やあ、遅いじゃないか助手君。
最近は遅刻ばかりだな
ふふん、今日は早起きさせてもらったよ。
そうだ。来てそうそう悪いが頼まれてくれるか？

何も言わずこれを駅前のコインロッカーに入れてくれ。中身？ああ、ケシの実の汁を乾燥させただけのものだ。

深く考える必要はないし、助手君には関係ない代物だ。犯罪？...やはり知っていたか。まあ、そう騒がないでくれたまえ。

この研究所のメンバーは私と君しか居ないだろう？そうなると、維持が大変でねぇ。僕と助手君が出し合っても霞ほどしか集まらないだろう。

よって僕は金策を始めたのさ。錬金術師らしいだろう？バレたらどうする？バレなければいいのさ。さあ、行ってきたまえよ。
助手君。

(ドアを開ける音)

やあ、助手君お疲れ様。
どうだい？犯罪に加担した気持ちは。...ははは申し訳ない。
でも君の安全は保証するから安心したまえ。

ほら、助手君。休んでいる暇はないぞ。
早く手伝っておくれよ。

は？辞めたい？
ふぅん...聞かせてもらおうか。

いつも怪しい研究ばかりだし、犯罪にまで加担させられるのは嫌だ？

そうか...

君は錬金術をなんだと思っていたんだい？
ふん、錬金術とは君の想像するような手合わせで錬成するものや指慣らしで火を生み出すものでもない。

私の研究テーマは畏怖の対象に対する挑戦だ。それには地道に時間と労力をかけて作り上げる必要があるんだ。

夢を壊してしまって申し訳ないね。
だが研究とはそんなものだよ。

それに、私の研究テーマには犯罪に手を染めてまで挑戦する価値がある。前から話していたと思うが私の夢は電気に変わるエネルギーを発見することさ。

だが、それはね人間の力では無理な話なんだ。限界点を超えていない人間ならね。

説明していなかったな。限界点というのは僕がつけた名称だ。僕は人間と畏怖の存在の間には必ず交わる境目が存在すると考える。
その境目こそが限界点だ。

僕はその限界点をどう超えるか模索していた所、僕は...夢を見たんだ。そう夢をね。それもとびきり奇奇怪怪な。それでね、僕は辿り着いたんだ、この錬金術にね。

そして、遂に完成したんだよ。限界点を超えるための仕組みが。これを見れば助手君も辞めるなんて考えがなくなるだろう。

(電気がバチバチ鳴る音)

どうかな？僕の人知を超えた姿は。実験は成功のようだな助手君。これで辞めるなんて言わないだろ？

そうか、気は変わらないのか...助手君、そんなにあの女が好きか？しらばっくれなくても大丈夫さ。

ああ知っているとも。どうせ本当の理由はその女と一緒になる事でさっきの言葉は建前なんだろう？

ふん、私は全てを分かっているつもりさ。例えば今君の感情を当てて見せよう。
君のその愛する彼女と今連絡がつかなくて心底焦っているんだろう？

図星のようだな。彼女を何処へやった？さあ？僕にもそんなことは分からないさ。

ただし、ひとつ言えることは
錬金術の基本は等価交換さ。何かを生み出す為には何かを捧げなければならない。金でも銀でも...人間の肉体や魂でも。

ははは...これだけ説明すれば、君のような勘の鈍いやつでも分かるんじゃないか？
はは...泣いても喚いても彼女は戻ってきはしないぞー？

ははは...最後のチャンスを与えよう。この研究所に残って彼女との遠い日の記憶を自ら切り裂き、僕とずっと研究を続けるか、それとも、ここで僕の被検体第一号になってもらうか。

ふーんそうか。
どうやら君は本当に僕の事を嫌いになってしまったらしい。

では、最初の実験を始めようか。

イカロスは蝋の翼を焼かれてしまったが僕はこの翼を完璧にコントロールしてみせる。

大丈夫さ。命には別状はないだろう。何故って？人間の私がこの物質を纏えているんだ。よって問題はなし。いいだろう？

例え君がどんな異形の姿になっても愛すると誓おうよ。
では、限界点の先でまた会おう。助手君。

・台本（ゆるボイ！）
天才錬金術師に辞めると言ったが...
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ドドめ