《前編　同じクラスの根暗陰キャに裏垢バレして抵抗できずに好き勝手される》

あ、あの……！
すいません、急に呼び止めちゃって……
その……少し、お時間を……あの、良いですか？
「少しなら大丈夫」……？
あ、ありがとうございます！
それなら、その……廊下で話すのもアレなんで……
えっと、あそこの空き教室でも、その……大丈夫、ですか？
えへへ……あ、ありがとうございます。

（ドアの開閉音）

（鍵をかける音）

え……か、鍵ですか？
それはそ、その……他の人にはあんまり聞かれたくないっていうか……
とにかく、それくらい大事なお話なんです！
えっと、その……ご、ごめんなさい！
いざ話そうとしたらき、緊張しちゃって……
（深呼吸）
大丈夫です、落ち着きました。
それで、あの……私の大事なお話っていうのは、ですね。
その──

こ、このアカウント……これって、その……アナタ、ですよね……？

あぁ待って！大丈夫です！誰かに言いふらしたりとか、そういうことは絶対しないので！
私、そんな事する勇気もないですし、お……推しにひどい事とかしたくないですから！
はい……その、そうです。
私その、実は……えっと、その……あ、アナタのファンだったんです！
男の人なのにすっごい可愛くて、私なんかと違ってキラキラしてて……
えっと、その……ず、ずっと私の、あ……憧れだったんです！
それに、その……有料ファンクラブの、ちょ、ちょっとえっちな写真も……すっごい、好き……です。
それで、えっと、あの──はい？
「どうして自分だって分かったのか」……ですか？
そ、それは……分かったっていうより、なんというか雰囲気が似てたっていうか……
それで、えっと……もし本物だったら、お話したいな～とか、思ったりして……え？
「そろそろ良いか」……えっと、あの……はい、すいません。
ごめんなさい、時間、取らせちゃって……そ、それなら！
最後にその、れ、連絡先……交換、してもらえますか？
ファンとかそういう関係じゃなくて、その……同じ学校に通うと、友達として。
「無理」って……えぇっと、その……理由、教えて、くれませんか……？
わ……私の事、知らない？
そ、それならこれ！このアカウント……これが私です！
これでそ、その……え、しつこい？
そ、そんな……えと、あの……も、もう行っちゃうんですか!?

えっと、その……ダ、ダメです！い、行かせません！

え、えへへ……さっき私、皆に言いふらしたりしないって言いましたけど……あれ、やっぱり嘘です♪
教室から出て行っても良いですけど、も……もし出て行ったらアナタの秘密、皆にバラしちゃいますよ？
そ、それが嫌なら、まずは連絡先……お、教えてくれますよね？
えへへ～あ、ありがとうございます♪
「もう良いか」って……えっと……ふひひ、だ、ダメで～す♪
残念ですけど～ま、まだダメで～す♪
つ、次はその……せ、せっかくだから……は、ハグ、してくれますか？
連絡先の交換もしたし、私達ってもう友達ですよね……？
だ、だからその、友達なら……スキンシップくらい、ふ、普通ですよね？
あっ……あぁ……！
えへへ、わ、私いまお、推しにハグされてる……あぁ……へ、へへへ……最高……！
そ、それじゃあ次は、このまま……き、キス……して、くれるよね？
そんなに嫌そうな顔したって～こ、断ったらどうなるか、分かってるよね……？
あ、まだ待って……せっかくだから、記念撮影……良いよね？
えへへ、ありがと……そ、それじゃあ……♪

あぁ……私、初めてのキス……お、推しに奪われちゃったぁ……♪
ほ、ほら……写真もバッチリ♪
こ……これってさ、私達もう、友達こえてこ、恋人……だよね？
また嫌そうな顔してる……ひょっとしてさぁ、バラされたいのかなぁ？
あのさぁ、分かってないのかなぁ……アナタはね、もう私の言いなりになるしかないんだよ？
自分のファンに弱みを握られちゃって、逆らおうにも逆らえない……いひひ、可哀相だねぇ♪
わ、私だって本当は推しにこんな事、し……したくなかったよ？
でもさ、き……君が悪いんだからね？
私に悲しい思いさせた君が悪いの……だ、だから私は悪くないの！
推しを脅して好き勝手しても、私なんにも悪くないんだよ♪
いひひ、それじゃあさ、こ……これからデート……一緒に行こ？
二人で手、繋いでさ……私達お付き合いしてるんだよ～って、皆にアピール……良いよね？
うんうん、やっと分かってくれたんだね♪
こ、これでもう、君はわ、私のモノ……いひひ♪

もうぜ～ったいに逃げられないってこと、教えてあげるからね♪




《後編　調子に乗っていたヤンデレ根暗陰キャをわからせようとしたら全てが終わった》

（携帯の着信音）

も、もしも～し……あ、あのね、今……予定、空いてる？
そっか、空いてるんだ。
良かった～それならさ、そ、その……今からほ、ホテル……行こ？
私さ、その……またシたくなっちゃって……あれ、聞こえてる？
お、お～い？もしかして、回線わ、悪くなっちゃった？
そ、それとも──

私に付き合うのが嫌だから、わざと聞こえないふり、してるのかな……？
ねぇ、そんな事したらどうなるか、わ……分かってる、よね？

ひひひ、そうだよねぇ～♪
あんな秘密、皆にバラされちゃったら……君、終わっちゃうもんねぇ～♪
裏垢で女装コスいっぱい撮影して、ファンからい、色んな物……いっぱい、搾り取ってるもんねぇ♪
皆の前では真面目キャラで通してるけど、本性は女装してえっちな目で見られるのが好きな変態さんとか……
ふひひ、君ってば本当、エロ過ぎだよぉ……私の推し、最高♪
と、とにかく秘密をバラされたくなかったら、いつものホテルに来てくれる、でしょ？
部屋はいつものところ、私が取っておくから……来なかったら、わ、分かってる……よね♪

（通話終了）

あ、やっと来てくれた……ご、五分も遅刻するとか、何かあったの？
無い？そ、そっか……
それならさ、な……なんで五分も遅刻したの？
私、すぐに来てって言ったよね？
それなのに、なんで五分も私の事、待たせちゃってるの？
えっと……君ってさ、もしかして私のこと、お……怒らせたいのかな？
別に君がそうしたいなら良いけど、そしたら私、君の秘密……バラすからね。
ほら、分かったらさ……い、今すぐここで土下座、して？
「自分の事を誰よりも愛してくれるファンを五分も待たせてしまってごめんなさい」って、私に土下座しながら謝って。
で、出来るよね……？
秘密を守る為ならさ、わ、私の言った通りのこと、出来るよね……？

あ～本当、マジで最っ高……！
推しに無理やり土下座させるの、こんなに気持ち良いんだ……！
こ……これ、癖になっちゃうかも♪
わ、私は心が広いから、遅刻の事はこれで許してあげる。
それよりさ、私……もう我慢できないからさ、ほら、始めよ？
えっと、その……どうしたの？
ほ、ほらこれ！今日の衣装、わ、私が選んできたの、あるからさ……
ねぇ、ほ、本当にどうしたの？
もしかしてわ、私の言うこと──きゃあ!?

うぅ、い……痛い……ひ、酷いよ！
いきなりそんな、乱暴に……ひっ！
そ、それ……私のスマホ。
ねぇ、返して？
「いやだ」って、えぇ……わ、私の言うこと、聞けないの？
聞けないなら、君の秘密……み、皆にバラす事になっちゃうけど。
「出来るならやってみろ」……つ、強気だね。
あ……あ～はいはい、なるほどね！
私、分かっちゃった！
ここ、私達以外に誰も居ないし、そ……それに私のスマホ君が持ってるから、私いま何にも出来ないんだ。
あ、あはは～
き、君って頭、けっこう良いんだね。
私ってばいつの間にかだ、大ピンチじゃん……
え、それ……ねぇそれ、それで何するの？
手錠……ちょ、ちょっと！やめてよ！

うぅ……ねぇ、これ外して？
そ、そうしないと私、なにも──
ねぇちょっと、それ……なに？
な、ナイフなんて手錠なモノ、何に使うのかなぁ～？
ひっ……え、ちょっと待って……そ、それって本気？
き、気の迷いとかじゃなくて、その……本当に？
「本気だ」って……あっ、え……そ、その……

（過呼吸気味に）
ご、ごめんなさい！あ、謝ります！
今までき、君のこといっぱい脅して好き勝手したこと全部謝るし、も、もう絶対しないって約束します！
君のことは忘れるしもう君には近づかないし、絶対に君に関わらないって約束します！
だ、だからお願いします……それだけは、それだけはやめてください……！
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、お願いします……殺さないでください……！

え……？
「約束できるのか」……？
は、はい……約束、約束します！
もう君には関わらないって、絶対に……！
きゃあ⁉
きゅ、急に刃物を投げるとか、やめてくださいよ……ってこれ、見た目は本物っぽいけど、おもちゃ？
「最初から殺す気なんてなかった」……ですか。
は、ははは……ちょっと、やめてくださいよ……私、本当に殺されるかと思っちゃいました。
でも、はい……私、しっかり反省しました。
交換してもらった連絡先も、ちゃんと消します。
だからその、手錠……あ、ありがとうございます。

これで良し……一応、確認しますか？
ほら、連絡先……ちゃんと消えてるでしょ？
それと、こっちも──

ひひひ、ビックリした？

き、君の本名とか顔写真とか……
他にも色んな個人情報、裏垢と一緒にネットで公開、しちゃいました♪

す、すごいねぇ～あっという間にいいねと、あぁ……拡散の勢いもヤッバ♪
えへへ……き、君……こ、これ、君が悪いんだからね♪
私のことを脅して、無理やり酷いこと、いっぱいしようとして……
しかもそれお、おもちゃとか……本気で命乞いした私がば、バカみたいじゃん。

すっごく、その……く、屈辱だから……これ、仕返し♪
が……学校の皆にバレるよりた、大変な事になっちゃったね♪

でもでも、これもぜ～んぶ、君が悪いんだよ？
私を怖がらせて、無理やり関係解消しようとした君のせい……そ、そうだよ！
これ、き……君の自業自得だよ！
だから私、なんにも……な～んにも悪くないの！
えへへ、あぁ……推しの絶望しきった顔、やっばぁ……
あ、いっぱい写真、撮っておかないと。
今にも泣き出しちゃいそうな推し、マジで尊い……
いいねぇ、最高だよぉ……♪

ふぅ……写真、少し撮り過ぎちゃったかな。
スマホの容量ギリギリ、あとでせ、整理しとかなきゃ……あ、そうだ。
き、君さぁ……もう普通には生きていけないと思うけど、だ、大丈夫だよ……安心して。
私が君のことをや、養ってあげるからさ……だからさ、君はもうな、何もしなくていいよ。
ふひひ、こ、これからはわ、私が推しのお、お世話をするんだぁ……♪
えへへ……これもう、結婚したのと変わんない、よね。
だいじょうぶ、大丈夫だよぉ～今日から君は、私がお世話してあげるから。
だからほら、そろそろわ、笑って……？
「無理」って、え、えぇ……君、私に逆らったらどうなるか、ま、まだ分かってないの？
ほら、こ……これ以上人生、めちゃくちゃにされたくなかったらさ、わ……笑って？
「ご主人様にお世話してもらえるのが嬉しいです」って言いながらさ、い、いっぱい……い～っぱい、笑って？
うん！うん！私も君のことお世話するの、とっても楽しみだよ！
今日から君は、正真正銘わ、私だけの推し……♪

ひひひ、もう絶対……逃がさないから、ね♪

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレ根暗陰キャに裏垢バレして全てが終わるまでの台本
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹