あなたに馴れ馴れしい後輩に、成り行きで悩みを打ち明けることに。
彼女は相談に乗ってくれていたはずが、気付けばあなたを策略に嵌めていて……

先輩、お疲れ様です。
この後は、まっすぐ帰って、お家で奥さんとイチャラブですか？

あっ、ひどい。
ふざけるなってなんですか先輩ー。
私は素直に先輩の今夜のことを聞いたまでじゃないですかー。

言い方に悪意があった？
さて、なんのことでしょう？
私は悪意というより、からかってるだけです。

そりゃ、嫉妬はしてますけど。
だって、先輩の奥さんは、合法的に先輩を毎晩独占できるんですから。
羨ましいものです。

もちろん私は、恋愛とか、そういうことじゃなくて、可愛い先輩で遊べるからっていう意味ですけどね？
先輩とは、緊張せず気楽にいられそうですし、一緒に暮らすには良いなって思うんです。

……ん、先輩。
そんなに大きなため息ついて、どうかしたんですか？
というか、最近はなんだか、精神的に疲れてるって感じがします。

いや、わかりますって。
私は後輩として、先輩愛を持って先輩のこと、じーっといつも見てるんですから。
仕事中の先輩のことは、もしかすると先輩以上にわかってるかもしれませんね。
つまり私は先輩よりも先輩、そして私こそが真の先輩……なわけはないですけど。

とにかく、先輩の悩み事なら、何だって力になってあげるつもりです。
むしろ、そんな暗い表情されたら、そのまま帰すわけにはいきませんね。
私はいいんですよ？
先輩が奥さんのいる身分であろうと、朝まで一緒というのも。

あ、話す気になりました？
大丈夫です、誰にも言いませんから！

　（間）

へぇ……先輩がそんなこと考えていたとは。
男らしくないのかも、ですか……

もしかして、私の態度もその一因だったりします？

あ、奥さんに先輩が男として認識してもらえてないかもってことですか。
じゃあ、私の態度は関係ないんですね。

一つ聞きますけど、先輩は奥さんに、嫌われてはいないんですよね？

……じゃあ、離婚の危機とかではないんですね。
むしろ仲は良好、ですか……

なら、話は単純じゃないですか？
先輩が真面目過ぎるだけ。

私から見ても、先輩って、いい人には見えるんですけど、男性的な色気というか、魅力を感じないんですよ。
そのドっ誠実な性格も相まって、ドキドキというより、落ち着くタイプの男性にしかなれてないと言えばいいんでしょうか？

お家の中では、きっと、いい旦那さんなんでしょうね。
でも、いい旦那さん止まりなんでしょうね。

それで、何かスキンシップとかはしてるんですか？
それによって方法は変わってくるような気がしますけど。

……ふーん、軽いキスぐらいならやってるんですね。
先輩が……

ごめんなさい、いくら何でも失礼なこと言いましたよね。
先輩だってしますよ。
家に帰れば愛する人がいるんですもん。

……でも、それだけなんですね。

夫婦で、先輩ぐらいの歳ともあれば、それ以上なんて自然なのに、随分と大人しいところでとどまってるんですね。

それは、先輩が正直になれないからですか？
それとも、奥さんが無自覚に先輩のこと、苦しめてるんですか？

多分、先輩の様子だと、そのどっちもなんでしょうね。
どっちかがはっきりと言ってしまえば、先輩が今抱えてるようなモヤモヤなんて存在しないわけですし。

遠慮ばかりの先輩のことですから、ここではっきり言ってみたら、だなんてアドバイスも現実的じゃないような気がしますし……

まず、自信をつけるところから始めませんか？

先輩は悩み続けてるせいで、自分が男らしくないかもっていうループにはまって、ますます自分のことを男らしく感じられなくなってるんです。
……そういう意味では、私の態度もやっぱり関係あるんじゃないかと。

ということで、お詫びの気持ちも兼ねて、先輩の男らしさを目覚めさせるようなこと、させてください。

先輩はまず、今夜は遅くなることを奥さんに伝えておいてくださいね？

どれくらいって……そうですね、場合によっては朝までになるんじゃないですか？
そればかりは、先輩次第ですけど。

え、それはダメ……ですか？
まったく、先輩っていうのもお堅い真面目さんなんですね。
つまらないって言われません？
そういうところが男らしくないんですよ。

何を怖がってるんですか？
隠し事がバレることですか？

わかりますよ？
女は男の嘘をよく見抜くって、よく聞きますからね。

ですけど、それって見抜かれた嘘のことしか言ってないんですから、そりゃ当然なんですよ。
男が最後まで隠し切った嘘を、女は知らないんですから。

つまり、先輩の心配は杞憂なんです。
真面目で心配性な先輩。

だから……先輩。
私なら、先輩の気持ち、遠慮なくぶつけさせてあげますよ？

はぁ……
そりゃそうですよね。
先輩みたいな人が、ちょっぴり危険の孕んだ遊びに付き合ってくれるなんて、そんな都合のいい展開はないですよね。

さて、いろいろと話している間に皆さん、帰っちゃって二人きりですね。
こっちは都合がよくて助かりました。

　（鍵を閉める）

もうここでいいでしょう。

先輩、私、こんな女なんで、諦めてくださいね？
先輩みたいな穏やかな人の幸せを、壊したくてたまらなかったんですよ。

呪うなら、自分の性格ですよ。
先輩ほど壊しがいのある男性なんていないんですから。

今まで先輩のことを滅茶苦茶に壊す妄想をし続けたおかげで、私、先輩のこと以外考えられなくなってしまいましたぁ。

これは許されないことだ、とか、そんなわかりきってることを言われたって、刺さりませんよ？
私、もうなりふり構わず先輩をものにするって決めちゃいましたから。

ここに先輩がいながら、逃す手はありませんよ。

先輩、愛してますよ。

先輩のことを悩ませて、一緒に暮らしてるだけの女よりずっと。
だって、その女がさせてくれないこと、これから私がさせてあげるんですから。

先輩……こうやって、私が自由にできると思うと、より愛しく感じてしまいます……

でも、まだ先輩は違う女の物なんですよね。
そればかりはどうも気に食わないです。
あとは、私の物になってしまえば完璧ですね……

先輩……純粋な瞳をしてますね。
素敵……

（囁き）でも、全部、全部、穢してあげる。

今の先輩は他の女のものって感じが強すぎますから、徹底的にマーキングしておかないと。

もちろんですけど、今日のことはただの始まりにすぎません。
一回で先輩をものに出来るほど、先輩も軽い人ではないみたいですから。
それに、一瞬で気変わりしてしまうような先輩だったら、狙ってませんし。

その代わり、どんなに時間がかかっても、確実に、先輩という狙った獲物は手にしますから、覚悟してくださいね？

・台本（ゆるボイ！）
先輩の真面目な人生、壊してあげます
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩