

兄がついていくのなら、と父は安心して、私を見送ってくれました

……でも、兄さんは、私がなぜ、こんな夜に出かけたがってるのか、わかりきっていたみたいで

しばらく、家の周りを二人で歩いた後、急に兄さんは立ち止まって、

「行っておいで。なるべく早く帰ってくるんだよ」と……


あっ、そうだ

兄があなたに会いたがっていましたよ

今週末、一緒にあの店で食事でもしないかって

出来ることなら、私もその場にお邪魔したかったのですが

兄が「男同士でしか話せない話題もあるんだよ」としか言ってくれなくて……

なんなんですか？　その「男同士でしか話せない話題」って

……むぅ、あなたもだんまりですか


……


……私、正直言って、兄のことが羨ましいです

「どうして」……って

だって、私はこういうやり方でしか、あなたと一緒の時間を過ごせないのに

兄は堂々と、あなたと会うことができるなんて……

でもまぁ、だからと言って、兄のことを嫌いになることはないんですけどね

むしろ、私たちのことを陰ながら応援してくれて、すごく感謝はしてます

あなたと出会えたのも、兄のおかげ、みたいなところはありますから……

……あー、でもやっぱり羨ましい！

私もあなたと一緒にお出かけしたいのにー！


……ハァ


……そろそろ、戻りましょうか

あなたと離れるのは寂しいですけれど、これ以上は流石に、父に怪しまれそうですから……

それで、最後に、ひとつ、よろしいでしょうか

以前お会いした時にお伝えした、あの話なんですが……

あなたが、私たちの将来について真剣に悩んでくれているのは、私もちゃんとわかっています

身分の違いとか、私の両親が許してくれるかどうかとか

あなたが真剣に悩んでくれているからこそ、私はあなたからの愛を実感します

本気で、私のことを愛してくれているのだと


だから

あなたの覚悟が決まるまでに、どれだけ時間がかかっても構いません

私はいつまでも待ちます

……必ず

必ず、私のことを、迎えに来てください

……お願いしますね

・台本（ゆるボイ！）
こっそり付き合ってるお嬢様に、会いに行こう
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
羽衣ロロモン